松木です。
MAVICがロードバイク用チューブレスホイールを発表しましたね。
7月中旬に2モデルが先行発売されて、
9~10月以降にかけて他のモデルも順次発売していく予定です。
上の「シクロワイアード」と「バイクラ」の記事を読んでもらうと、
基本的な情報が手に入ります。
マヴィックチューブレスリムの設計図を頭に入れると理解しやすいですね。
2010年前後ぐらいには、
一部のプロの間でも使われていた”ロードチューブレス”。
ただ、タイヤとリムの気密性を正確に保てるほどの厳密な標準規格が無く、
「はめにくい」「空気が漏れる」「メンテが面倒」などの難点があって鳴かず飛ばず。
現在でも「あるけど、使っている人は少ない」といった感じです。
今回のマヴィック「UST」シリーズ発表によって
チューブレス業界はどう変わっていくのか?
MAVICチューブレスホイール・タイヤに関する
疑問やメリット・デメリットに触れながら
Q&A方式で、考えていきましょう。
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目次
「UST」とは?
UST=Universal-System-Tubelessの略。
簡単に言うと「チューブレス対応ホイールですよ」と表す言葉です。
他のメーカーだったら「チューブレスレディ」、
ボントレガーだったら「TLR」なんて言ったりしていますが、
それと同じ使い方です。
MAVICは2000年にチューブレスホイールを作り
「UST」と名付けて特許を取りました。
15年以上前と言えど、
今のチューブレスホイールの形とほぼ同じです。
本来なら特許を取っていたので
他のメーカーはチューブレスホイールを作れませんでしたが、
MAVICと一定の約束事をすることで、開発に乗り出します。
その後、
MAVICはMTBのチューブレスホイールは作り続けたものの、
ロード分野のチューブレスホイールは諦めました。
対して、他のメーカーは開発を続けました。
今回、MAVICが”後出し”みたいな形になってしまっていますが、
昔に遡ると、MAVICがロードバイクチューブレスホイールの元祖で、
一旦休止していた活動を再開した、という認識が正しいです。
ロード分野のチューブレスを一度諦めた理由は?
ロード分野のホイールに見られる特徴は
- MTBよりも気圧がずいぶんと高い
- MTBよりもリム内のスペースが狭い
この2つの要因のせいで、
ロードチューブレスホイールとタイヤとの寸法が非常にシビアになり、
「空気漏れ」や「外れる」恐れがあると、MAVICは考えました。
リム内のスペースが狭いと、チューブレスタイヤの着脱もしにくくなります。
これが、MAVICがロードチューブレス分野に
踏み出せずにいた大きな理由の一つです。
ロード分野のチューブレスホイールを再開した理由は?
時は流れ、以下の条件が揃い始めたので、再び力を入れ始めました。
- 昔よりもチューブレスホイールの市場が盛んになり、採算が取れるようになった
- ワイドリム化の流れによって、リム内のスペースが広がり、難点だった「簡易性」「安全性」が上げられようになった
- 長年の技術、経験により、自らで理想とするロードチューブレスタイヤを作れるようになった
タイヤ「YKSION PRO UST」ってどうなの?
「YKSION(イクシオン) PRO UST」は、ハッチンソンと共同開発しています。
主に協力してもらった部分は、「11ストーム」コンパウンドですね。
ハッチンソンは、つい先日、同コンパウンドを使用した新作タイヤを発表したばかりです↓
第三機関が最高評価を下したタイヤ2018年ハッチンソン「フュージョン5」をインプレ。
「ビード径とサイズ」「ゴムコンパウンド」「ケーシング構造」
「専用マシンを使用したトレッド設計」「フィールドテスト」などのプロセスを経ながら
50種類以上の試作品が開発されたそうです。
マヴィック製のタイヤは”良い”というイメージがあまりないんですけど、
この膨大な手間暇をかけた「YKSION PRO UST」に関しては、十分期待できます。
結局シーラントは入れないといけないのか?
シーラントを入れる目的は2つあります。
それは「空気漏れ防止」と「パンク対策」です。
非常に厳密に設計された
マヴィックのチューブレスリムと「YKSION PRO UST」。
「競合他社より安全で使いやすい」と主張していて、
シーラントを入れなくても、空気漏れはしないそうです。
ただ、マヴィックは「パンク対策」として
30gのシーラントを加えることを推奨しています。
こんな釘を踏んでできた大きな穴でさえも
シーラントが塞いでくれますから驚きです。
タイヤには「ナイロン耐パンクベルト」が内蔵されていますが、
さらにシーラントを入れることで、相当パンクしにくくなるでしょうね。
「UST」はクリンチャーモデルに比べて重たくないのか?
公表重量(チューブレス/クリンチャー)を比較してみます。
【カーボンモデル】
Comete Pro Carbon SL (1635g)
Cosmic Pro Carbon SL (1450g/1450g)
Ksyrium Pro Carbon SL (1390g/1390g)
【アルミモデル】
Cosmic Elite (1850g/1770g)
Ksyrium Pro (1420g/1475g)
Ksyrium Elite (1490g/1550g)
カーボンモデルは重量変わらずで、
アルミモデルは重くなったり、軽くなったりしていますね。
ちなみに、乗れる状態にした前後ホイールの重量を比較すると、
- キシリウムプロカーボンSL+リムテープ+215gのクリンチャータイヤ+MAVICチューブ
=2020g - キシリウムプロカーボンSL UST+リムテープ+「YKSION PRO UST」+シーラント片側30g
=1980g
チューブレスの場合のほうが40g軽くなります。
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2018年チューブレスロードホイールの価格は?
続いては、日本での価格(税抜:チューブレス/クリンチャー)です。
まだ、先行発売される2モデルしか発表されていません。
【アルミモデル】
Ksyrium Pro (130,000円/140,000円)
Ksyrium Elite (85,000円/105,000円)
チューブレス(UST)のほうが安いですね。
カーボンモデルはドルでの価格は発表されているので、
そこから日本価格(税抜:チューブレス/クリンチャー)を推測してみましょう。
【カーボンモデル】
Comete Pro Carbon SL ($1799≒160,000円)
Cosmic Pro Carbon SL ($1799≒160,000円/320,000円)
Cosmic Elite ($449≒50,000円/75,000円)
Ksyrium Pro Carbon SL ($1799≒160,000円/280,000円)
ドルから通貨換算すると、
クリンチャーよりもだいぶ安くなってしまいますが、
実際の日本価格はそんなことにはならないでしょう。
アルミモデルから推測するに、
「クリンチャーモデルよりも少し安くする」はずなので、
Comete Pro Carbon SL (300,000円前後)
Cosmic Pro Carbon SL (300,000円前後)
Cosmic Elite (70,000円前後)
Ksyrium Pro Carbon SL (260,000円前後)
これぐらいの価格での販売になるかと思います。
デメリットは無いのか?
他社のチューブレスタイヤをはめた場合、
マヴィックのロードチューブレスホイールは、そのメリットを失い、
他のロードチューブレスホイールと変わらなくなってしまいます。
現時点では、「YKSION PRO UST」タイヤを使った場合にのみでしか
マヴィックのロードチューブレスホイール本来の性能を発揮させることはできません。
今回、マヴィックが発表したロードチューブレスホイールと
「YKSION PRO UST」チューブレスタイヤの寸法には特許が取られています。
ただ、2年目以降は、
他のメーカーもこの寸法を真似できるようにするつもりらしいですから、
「マヴィックチューブレスホイール」+「他社のチューブレスタイヤ」
「他社のチューブレスホイール」+「マヴィックのチューブレスタイヤ」
という組み合わせでも、
”簡単” ”安全” ”速い”チューブレスホイールを使える日が来るかもしれませんね。
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