松木です。
お馴染みBicycle Rolling Resistanceが面白い実験を実施。
それが
- コンチネンタル『GP4000sⅡ』28c新品
- アイルランドに住むAlekさんが2年間8000km乗りつぶした同タイヤ
この両タイヤの”転がり抵抗”、”耐パンク性能”を比較しようというもの。
一般的に、タイヤの交換距離は”3000km”(後輪はもう少し短い)と言われます。
そして、使い古したタイヤは、
「グリップ力が低下する」「転がり抵抗が悪化する」「パンクしやすくなる」
といった性能低下が考えられています。
果たしてこれは本当なのか?
今回のテストによって、この内の2つ
「転がり抵抗が悪化する」「パンクしやすくなる」
の真偽が明らかになります。
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実験対象となる3本の『4000sⅡ』
【走行期間&距離】2年8000km
【走行空気圧】60~70psi(≒4.14~4.82bar)
【保管状態】基本的には室内保管だが、2時間/日は屋外走行
Alekさんは曰く「細かいひび割れは、ずっと以前に発生し始めたが、
パフォーマンスに特に影響は無く、良いグリップを保っていたと感じる」と。
接地面の厚みは2.1~2.2mmで、
ケーシング(中の繊維)までは1mmほど残っています。
新品の厚みは2.6~2.9mmなので、
8000km走っての摩耗は1mm以下。
「ケーシングが見え始める」を限界と考えるならば、
このタイヤは、まだまだ使えることになります。
ただ、「接地面」よりも「タイヤサイド」のほうが持ちません……
見ての通り、ケーシングが破れてしまっている部分があります。
以前、4000sⅡを”真の限界”まで使い続けたことがあるのですが、
やはり、サイドのケーシングに穴が開いてバーストしました。
その際、道端の草を詰めて難を逃れようとしたのは馬鹿話ですw
(『並木橋通りアオバ自転車店』の知識でしたが、枯草だと粉になって穴からこぼれていく)
話を戻しましょう。
2年8000km使用したタイヤは2本。
こちらのサンプルBの劣化状況は、
先ほどのサンプルAよりも幾分かマシに見えます。
以上、テストに用いる3本のタイヤの「重さ」「厚み」をまとめると、
次の表のようになります。
2年8000km乗ったタイヤは、
接地面が削れている分だけ、新品よりも17~22g軽くなっていますね。
実験方法
まず、特殊なドラムの上を転がして「路面抵抗」を測定します。
(表面の模様が、粗い路面を再現している)
【空気圧】4.1bar、5.5bar、6.9bar、8.3barの4段階
【速度】約29km/h
【荷重】42.5kg(人+車体を85㎏と想定し、片輪なので÷2)
【気温】21~23℃
【チューブ】Continental『Race』ブチルチューブ(約100g)
続いて「耐パンク性能」テスト。
こちらは、1mmのスチールニードルを
「接地面」と「サイド」に押し付け、
刺し込むのに必要な力を測定し、その力に応じて点数を付けます。
例えば、10点は5点の2倍の力を要することを意味します。
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実験結果
転がり抵抗
一般的な空気圧に近い6.9barを赤で囲みました。
この結果から、次のことが言えます。
- 6.9barで比較すると、12.0w、12.4w、11.9w
⇒劣化は「転がり抵抗」にあまり影響しない - サンプルA、Bともに2年8000kmにも関わらず、全ての空気圧で約0.5wの差が生じている
⇒サンプルAとBの間に、見た目上は分からない、何か劣化の違いがあるのかもしれない - 低圧だと新品の「転がり抵抗」は良いが、高圧になると8000kmタイヤとの差が縮まっていく
この内、③の現象について説明すると、
「低圧ではタイヤの変形量が大きい」
⇒「コンパウンド(タイヤゴム)の性能・特性の重要度が高くなる」
⇒「コンパウンドの劣化したサンプルA、Bの”転がり抵抗”は大きい」
「高圧ではタイヤの変形量が小さい」
⇒「コンパウンド(タイヤゴム)の性能・特性の重要度が低くなる」
⇒「コンパウンドの劣化したサンプルA、Bでも、”転がり抵抗”はそれ程悪くならない」
つまり、
「高圧になる程、摩耗/劣化による”転がり抵抗”への影響は小さくなる」
という事です。
それから、もう一点。
「サンプルBの6.9bar、8.3barの”転がり抵抗”が、新品よりも優れている」
という面白い結果が出ています。
この理由に関しては、
タイヤの特性として「薄いタイヤほど”転がり抵抗”が小さくなる」という傾向があり、
「摩耗して薄い接地面による”転がり抵抗”の向上」>「摩耗/劣化による”転がり抵抗”の悪化」
という大小関係になっているからだ、と説明されています。
耐パンク性能
こちらは分かりやすいですね。
接地面(トレッド)が摩耗している分だけ、
サンプルA、Bの「耐パンク性能」は落ちてしまっています。
そして、サイドのほうの「耐パンク性能」は3つとも同じですから、
”ゴムの劣化”や”ケーシングの傷み”は影響していないことが分かります。
ちなみに、
新品Continental『GP TT』25cが「接地面8点/サイド4点」、
新品Continental『Supersonic』23cは「接地面7点/サイド5点」。
このことを考えると、
サンプルA、Bの「接地面9点/サイド5点」というのは、
”パンクしにくい点数”とは言えないまでも、
逆に”パンクしやすい点数”でもありません。
まとめ
「転がり抵抗」
2年8000km乗った『4000sⅡ』でも、新品とほとんど変わらず、
むしろ、条件によっては、新品を上回りさえする。
「耐パンク性能」
”接地面”は摩耗した分だけパンクしやすくなるが、
”サイド”は変わらない(とは言え、限界を超えると破れる)。
2年8000km『4000sⅡ』の「転がり抵抗」「耐パンク性能」は、
想像以上に善戦する結果となりましたね(^^)
決戦用タイヤとして『4000sⅡ』を履くならば、
安全上、やはり3000km前後を目途に交換するのが賢明ですが、
今回の実験結果を考えると、通勤用タイヤとして使うならば、
もう少し粘って使い続けても問題無いと言えるでしょう。
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