松木です。
「エアロフレームやディープリムは速い人にこそ効果がある」
「空気抵抗」は、「速度」の二乗に比例しますから、
30km/hと40km/hでは「空気抵抗」は大きく異なります。
実際に走ってみても、
30km/hではそこまで強く「空気抵抗」を感じませんが、
40km/hだと押し戻されるかのように強い「空気抵抗」を感じます。
ですから、
「速く走れないならエアロは気にする必要はない」
というように言われたりもします。
果たして本当にそうなのでしょうか?
この疑問に対してCerveloが行った面白い計算があります。
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目次
「標準的な装備」と「エアロ装備」で、1時間の走行距離を比較
まず、”速いサイクリスト”が、
「標準的な装備」なら、1時間40km(時速40km/h)で走れるとします。
(Cerveloの実験によると272w必要)
そのサイクリストが、
「エアロ装備(エアロロード、ディープリム、エアロヘルメット)」にした場合、
同じ272wのパワーのまま、1時間で走れる距離が+2km(時速42km/h)伸びます。
続いて、”遅いサイクリスト”は、
「標準的な装備」で、1時間30km(時速30km/h)で走れるとします。
Cerveloによれば、122wを出せばいいそうなので、
初心者でも「1時間30km」というのは十分可能だと考えられます。
そのサイクリストが、
先ほどと同様に「エアロ装備」にグレードアップした場合、
同じ122wのパワーのまま、
1時間で走れる距離が+1.392km(時速31.392km/h)伸びます。
以上をまとめますと、
- 速いサイクリストなら、エアロ装備の有無で1時間2km差
- 遅いサイクリストなら、エアロ装備の有無で1時間1.392km差
両者で0.608kmの開きがあるのは、
もちろん「速い方が空気抵抗の影響が大きいから」ですね(^^)
「標準的な装備」と「エアロ装備」で、20km走行のタイムを比較
次に、
先ほどの”速いサイクリスト”と”遅いサイクリスト”の二人が、
距離20kmを走った際のタイムを比較してみましょう。
【速いサイクリスト+標準装備】
20km÷40km/h×60分/h=30分
【速いサイクリスト+エアロ装備】
20km÷42km/h×60分/h≒28.57分≒28分34秒
エアロ装備の有無で、タイム差は1分26秒と算出されました。
【遅いサイクリスト+標準装備】
20km÷30km/h×60分/h=40分
【遅いサイクリスト+エアロ装備】
20km÷31.392km/h×60分/h≒38.22分≒38分13秒
エアロ装備の有無で、タイム差は1分47秒。
つまり、”速いサイクリスト”よりも21秒広がる結果となりました。
直感的には、
「遅いほど空気抵抗は小さい」
⇒「エアロ装備の効果も小さい」
⇒「20km走行時、エアロ装備の有無によるタイム差も小さい」
というように思ってしまいそうですが、
これは間違っていることが分かります。
なぜ”遅いサイクリスト”のほうが、タイム差が広がったのでしょう?
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理由①:走行時間が長いほど、速度差の影響が大きく出るから
「走行時間」に着目すると、
”遅いサイクリスト”のほうが10分ほど長く走っています。
この余計に走っている10分間の分だけ
エアロ装備の有無によるタイム差も広がりやすくなる訳です。
理由②:エアロ装備による「速度の上昇率」は、あまり違いが無いから
「実際に何km/h上がったか」よりも
「速度が何%上がったか」のほうが、
エアロ装備の有無によるタイム差を広げるためには重要です。
そこで「速度上昇率」に着目すると、
”速いサイクリスト”が+5%、”遅いサイクリスト”のほうは+4.64%。
両者の「速度上昇率」は思いのほか近いのです。
【結論】万人にエアロ装備は有効
「速くないからエアロは不要」ということはなく、
「速くなくてもエアロが十分有効」だと分かりました。
確かに、”遅いサイクリスト”の場合、
速度アップの絶対値は小さいですから、
「あんまり速度がアップしないな…」と感じるかもしれませんが、
先ほどの計算のように、効果はハッキリとあります。
むしろ、”遅いサイクリスト”のほうが、
同距離の短縮タイムは大きかったぐらいです。
「まだ自分には早い」と言って、
ディープリムなどのエアロパーツを
敬遠している人も多いかもしれませんが、
そこは背伸びしてでも導入する価値はあります。
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