松木です。

 

チェーンを汚れた状態から最適な状態にすると、
5W削減、時速にすると0.3km/h上がり、
40kmのタイムトライアルなら27秒削減できます。

 

これはエアロヘルメット並みの効果です。

 

そこで、今回は駆動系の洗浄・潤滑について話します。

 

【関連記事】
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駆動系の洗浄・潤滑方法

ワコーズが推奨する洗車方法の動画です。

 

ベストなのは、バラバラにして1つ1つ丁寧に洗浄・注油することですが、
それだと半日かかります。

 

動画の方法だと、準備に3~5分、洗浄から注油、仕上げまで15分、
合計20分程度で、95%以上の出来に仕上がりますし、
水を使わず、テクニックもいらない手軽さもあります。

 

プーリーの中や、スプロケの奥などを、
完全に洗い切ることはできませんが、

 

仮に、ショップに頼んでオーバーホール(OH)したとして
95%が100%になるだけですし、
100kmも走ってしまえば、どちらも同じような状態になります。

 

 

ほとんどの人が「ざっくりと拭いたり、注油する」か
「ショップに頼むOH」の2択のメンテナンスしか行いませんが、
上の動画のような、その中間的な洗車方法を知っておくのは重要で、

 

  1. 水拭き、ざっくりと汚れ落とし(毎回走行後5分以内)
  2. 動画の無水洗車(500~1000kmに1回、30分以内)
  3. 分解洗浄、OH(3000~5000kmに1回、3~6時間)

 

車体の状態を見極めて、
この3種類の洗車方法を使い分ければ良いと思います。

 

 

それから、上の動画ではチェーンを付けたまま洗車していますが、

「パワーメーター」「Di2」「BB付近」「プーリー付近」まで洗車するのは、
「錆、故障、音鳴りの原因になりうるのでは?」と考えているため、
無造作に洗車することを、自分はあまり好みません。

 

そこで、チェーンだけ外して動画のように洗車・注油し、
他の部分はウェスで拭くだけで済ませることが多いです。

 

この辺りは、人によって分かれる部分です。

 

 

WAKO'S メンテナンス講習会 ワークスタンドを使わない

ちなみに「RS-1700ワークスタンド」を使わない方法もあります。

 

チェーンキーパーを取り付けて、
簡易メンテナンススタンドを付ければいいんです。

 

中腰にはなって腰にくる姿勢になりますが、
20分程度で、サッと終わらせるなら問題ないでしょう。

 

チェーン潤滑剤、頂上決定戦

今まで10種類以上のチェーンオイルを試してきました。
そこで、一般的なものから、高級品までをインプレします。

FINISH LINE シリーズ 【40点】

フィニッシュラインのチェーンオイルは5種類あります。

を基準にウェットタイプの、ワックス効果の付加されたグレイ

そして、ウェットとワックスタイプのそれぞれには、
セラミック粒子の含まれた低抵抗プレミアムタイプがあります。

 

は、持続性が低めです。

ワックスタイプは、赤に汚れにくさを付加されたような感じです。

は粘度が高く、雨でも落ちにくいですが、
汚れはめちゃくちゃ付きやすいという難点があります。

プレミアムタイプについては、
使ってみてもセラミック粒子の効果は全く分かりません。

 

つまり、フィニッシュラインのチェーンオイルは、
全体的にあまり良いとは、自分は思ってません。

他のメーカーと比べると、価格は安いことだけは良い点。

MORGAN BLUE レースオイル 【25点】

MORGAN BLUE レースオイル チェーンオイル

数々の世界トッププロチームが使っているチェーンオイルです。

上の万能型「race oil」を使ったことがあります。

 

フィニッシュラインにおける緑のタイプに近く、
粘度が高くて汚れが付きやすいです。

過酷な条件で走ることの多いプロなら分かりますが、
ホビーレーサーが普段走るには、ちょっとダメですね。

 

それ以前に、容器が硬くて注油しにくいのも良くなかったです。

KURE セミウェット 【80点】

kure チェーンオイル
左の「ドライ」と、右の「セミウェットタイプ」があります。

この内、セミウェットチェーンオイルが、かなりオススメできます。

 

ドライは耐久性が低めなことと、滴下なのが面倒です。

セミウェットタイプは、耐久性も高めですし、
スプレータイプなのも潤滑しやすいです。

それに、自社で行った実験でも、
ドライよりもセミウェットのほうが良い結果が得られています↓

“Made For Speed”チェーンルブ セミウェットは3つの潤滑成分配合で抜群の潤滑力と耐久性を実現。雨などの悪条件下でも効果を発揮。レースやロングドライブに最適です。

 

ところで、
「速く走りたいからサラサラなオイルを使う」と考える人がいますが、
実は「オイルの粘度」と「ぺダリングの軽さ」はほとんど関係なく、
オイルがサラサラだからと言って、速く走れるわけではありません。

それは、チェーンの駆動抵抗の大半が、

  • 「汚れ、ゴミ、削れた金属片による摩擦」
  • 「ぺダリングでチェーンが強い力で引っ張られて油膜が切れ、
    その部分で金属同士が擦れる抵抗(=極圧性の低さ)」

が原因だからで、実はチェーンの粘度は、駆動抵抗にあまり関係ないからです。

 

だから、「汚れが付きにくい」ということ以外のあらゆる点で、
ドライタイプよりもセミウェットタイプのほうが優れています。

 

あえて、セミウェットの難点を挙げるとすれば、
「セミ」ウェットなので、長時間雨に降られると、普通に落ちてしまいます。

つまり、過酷な環境に耐えられるほどの耐久性は無いということ。

 

それから、ドライよりも「汚れが付きやすい」ということですが、
それは「Dmax パウダー潤滑剤」が解決してくれます。

 

Dmax パウダー潤滑剤 チェーン

パウダー潤滑剤を噴射すると、
1~2分で揮発し、ボロンナイトライドの白い粉末だけ残ります。

つまり、注油後のチェーンに、
「パウダー潤滑剤を噴射→乾燥」を2回ほど繰り返せば、
表面がパウダーで覆われて汚れが付きにくくなるだけでなく、
さらには潤滑性能も上がって一石二鳥な状態になります。

 

セラミックスピード社から
上のような特殊加工の施されたチェーンが発売されていますが、
「Dmax パウダー潤滑剤」を使うと、これと同じような見た目になります。

 

ちなみに、220mlで、チェーン10本ぐらいの分量です。

 

Muc-Off(マックオフ) C4 【70点】

Muc-Off C4 チェーンオイル

TEAM SKYと共同開発されたチェーンオイルで、
これを使ったクリス・フルームが、ツール・ド・フランス2連勝中。

デュラエースチェーン純正オイルより27%の効率化するそうです。

 

使ってみた感じ、確かに良い。

チェーンの摩擦音が激減し、滑らかな感触がありました。

 

Muc-Off C4 チェーンオイル

粘度はサラサラでも、ベトベトでもない中間。

悪条件化でも低い摩擦係数を保つように調整されていて、
ある程度の雨でも、すぐには落ちそうにはありません。

少し粘度もありますから、
塗布後は、チェーンをしごいてからしばらく放置し、
オイルを内部までしっかり浸透させるようにしたほうが良いでしょう。

 

難点は、価格が高いことですね。

大して役に立たない紫外線ライトが付属しているのが、
その理由の1つです。

 

それから、滴下タイプは、塗布がやや面倒だと、自分は感じます。

MOLTEN SPEED WAX 【40点】

2016 ツール・ド・おきなわ 高岡亮寛 ザイコーチェーン Molten Speed Wax

2016年ツール・ド・おきなわ市民210km優勝者の
高岡さんが使用していたチェーン潤滑剤です。

詳しくは以下のサイトを読んでみてください。

人とは違う個性的な自転車(ロードバイク、MTB、マウンテンバイク、シクロクロス) 取り扱い

 

詳しくは知りませんが、関東在住のとあるショップ店員
「ザイコーさん」という方が、「MOLTEN SPEED WAX」を海外から輸入して、
独自で施工サービスを行っていたようですが、

今年3月から国内代理店のゼータトレーディングが取り扱いを開始し、
誰でも「MOLTEN SPEED WAX」を購入できるようになりました。

 

チェーン摩擦抵抗実験 molten speed wax
(※写真をクリックすると拡大します)

第三者実験機関の結果では、
「MOLTEN SPEED WAX」が、
数あるチェーン潤滑剤の中で最も低い摩擦を示したそうで、

現場でも、実験の上でも結果を出しているチェーン潤滑剤です。

 

molten speed wax 煮沸 チェーン潤滑剤

通常のチェーンオイルと違って、
ワックスを煮沸コーティングさせますが、
その作業が、かな~~~り面倒なのが難点すぎます。

 

Molten Speed Wax(モルテンスピードワックス)

価格も税込¥3,888と、決して安くはありません。

更に性能を上げるためのパウダーも同じ値段します。

squirt(スクワート) DRY LUBE 【55点】

squirt(スクワート) DRY LUBE

「MOLTEN SPEED WAX」と同様、
ワックス系のチェーン潤滑剤です。

先ほどの実験でも、
「MOLTEN SPEED WAX」に続く2位の潤滑性能を示しています。

「DRY LUBE」に関しては、下のサイトを読んでみてください。

ワックス系チェーン潤滑剤 液体が乾燥するとドライタイプになる チェーンがきれいなままで長時間持続 持続性:約480-640km 低摩擦抵抗 注意:雨天での長時間走行や、泥等が付着するコンディションでの走行はルーブの持続性を下げる場合がございます。 悪天候、悪条件での走行をしなければならない場合は、必ず走行する前日にルーブを添付し、拭き取らず乾燥させてからご使用下さい。

 

南アフリカに拠点を構えるケミカルブランドSquirt(スクワート)の国内展開が始まった。ベタつかず、汚れが付着しにくいワックス系のチェーンルブ「DRY LUBE」を紹介しよう。取扱いはトライスポーツが行う。

 

 

「MOLTEN SPEED WAX」みたく煮沸は必要ありませんし、
価格も比較的お手頃です。

 

ただし「雨に錆びやすい」、つまり、防錆性は低いのが難点でした。

これは、同じワックス系チェーン潤滑剤の
「MOLTEN SPEED WAX」でも同じだと思いますね。

 

それから、上の記事の中で「640km持続する」とか、
「脱脂せずに再塗布するのみで、性能を取り戻す」と書かれていますが、
これはちょっと言い過ぎな感じがします。

カーボンドライジャパン チューニングオイル 【20点】

カーボンドライジャパン CDJ チューニングオイル

プーリーのフルセラミックベアリングを
フッ素系潤滑剤で保護・潤滑し、耐久性を上げるためのオイルです。

チェーンへの使用も勧めており、
そういう使い方をしている人もいるようだったので、
実際に試してみたところ、持続性が全然ありません。

やっぱりチェーンオイルとしては不向きでした。

超極圧潤滑剤 【85点】

NASKA LUB(ナスカルブ)

チェーンの金属同士の摩擦を
極限まで減らすことができるのが「超極圧潤滑剤」です。

上の写真はNASKA LUB(ナスカルブ)ですが、

LS BELL HAMMER(ベルハンマー)

「LS BELL HAMMER(ベルハンマー)」とか、
AZの超極圧シリーズも、ほぼほぼ同じものです。

 

超極圧潤滑剤

 

検索すれば、いくらでも超極圧潤滑剤の記事が見つかります。

 

さっき、チェーンの駆動抵抗の大半が、
「汚れの摩擦」「油膜が切れた部分での金属同士が擦れる抵抗(=極圧性の低さ)」
って話をしましたけど、そのどちらも優れているように思います。

超極圧潤滑剤は、あまりベトつかずにゴミを呼びにくいですし、
雨では、比較的落ちやすくて防錆性は高くないものの
それでも、極圧性は残ってくれて、潤滑性は維持してくれますから。

 

それから、極圧性が高いということは、
チェーンの寿命も少なからず伸びます。

意外と知られていませんが、
チェーン伸びは金属が伸びて起こるわけじゃなくて、
チェーンピンの部分が削れ、隙間ができていくことが原因で起こります。

超極圧潤滑剤を使えば、金属摩耗が減りますから、
チェーン伸びもしにくくなるというわけです。

 

WAKO’S チェーンルブ 【90点】

WAKO'S チェーンルブ

始めのメンテナンス動画で使用しているチェーンルブです。

 

ワコーズのHP↓

モータースポーツの世界で磨き抜かれた最高品質の製品を提供し続ける。開発者・研究者・プロメカニックによる技術、そしてお客様の声が創り上げたWAKO'SだけのSUPER QUALITYを是非お試し下さい。

 

このチェーンルブの正しい使い方↓

 

サラサラ感があって汚れが付きにくく、
KUREよりもバランスを良いように感じています。

また、フォーチュンバイクの記事にあるように
「塗布の仕方」によって様々な乗り方、環境に対応させれます。

 

製品と一体になったノズルもめちゃくちゃ使いやすく、
オイルを差しやすいのも◎で、欠点らしいものは全くありませんね。

 

日本のトッププロチームの宇都宮ブリッツェンをサポートしていて、
選手からの十分なフィードバックを得て、製品に活かされているのを感じます。

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WAKO’S チェーンルブリキッド スピード&パワー 【50点】

「ブレンドして選手の脚質・好みに合わせる」
という新しいコンセプトのチェーンオイルです。

「Speed」のほうがサラサラのダイレクト型オイル、

「Power」のほうが金属同士の接触によるジャラジャラ感を減らし、
脚当たりの良い添加剤を入れたクッション型オイルです。

 

面白い商品ですが、調合なんて面倒ですし、
実際、混ぜて使用しているというのも聞いたことがありません。

だからと言って、ブレンドせずに単体で使ってしまうと、
特別優れてもいない普通のチェーンオイルになってしまいますから、
それだと、このオイルを選ぶ理由が無くなってしまいます。

SACRA BLACKオイル 【65点】

SACRA BLACKオイル

SACRA-Cycling社のチェーン用オイル。

 

ちなみに、SACRA-Cycling社については、
以下の記事でも話してますので、よかったら読んでみてください。

『4/25発売。『ロードバイク本音のホイール論』について。』

 

SACRA-Cycling社HPの「BLACKオイル」機能説明です↓

SLFチェーン用オイルにPTFEパウダーと浸透性の良い固体潤滑剤を添加したオイルです。基油にはUCIプロチームも使う生分解性のものと同じものを使用しています。PTFEパウダーは常温環境下では最も低い摩擦係数を示す固体潤滑剤です。PTF...

 

浸透性と付着性の高い「黒い」固定潤滑剤を使うことで、
雨でも潤滑性能が落ちないようにしています。

amazonのレビューを読む限り、
水への耐久性は高そうで、雨の中を走るようなら良さそうですが、
やはり黒色なのが難点みたいで、
日常的には使いたくならないかもしれません。

INNOTECH(イノテック) 105 【40点】

INNOTECH イノテック 105

清掃・潤滑を同時に行うチェーンオイルで、
メンテナンス性が高いのが売りです。

 

こんな風に使いますが、
さすがにこれだけでピカピカになることはなく、
汚れは普通に残って、仕上がりの完成度は低めです。

ワコーズのメンテナンス方法が、
凄く手間がかかるわけでもないですし、
そちらのほうが駆動系の汚れを確実に落とせますから、
innotech 105は、「ちょっとどうなのかな」って感じてしまいます。

WAKO’S チェーンルブリキッド エクストリーム 【75点】

WAKO'S チェーンルブリキッド エクストリームWAKO'S チェーンルブリキッド エクストリーム 説明書

シクロクロスや雨用につくられたチェーンルブです。

 

オタクで面白いインプレ↓

完全に脱脂と乾燥をしてから、塗布して6時間以上放置する という超絶メンドクサイ作業を強要してくるオイル。お客様の手間と時間をここまで奪いつくすというのか!な…

 

大雨の中走らないといけないような状況なら、かなり良いでしょうね。

ただ、「6時間待つ」というのは、ちょっと長い‥‥

 

まとめ

  • KURE セミウェット
  • 超極圧潤滑剤
  • WAKO’S チェーンルブ

 

この辺りが、オススメできるチェーン潤滑剤です。

 

ただ、どの潤滑剤を使うかよりも重要なのは、
「なるべく綺麗な状態を保つこと」です。

 

毎回、洗浄・潤滑するのが理想ですが、
実際、そんなことはしていられませんから、

走行毎のチェーンメンテナンス方法として、
「軽く拭く⇒チェーン潤滑剤を塗布する⇒余分なオイルを拭き取る」
ということを2~3分かけて行い、チェーンを80点ぐらいの状態まで戻しておくのが、
シンプルかつ、現実的な方法かなーって思います。

 

そう考えると、
比較的汚れを拭き取りやすい「超極圧潤滑剤」か、
クリーニング効果も期待できる「WAKO’S チェーンルブ」が良さそうです。

 

今回の記事を参考に、
自分なりのベストなチェーン潤滑剤、メンテナンス方法を模索してみてください。

 

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