松木です。
チェーンを汚れた状態から最適な状態にすると、
5W削減、時速にすると0.3km/h上がり、
40kmのタイムトライアルなら27秒削減できます。
これはエアロヘルメット並みの効果です。
そこで、今回は駆動系の洗浄・潤滑について話します。
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目次
- 1 駆動系の洗浄・潤滑方法
- 2 チェーン潤滑剤、頂上決定戦
- 2.1 FINISH LINE シリーズ 【40点】
- 2.2 MORGAN BLUE レースオイル 【25点】
- 2.3 KURE セミウェット 【80点】
- 2.4 Muc-Off(マックオフ) C4 【70点】
- 2.5 MOLTEN SPEED WAX 【40点】
- 2.6 squirt(スクワート) DRY LUBE 【55点】
- 2.7 カーボンドライジャパン チューニングオイル 【20点】
- 2.8 超極圧潤滑剤 【85点】
- 2.9 WAKO’S チェーンルブ 【90点】
- 2.10 WAKO’S チェーンルブリキッド スピード&パワー 【50点】
- 2.11 SACRA BLACKオイル 【65点】
- 2.12 INNOTECH(イノテック) 105 【40点】
- 2.13 WAKO’S チェーンルブリキッド エクストリーム 【75点】
- 3 まとめ
駆動系の洗浄・潤滑方法
ワコーズが推奨する洗車方法の動画です。
ベストなのは、バラバラにして1つ1つ丁寧に洗浄・注油することですが、
それだと半日かかります。
動画の方法だと、準備に3~5分、洗浄から注油、仕上げまで15分、
合計20分程度で、95%以上の出来に仕上がりますし、
水を使わず、テクニックもいらない手軽さもあります。
プーリーの中や、スプロケの奥などを、
完全に洗い切ることはできませんが、
仮に、ショップに頼んでオーバーホール(OH)したとして
95%が100%になるだけですし、
100kmも走ってしまえば、どちらも同じような状態になります。
ほとんどの人が「ざっくりと拭いたり、注油する」か
「ショップに頼むOH」の2択のメンテナンスしか行いませんが、
上の動画のような、その中間的な洗車方法を知っておくのは重要で、
- 水拭き、ざっくりと汚れ落とし(毎回走行後5分以内)
- 動画の無水洗車(500~1000kmに1回、30分以内)
- 分解洗浄、OH(3000~5000kmに1回、3~6時間)
車体の状態を見極めて、
この3種類の洗車方法を使い分ければ良いと思います。
それから、上の動画ではチェーンを付けたまま洗車していますが、
「パワーメーター」「Di2」「BB付近」「プーリー付近」まで洗車するのは、
「錆、故障、音鳴りの原因になりうるのでは?」と考えているため、
無造作に洗車することを、自分はあまり好みません。
そこで、チェーンだけ外して動画のように洗車・注油し、
他の部分はウェスで拭くだけで済ませることが多いです。
この辺りは、人によって分かれる部分です。
ちなみに「RS-1700ワークスタンド」を使わない方法もあります。
チェーンキーパーを取り付けて、
簡易メンテナンススタンドを付ければいいんです。
中腰にはなって腰にくる姿勢になりますが、
20分程度で、サッと終わらせるなら問題ないでしょう。
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チェーン潤滑剤、頂上決定戦
今まで10種類以上のチェーンオイルを試してきました。
そこで、一般的なものから、高級品までをインプレします。
FINISH LINE シリーズ 【40点】
フィニッシュラインのチェーンオイルは5種類あります。
赤を基準にウェットタイプの緑、ワックス効果の付加されたグレイ。
そして、ウェットとワックスタイプのそれぞれには、
セラミック粒子の含まれた低抵抗プレミアムタイプがあります。
赤は、持続性が低めです。
ワックスタイプは、赤に汚れにくさを付加されたような感じです。
緑は粘度が高く、雨でも落ちにくいですが、
汚れはめちゃくちゃ付きやすいという難点があります。
プレミアムタイプについては、
使ってみてもセラミック粒子の効果は全く分かりません。
つまり、フィニッシュラインのチェーンオイルは、
全体的にあまり良いとは、自分は思ってません。
他のメーカーと比べると、価格は安いことだけは良い点。
MORGAN BLUE レースオイル 【25点】
数々の世界トッププロチームが使っているチェーンオイルです。
上の万能型「race oil」を使ったことがあります。
フィニッシュラインにおける緑のタイプに近く、
粘度が高くて汚れが付きやすいです。
過酷な条件で走ることの多いプロなら分かりますが、
ホビーレーサーが普段走るには、ちょっとダメですね。
それ以前に、容器が硬くて注油しにくいのも良くなかったです。
KURE セミウェット 【80点】
この内、セミウェットチェーンオイルが、かなりオススメできます。
ドライは耐久性が低めなことと、滴下なのが面倒です。
セミウェットタイプは、耐久性も高めですし、
スプレータイプなのも潤滑しやすいです。
それに、自社で行った実験でも、
ドライよりもセミウェットのほうが良い結果が得られています↓
ところで、
「速く走りたいからサラサラなオイルを使う」と考える人がいますが、
実は「オイルの粘度」と「ぺダリングの軽さ」はほとんど関係なく、
オイルがサラサラだからと言って、速く走れるわけではありません。
それは、チェーンの駆動抵抗の大半が、
- 「汚れ、ゴミ、削れた金属片による摩擦」
- 「ぺダリングでチェーンが強い力で引っ張られて油膜が切れ、
その部分で金属同士が擦れる抵抗(=極圧性の低さ)」
が原因だからで、実はチェーンの粘度は、駆動抵抗にあまり関係ないからです。
だから、「汚れが付きにくい」ということ以外のあらゆる点で、
ドライタイプよりもセミウェットタイプのほうが優れています。
あえて、セミウェットの難点を挙げるとすれば、
「セミ」ウェットなので、長時間雨に降られると、普通に落ちてしまいます。
つまり、過酷な環境に耐えられるほどの耐久性は無いということ。
それから、ドライよりも「汚れが付きやすい」ということですが、
それは「Dmax パウダー潤滑剤」が解決してくれます。
パウダー潤滑剤を噴射すると、
1~2分で揮発し、ボロンナイトライドの白い粉末だけ残ります。
つまり、注油後のチェーンに、
「パウダー潤滑剤を噴射→乾燥」を2回ほど繰り返せば、
表面がパウダーで覆われて汚れが付きにくくなるだけでなく、
さらには潤滑性能も上がって一石二鳥な状態になります。
セラミックスピード社から
上のような特殊加工の施されたチェーンが発売されていますが、
「Dmax パウダー潤滑剤」を使うと、これと同じような見た目になります。
Dmax(ディーマックス) パウダー潤滑剤 220ml DM-005 [HTRC2.1]
ちなみに、220mlで、チェーン10本ぐらいの分量です。
Muc-Off(マックオフ) C4 【70点】
TEAM SKYと共同開発されたチェーンオイルで、
これを使ったクリス・フルームが、ツール・ド・フランス2連勝中。
デュラエースチェーン純正オイルより27%の効率化するそうです。
使ってみた感じ、確かに良い。
チェーンの摩擦音が激減し、滑らかな感触がありました。
粘度はサラサラでも、ベトベトでもない中間。
悪条件化でも低い摩擦係数を保つように調整されていて、
ある程度の雨でも、すぐには落ちそうにはありません。
少し粘度もありますから、
塗布後は、チェーンをしごいてからしばらく放置し、
オイルを内部までしっかり浸透させるようにしたほうが良いでしょう。
マックオフ C4 TEAM SKY イエロージャージルブ 50ml
難点は、価格が高いことですね。
大して役に立たない紫外線ライトが付属しているのが、
その理由の1つです。
それから、滴下タイプは、塗布がやや面倒だと、自分は感じます。
MOLTEN SPEED WAX 【40点】
2016年ツール・ド・おきなわ市民210km優勝者の
高岡さんが使用していたチェーン潤滑剤です。
詳しくは以下のサイトを読んでみてください。
詳しくは知りませんが、関東在住のとあるショップ店員
「ザイコーさん」という方が、「MOLTEN SPEED WAX」を海外から輸入して、
独自で施工サービスを行っていたようですが、
今年3月から国内代理店のゼータトレーディングが取り扱いを開始し、
誰でも「MOLTEN SPEED WAX」を購入できるようになりました。
第三者実験機関の結果では、
「MOLTEN SPEED WAX」が、
数あるチェーン潤滑剤の中で最も低い摩擦を示したそうで、
現場でも、実験の上でも結果を出しているチェーン潤滑剤です。
通常のチェーンオイルと違って、
ワックスを煮沸コーティングさせますが、
その作業が、かな~~~り面倒なのが難点すぎます。
価格も税込¥3,888と、決して安くはありません。
更に性能を上げるためのパウダーも同じ値段します。
squirt(スクワート) DRY LUBE 【55点】
「MOLTEN SPEED WAX」と同様、
ワックス系のチェーン潤滑剤です。
先ほどの実験でも、
「MOLTEN SPEED WAX」に続く2位の潤滑性能を示しています。
「DRY LUBE」に関しては、下のサイトを読んでみてください。
「MOLTEN SPEED WAX」みたく煮沸は必要ありませんし、
価格も比較的お手頃です。
ただし「雨に錆びやすい」、つまり、防錆性は低いのが難点でした。
これは、同じワックス系チェーン潤滑剤の
「MOLTEN SPEED WAX」でも同じだと思いますね。
それから、上の記事の中で「640km持続する」とか、
「脱脂せずに再塗布するのみで、性能を取り戻す」と書かれていますが、
これはちょっと言い過ぎな感じがします。
カーボンドライジャパン チューニングオイル 【20点】
プーリーのフルセラミックベアリングを
フッ素系潤滑剤で保護・潤滑し、耐久性を上げるためのオイルです。
チェーンへの使用も勧めており、
そういう使い方をしている人もいるようだったので、
実際に試してみたところ、持続性が全然ありません。
やっぱりチェーンオイルとしては不向きでした。
超極圧潤滑剤 【85点】
チェーンの金属同士の摩擦を
極限まで減らすことができるのが「超極圧潤滑剤」です。
上の写真はNASKA LUB(ナスカルブ)ですが、
「LS BELL HAMMER(ベルハンマー)」とか、
AZの超極圧シリーズも、ほぼほぼ同じものです。
検索すれば、いくらでも超極圧潤滑剤の記事が見つかります。
さっき、チェーンの駆動抵抗の大半が、
「汚れの摩擦」と「油膜が切れた部分での金属同士が擦れる抵抗(=極圧性の低さ)」
って話をしましたけど、そのどちらも優れているように思います。
超極圧潤滑剤は、あまりベトつかずにゴミを呼びにくいですし、
雨では、比較的落ちやすくて防錆性は高くないものの
それでも、極圧性は残ってくれて、潤滑性は維持してくれますから。
それから、極圧性が高いということは、
チェーンの寿命も少なからず伸びます。
意外と知られていませんが、
チェーン伸びは金属が伸びて起こるわけじゃなくて、
チェーンピンの部分が削れ、隙間ができていくことが原因で起こります。
超極圧潤滑剤を使えば、金属摩耗が減りますから、
チェーン伸びもしにくくなるというわけです。
WAKO’S チェーンルブ 【90点】
始めのメンテナンス動画で使用しているチェーンルブです。
ワコーズのHP↓
このチェーンルブの正しい使い方↓
サラサラ感があって汚れが付きにくく、
KUREよりもバランスを良いように感じています。
また、フォーチュンバイクの記事にあるように
「塗布の仕方」によって様々な乗り方、環境に対応させれます。
製品と一体になったノズルもめちゃくちゃ使いやすく、
オイルを差しやすいのも◎で、欠点らしいものは全くありませんね。
日本のトッププロチームの宇都宮ブリッツェンをサポートしていて、
選手からの十分なフィードバックを得て、製品に活かされているのを感じます。
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WAKO’S チェーンルブリキッド スピード&パワー 【50点】
「ブレンドして選手の脚質・好みに合わせる」
という新しいコンセプトのチェーンオイルです。
「Speed」のほうがサラサラのダイレクト型オイル、
「Power」のほうが金属同士の接触によるジャラジャラ感を減らし、
脚当たりの良い添加剤を入れたクッション型オイルです。
面白い商品ですが、調合なんて面倒ですし、
実際、混ぜて使用しているというのも聞いたことがありません。
だからと言って、ブレンドせずに単体で使ってしまうと、
特別優れてもいない普通のチェーンオイルになってしまいますから、
それだと、このオイルを選ぶ理由が無くなってしまいます。
SACRA BLACKオイル 【65点】
SACRA-Cycling社のチェーン用オイル。
ちなみに、SACRA-Cycling社については、
以下の記事でも話してますので、よかったら読んでみてください。
『4/25発売。『ロードバイク本音のホイール論』について。』
SACRA-Cycling社HPの「BLACKオイル」機能説明です↓
浸透性と付着性の高い「黒い」固定潤滑剤を使うことで、
雨でも潤滑性能が落ちないようにしています。
amazonのレビューを読む限り、
水への耐久性は高そうで、雨の中を走るようなら良さそうですが、
やはり黒色なのが難点みたいで、
日常的には使いたくならないかもしれません。
INNOTECH(イノテック) 105 【40点】
清掃・潤滑を同時に行うチェーンオイルで、
メンテナンス性が高いのが売りです。
こんな風に使いますが、
さすがにこれだけでピカピカになることはなく、
汚れは普通に残って、仕上がりの完成度は低めです。
ワコーズのメンテナンス方法が、
凄く手間がかかるわけでもないですし、
そちらのほうが駆動系の汚れを確実に落とせますから、
innotech 105は、「ちょっとどうなのかな」って感じてしまいます。
WAKO’S チェーンルブリキッド エクストリーム 【75点】
シクロクロスや雨用につくられたチェーンルブです。
オタクで面白いインプレ↓
大雨の中走らないといけないような状況なら、かなり良いでしょうね。
ただ、「6時間待つ」というのは、ちょっと長い‥‥
まとめ
- KURE セミウェット
- 超極圧潤滑剤
- WAKO’S チェーンルブ
この辺りが、オススメできるチェーン潤滑剤です。
ただ、どの潤滑剤を使うかよりも重要なのは、
「なるべく綺麗な状態を保つこと」です。
毎回、洗浄・潤滑するのが理想ですが、
実際、そんなことはしていられませんから、
走行毎のチェーンメンテナンス方法として、
「軽く拭く⇒チェーン潤滑剤を塗布する⇒余分なオイルを拭き取る」
ということを2~3分かけて行い、チェーンを80点ぐらいの状態まで戻しておくのが、
シンプルかつ、現実的な方法かなーって思います。
そう考えると、
比較的汚れを拭き取りやすい「超極圧潤滑剤」か、
クリーニング効果も期待できる「WAKO’S チェーンルブ」が良さそうです。
今回の記事を参考に、
自分なりのベストなチェーン潤滑剤、メンテナンス方法を模索してみてください。
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こんにちは。
どうもはじめまして。
これほどの詳細なオイルのレビューお疲れ様
でした!
その中でも汚れがつきにくそうなイノテック105
に注目していますが、汚れは普通に残って、仕
上がりの完成度が低いと確かに私もそう思いま
すね。
しかしながら潤滑性能自体はいかがなものでしょ
うか?
乾燥しないままでも潤滑性能は発揮できている
でしょうか?
感想お聞かせいただけたなら幸いです。
あきさん、はじめまして。
イノテック105の潤滑性能を示すような科学的実験を見たことはありませんが、
自分の中では「潤滑性能は普通」という認識でいます。
ちなみに潤滑性能で特に信頼しているのは、
実験で示されているワックス系オイルと
プロ選手内で最も実績のあるワコーズです。
それから、乾燥前後の潤滑性能に関してですが、
「乾燥を待たずに走り始めても潤滑性能は十分発揮される」と考えていいでしょう。
乾燥後は、溶剤が揮発して表面に汚れが付着しにくくなるだけで、
潤滑性能に関わる成分が変わることはありませんから。
ただ、乾燥を待たずに走り始めるなら、
イノテック105を使うメリットがあまりない気もしますね。
いつも楽しいサイトありがとうございます。
さて、チェーンオイルの評価はほぼ私が使ったチェーンオイルの評価と一致しています。
ただ残念なのはイノテック105の評価が低いのが唯一異なり、コメントさせていただきます。
イノテック105(以後105と記載します)を使用する場合の下処理をきちんと行っていなかったのではないかと思います。
チェーンを洗浄は灯油⇨ワコーフィルタークリーナー⇨水で洗浄⇨アセトンで仕上げて、即時105処理します。
使用方法で2回塗布する必要があると記載されていますが、1回で十分です。
2回塗布乾燥するとコーティングが厚くなりすぎ、砂や埃を招き、よくありません。
チェリングやカセットも脱脂した後、チェーンに塗布しながら同様にコーティングできますので、それで1日乾燥させて使用しています。
500㎞位は全く問題なく使用できますが、それ以上ではチェーン音が大きくなるのでコーティングが剥がれて効果はなくなりつつあるのではないかと思います。
あと、セラミックスピードのコーティング剤も使用しましたが、効果は認めますが、あまりにも距離数が稼げない(たった180㎞あまりで、音が大きくなりました)事とあまりにも高価(180mlで8100円)なので試してみましたが、今後常時使用することはないと思います。
105を使用しさらに無色の有機モリブデンスプレーを使用することがあります。
日本ドライスライドCDSて商品です。
自転車業界のチェーンオイルはバブルとしか言いようがありません。
画期的な効果もないのに価格ばかり高価になり。
とっても疑問に思います。
現在使用してるチェーンオイルは105、ドライスライドCDS、ワコーチェーンルプ、AZCKM-001の4種に最近落ち着きました。
それにしてもセラミックスピードは良いのですが価格と効果の時間があまりにも短すぎるので、今使用してる分を使い切ったら2度と購入しないでしょう。
返信遅くなり申し訳ありません。
私よりもずっとチェーンオイルに関して博識ですね!!
とても勉強になりました。
ありがとうございます(^^)