松木です。
ツール・ド・フランス2017、
第一ステージの個人TTは、
チームスカイのゲラント・トーマスが制しました。
しかも、10位までの間に
チームスカイの選手が4人も入る結果となっています。
しかし、レース終了後、
FDJ(エフ・デ・ジ)のコーチが、次のことを主張。
「チームスカイの選手たちが着用していたスキンスーツは
UCIルールに抵触しているのではないか?」
そのルールというのは、
「エアロ効果を高める物を追加してはならない」というもの。
エアロ効果を高める物、
それはスキンスーツの”肩”と”二の腕”の部分に組み込まれた
凹凸の付いたパネル生地です。
拡大写真がこちら。
この突起が「ボルテックスジェネレーター」として働き、
14kmの間に18~25秒(時速1~1.3km/h)ものアドバンテージを生んだと言います。
果たして「ボルテックスジェネレーター」とは?
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ボルテックスジェネレーター
「ボルテックスジェネレーター」は日本語にすると「渦流生成器」。
物体表面に突起を配置することで、
その後ろに意図的に乱流(=渦流)を発生させ、
空気抵抗を小さくするための装置です。
飛行機の翼にも漏れなく設置されています。
突起の後ろに空気の筋が形成されているのが、はっきり見えますね。
車にも「ボルテックスジェネレーター」は取り入れられています。
ボディ後方に突起を配置することで空気抵抗が小さくなり、
燃費の改善に一役買うようです。
ボルテックスジェネレーターの仕組み
「完全な正確さ」よりも「分かりやすさ」を優先して説明します。
「ボルテックスジェネレーター無しの円形物体」の空気の流れを考えます。
「空気抵抗」というのは、
物体から空気が急に剥がれる(①の部分)ことが原因で発生する
物体を後方へと引っ張る力(②の赤点〇)のことです。
まずは、このことを把握しておいてください。
物体が「流線型」の場合、
物体後方では空気がキレイに流れてくれます。
その結果、物体から空気が急に剥がれることはありませんから、
物体を後ろに引っ張る力(図の赤点〇)はほとんど発生しません。
このために「流線型」は空気抵抗が小さい形状とされ、
フレームなんかにも取り入れられる訳です。
以上を踏まえた上で、
「ボルテックスジェネレーター有りの円形物体」の空気の流れを考えます。
まず、ボルテックスジェネレーターの後ろには、
図の赤波で示すような、空気の渦、つまり乱流が発生します。
ポイントは、空気がこの乱流に沿うように流れていく性質があるということ。
そのため、物体から空気が急に離れることが抑えられます。
図からも「ボルテックスジェネレーター無しの円形物体」の場合と比べて、
物体を後ろへと引っ張る力(赤点〇)が小さくなっていることが分かると思います。
つまり、空気抵抗の大きい形状でも
流線型に近い空気の流れをつくる役割を果たすのが
ボルテックスジェネレーターであると言えます。
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チームスカイのスキンスーツは反則なのか?
ツール・ド・フランスで着るウェアは事前に審査があります。
そして、チームスカイが着用したスキンスーツは
その審査を通っていますので、問題はありませんでした。
「エアロ効果を高めるために追加した物」とはされずに、
ディンプル加工なんかと同じように
あくまでも「生地の一特徴である」と認識されたのでしょう。
パールイズミ独自の技術「スピードセンサー」なんかも
空気抵抗を大幅に小さくする生地表面の特殊加工ですね。
「ボルテックスジェネレーター」は眉唾物ではなく、
間違いなく効果のあるもの。
もしこの突起構造が、ロードバイク業界でも認知されるようになれば、
ウェアを始め、ヘルメット、フレーム、パーツにも広がっていく可能性があると思います。
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