英国で、サイクリスト向けに空洞実験、コーチングを行っている
エアロダイナミクスのエキスパート集団AeroCoach。
「空力」が彼らの専門分野ではあるものの、
”楽に速く”という情熱は「空力」のみに留まらず、
タイヤやチューブの「転がり抵抗」にまで及びます。
- Vredestein『Superlite Latex』(SOYOと同品)
- Revoloop『Ultra Race』(Wolfpack TPUチューブと同品)
- Schwalbe『Aerothan』(エアロザン、最新のTPUチューブ)
以上を加えた9社14種類のチューブ転がり抵抗比較データを更新。
~お品書き14品目(製品名、実測重量、定価、日本代理店)~
ラテックス
(New)Vredestein Superlite Latex: 53g、2035円(フタバ商会)
Vittoria Latex: 72g、1848円
Challenge Latex: 74g、2420円(日本代理店無し?)
Michelin Aircomp Latex: 81g、2200円
ブチル
Continental Race Supersonic: 55g、参考1990円
Continental Race Light: 78g、参考1430円
Continental Race: 104g、1980円
Michelin Aircomp Ultra Light: 76g、1100円
Schwalbe Extra Light: 80g、1650円
Hutchinson Air Light: 80g、1100円
TPU(熱可塑性ポリウレタン)
(New)Revoloop Ultra Race: 25g、4400円(同品のWolfpack TPUチューブはトライスポーツ)
(New)Schwalbe Aerothan: 46g、参考3100円(PR international、取扱い無し?)
Tubolito S Tubo Road(ディスクonly): 22g 、4730円(日本代理店無し?)
Tubolito Tubo Road: 40g、5280円(日本代理店無し?)
これでようやく「役者は全員揃った」という感じがしますねぇ~(^^)
それでは早速”2021年キングオブチューブ”を考えていきましょう!
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目次
チューブ「転がり抵抗」実験方法
【ライダー】およそ75kg
【空気圧】90psi≒6.12bar
【ホイール】外幅24.7㎜、内幅19.6㎜のアルミリム
【タイヤ】GP5000クリンチャー25㎜
以上の条件にて、専用ソフトを用いて
「出力」「速度」「ライダーの体重」「大気の状態」を計測。
そして、Crr(転がり抵抗係数)を導き出し、
そのCrrから45km/hにおける前後輪合計の「転がり抵抗(w)」を計算します。
チューブ「転がり抵抗」データ&そこから読み取れる事
まず先に、復習として2020年度版のデータから。
これに新たに3種類のチューブを加えた2021年度版が次です。
以上のデータからチューブの「転がり抵抗」について言える事は、
- 【重量】軽いほど小さい傾向にあるが、当てはまらない部分も見られる
- 【素材】ラテックス<TPU≦ブチル
- 【重量&素材】70g台のラテックスチューブ<20g台のTPUチューブ
⇒”重量”よりも”素材”の方が「転がり抵抗」に与える影響ははるかに大きい - 【ブチル】Continental<Hutchinson<Michelin<Schwalbe
- 【ラテックス】Vredestein(SOYO)≦Vittoria≒Challenge<Michelin
- 【TPU】Revoloop(Wolfpack)≦Schwalbe<Tubolito
なるほど……最新のTPUでもラテックスには及んでいないようですねぇ~
そして、誰もが気になっていたであろうVredestein(SOYO)ラテックス!
こちらのチューブがやはり”最速”という結果に。
「軽さ」も考慮してヒルクライム決戦用チューブを決める
「転がり抵抗」に関しては、やはりラテックスに軍配!
ですが、TPUチューブの一番の売りはズバリその「軽さ」です。
そしてヒルクライムにおいて、この「軽さ」という要素は無視できぬ!(`ω´)キリッ
ですから「転がり抵抗」「軽さ」の両方を加味して考える必要がありますね。
ケース① Vredestein Latex(53g) VS Revoloop Ultra Race(25g)
原文:Due to this weight difference, the Revoloop Ultra Race is only faster than a Vredestein Superlite latex once the gradient reaches around 15%.
翻訳:この重量の違いにより、勾配が約15%に達すると、Revoloop Ultra RaceはVredestein Superliteラテックスよりも速くなります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・—AeroCoachの考察より抜粋—
童話『おむすびころりん』の舞台でもある(※諸説あり)
かの有名な「富士あざみライン」ですら平均勾配は10%。
という事は”15%”という急勾配はひじょ~に極端な条件です。
ですから、
「ヒルクライムでもRevoloopよりVredesteinの方が速い」
そう断言してしまっても差し支えないでしょう。
ケース② Challenge Latex(74g) VS Revoloop Ultra Race(25g)
現在、私の中で時期最有力候補であるのが
Challenge『Seamless Latex Inner Tube』
- 「転がり抵抗」のデータが優秀
- TPUより柔らかくて乗り心地が良いラテックス
- バルブ長が48㎜と、Lun『Hyper』38㎜にぴったりの長さ
- 市販のラテックスチューブの中で唯一の”シームレス構造”
(バルブ周辺が二重構造ではない。上の写真参考) - 適度な厚みがあって「パンク耐性」がそこそこ高そう
- Vredesteinは”薄さ”、Vittoriaは”品質”の面でパンクリスクがやや高めなので敬遠している
- ただし、日本代理店が存在せず入手しづらいのが難点…
”勾配10%の上り坂を16km/hで走行する場合、
164gの軽量化は-0.8wの節約、+0.03km/hの速度UPにつながる”
AeroCoachのこちらデータをもとに勾配10%想定で計算してみると、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【Revoloopの「軽さ」によるアドバンテージ】
前後輪2本分の重量差(74g-25g)×2=98g
よって、勾配10%、16km/hにおける100gの軽量化は、
Revoloop Ultra Race:0.8w×98g/164g≒-0.48w
【Revoloopの「転がり抵抗」によるディスアドバンテージ】
Revoloop Ultra Race:(28.2w-27.2w)×16kph/45kph≒+0.36w
『「転がり抵抗」は「速度」の影響をほとんど受けない』という見解もあれば、
『「転がり抵抗」は「速度」に比例する』というデータもありますが、
今回はChallengeに不利な後者の「比例する」パターンで考えました。
以上から
”勾配10%の上り坂を16km/hで走行する場合において
Revoloop Ultra Raceの方が(₋0.48w+0.36w=)-0.12w削減できる”
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しかしながら、国内のほとんどのヒルクライムレースが10%以下。
なのでRevoloopの「軽さ」のアドバンテージはここまで大きくはならず、
現実的にはChallengeの方が速いと考える方が正しいでしょうね(^^)
Revoloopの方がタイム的に速くなるのは平均勾配8~9%以上といった所かと。
ただ、平均勾配がそれ以下のヒルクライムにおいても
「少しでも加速力が欲しい!」「激坂区間で楽/勝負したい!」と望むのであれば、
ホイール外周部が圧倒的に軽くなるRevoloop Ultra Raceの選択は効果的だと思います。
以上諸々を勘案した結果………
8月末の乗鞍ヒルクライム(平均勾配6.1%)は
Challenge『Seamless Latex Inner Tube』で挑みます!!
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興味深く読ませて頂きました。
現在SOYOラテックスを常用していて、ちょうどrevoroopを試してみようと思っていた所だったのですがこれ読んで止めました笑
ちなみにずっとVredesteinのラテックスを愛用していたのですが生産中止になったのか?数ヶ月前からアマゾンでは買えなくなっていて仕方なくSOYOに買えました。
ちなみにSOYOも耐久性はぜんぜん心配無いですよ。これとGP5000で全然パンクしませんしリムカーボンホイールでダウンヒルしてもバーストとかしたことありません!
コメントありがとうございます。Vredesteinのラテックスは現在国内流通量は激減しており、日本代理店への入荷も未定のようですね(^^;
SOYOが個人的にはあまり信用できないのは、自身で走行中に2~3回パンクしているからです。Dさんのように耐久性の高いタイヤを合わせたり、砂利っぽい道を避けるなどのリスク管理をすれば、そう簡単にパンクしない強度は確保されているのだと思います!
決戦用としてはやはり、ヴァレデステイン、SOYOが最速かなと思います。タイヤをミシュランパワーTTや、コンチのスーパーソニックにすれば軽い上に転がりもいいですね。
ただし決戦の場のみでした。といのも、雨上がりの不動峠で徐行しながら下っても滑るように落車していきました。スーパーソニックはチームメイトが下りでタイヤが食わず滑り、ミシュランを辞めた自分はピレリpゼロTTでRのきついコーナーを責めてスリップしました。
今ではターボコットンが責めてもスリップせず、雨の日のレースでも安心して身を任せられるようになりました。
グランプリ5000やPZEROveroなどと比べると(5000は砂で滑りやすい)
この中でも転がり抵抗はダントツでした。
PZEROTTのタイヤサイドのヒゲのようなハケがあり、それが空力を悪化させてるのかターボコットンと同程度の転がりや空気抵抗だと感じ、あまりタイムトライアルでもタイム減はなかったです。
ただしパワーTTに関してはさらに転がりが良かった気がします。圧倒的に滑るしパンクしやすいですが、純粋に勝利を求めるならパワーTTに軽量ラテチューブで間違い無いと思います。
SOYO、ヴァレデステインは自分は使用したことがなく、空気の抜けが早い、圧倒的にパンクしやすさが高い、レース中パンクが多く使わない人も一定数居る印象でした。
少しマシなパンク性能とコスパを誇るヴィットリアのラテックス。これがまたたまにサイドカットでパンクするんですよね。路面の凹凸でガタッと。
チューボリートSも噂でヴィットリアから変えて乗ったのですが、平坦で明らかに遅くなりました。
ただ、レヴォループ レースウルトラは別物でした。やはり今回のヴァレデステインと1w差、圧倒的な足回り軽量化は素晴らしかったです。
当方サーヴェロs5DISCに乗ってるので、1wは根性と空力性能でカバーしてます。なぜかタイムトライアルで21キロ往復コースを40kmでストラバ区間走れて、むしろ早くなった印象を受けました。ラテックスより0.5気圧下げることができ、乗り心地もヴィットリアより向上した気がします。なおヴィットリアで今まで2年使用で5回以上パンクしてましたが、レヴォループは未だ無パンクです。
日常使用も完璧で
レース中登りなどでアタックがかかる場面で、以前よりチェックに入りやすくなりとても満足しています。
朝武さん、初めまして。詳細なコメントありがとうございます。経験に基づいたお話で大変参考になりました(^^)
>勝利を求めるならパワーTTに軽量ラテチューブで間違い無いと思います
これには同意です。市販で入手しやすく、データ的・感覚的にも最速クラスの間違いないセットですね!ただ、パワーTTはサイドのド派手な黄色いロゴ、SOYOはパンクリスクが個人的に抵抗感を感じています…(^^; ちなみに私は今新しい選択肢としてVeleflex Recordを考えております。このタイヤは理論上転がり抵抗最速クラス(Bicycle Rolling Resistanceでは上位、AeroCoachでは断トツTOP)な上、実測139g台と飛び抜けて軽量。ぺらっぺらで耐パンク性は終わってそうですが(笑)、ヒルクライム、TTには最適解だと思われます。
>SOYO、ヴァレデステインは・・・レース中パンクが多く使わない人も一定数居る印象でした。少しマシなパンク性能とコスパを誇るヴィットリアのラテックス。これがまたたまにサイドカットでパンクするんですよね。路面の凹凸でガタッと。
そうなんですよね……パンク性能の高いラテックスは現状MichelinかBontragerの2つしかないと思っております。その内Michelinが入手しやすく、しかも価格も手ごろなため、多少重い欠点に目をつぶりながら長らく愛用していました。ブログで話した次候補のChallengeは実際購入して現物確認したのですが、パンク性能にやや難がありそうです……(後日ブログで)一定期間試した後、別のチューブに変更しているような気がしてなりません(^^;
>レヴォループ レースウルトラは別物でした。やはり今回のヴァレデステインと1w差、圧倒的な足回り軽量化は素晴らしかったです。・・・ラテックスより0.5気圧下げることができ、乗り心地もヴィットリアより向上した気がします。・・・レヴォループは未だ無パンクです。日常使用も完璧でレース中登りなどでアタックがかかる場面で、以前よりチェックに入りやすくなりとても満足しています。
超軽量由来の「好感覚」が、データ・理論を上回っている良い例でしょうね。ここまでべた褒めされ、しかも乗り心地、耐パンク性も良好とおっしゃられるのであれば、自身でも試してみたくなりました!例えば乗鞍などは中盤以降に急勾配が増えますし、レヴィループは強力な武器になりそうですね(^^)