前日の記事
DAY21の走行データ
スポンサーリンク
DAY21後編、目を疑う光景
「ほうほう、なるほどねぇ~」
木々に隠れて見えなくなるまで延々と続く階段。
先に進んでも次なる階段が待ち構えているだけ。
「ずっと階段だ」とうかがっていた言葉に偽りはなそう。
「こりゃ、しばらく変化の乏しい退屈な時間になりそうだなぁ…」
そう思った私は階段の段数を数えることを
一種の「目的」「楽しみ」にすることにしました。
先の大山ヒルクライムもそうでしたが、
『苦しいのに変化が無い』というのが最も辛いので、
自分なりに何かしらの「変化」を設けようと考えたんですね。
「1,2,3,4…………97、98、99、100。1,2,3,4…………」
100まで数えたら左手の指を1本曲げて、また1から数え始める。
そうやって階段を数えながら登っていきました。
平坦路など気の利いたものなぞは無く、心拍数は常に140bpm(*´Д`)ハアハア
この大山の夏山登山ルート、
分岐点にはしっかりした標識が立ってますし、
「大山〇〇合目」「標高〇〇m」という立て看板のおかげで進捗状況も一目瞭然。
これなら安心して登っていけますねぇ~(^^)b
登り始めて35分経過。
標高は800m⇒1200m、階段も2000段に到達しました。
それに伴って、ご覧の通り濃霧が発生。
どうやら麓からも見えていた”霧ゾーン”へと突入した模様。
ただ、進むべき道は明白ですし、登る上ではなんら支障は無かったです。
5合目を過ぎた直後、
行者谷(ぎょうじゃだに)分かれという分岐に着きました。
ルートを教えてくれた方がおっしゃっていた「行者谷を通るルート」
話を聞いていた時は、正直ピンと来ていなかったんですけど(笑)、
そこを通っていた場合も、結局ここに辿り着いていたのでしょう。
・・・登山を齧(かじ)っていて思うのですが、
興味本位で「景色の良いルート」「中級者向けルート」を選びたくなるものの、
初見の山の場合は、素直に「初心者向けルート」「登山者の多い人気ルート」を選ぶのが吉。
「人気ルート」というのは整備がされていて安全かつ迷いづらい傾向にありますし、
いざ迷ったり困った際には、すれ違う登山者に伺ったり、助けてもらうこともできます。
”安全第一”
今後も日本一周中に色んな山々を登るつもりでいますが、
冷静にリスクを避ける選択をしていきたいと思ってますね(^^)
「そんなことを考えられるようになったとは、
自分も少しは登山者っぽくはなったのかな(^ω^)フッ」
そんなふうに一人で気取っていた6合目地点。
その決意のほどを試すかのように
目の前にとんでもない試練が待ち構えていました。
(゚Д゚)ハァ?
「………雪………だと………?」
ちょうど山頂方面から人が下ってきてました。
トレッキングポールを使いながらも、
超慎重にゆ~~~っくり下りています。
彼らの会話が少しだけ耳に入りました。
「さっき滑っている人がいたよ。」
マジかよ。。。
この雪、写真だと伝わりづらいですが、
雪というよりは氷。
春の日差しで溶けかけの状態でツルツルです。
斜面も45度ぐらいあるため、
一度滑ってしまったが最後、
雪が無い地面まで強制アイススライダー。
全身強打不可避。
骨折可能性大。
最悪死亡。
そんなの絶対に嫌だってばよ……
「こんにちわ。」
「こんにちわー」
「あの~、こんな感じの雪って、この先にも続いてますか?」
「いや、ここだけだよ。」
「(おおっ、それは助かったε-(´∀`*)ホッ)」
「目の前の10mぐらいと、その先15mぐらい。
頂上まで何か所か積もってたけど、横を通れば避けられたよ。」
「そうですか。これ(トレラン装備)なんで安心しました(笑)」
「ははは、それじゃ頑張ってね。」
「はい、ありがとうございますm(__)mペコリ」
一瞬引き返すことも頭をよぎりましたが、
幸いここだけのようだし、どうにか突破するしかない!
「よっしゃあーー、行くかーー!!!」
指をかき爪にして(冷てぇ~!)
先人たちが作った窪みに足を入れて四つん這い。
「やっぱ怖え………」
この姿勢ならある程度 安定感はありましたけど、
雪ごと”ズル”って崩れ落ち、滑落する恐れもあります。
そのため、万が一滑ってしまった際にも、
両脇から伸びた枝をつかめるサイドを登っていきました。
「(クルリッ)ひえぇぇぇ~~~~Σ(゚Д゚||)」
高所恐怖症の私。
下を見ると恐ろしく、一心不乱に進みました。
「はぁはぁ、、、なんとかクリアできたで……」
短いながらも、想定外かつ人生初の雪斜面をクリア。
こりゃあ下る時もまた思いやられますねー(^ω^;)
閉鎖的な階段地獄からの雪斜面コンボ。
正直申し上げて
この山に対してうんざりしつつありましたね。。。
ですが、ここまでの大山は世を忍ぶ仮の姿。
大山の大山たる真の姿はここからでした。
高い木は無くなって両脇に生える低木群。
上空に広がるのは、うっすら霧が残った青空。
左を向くと、
はるか遠くまで続く、そそり立つ壁のような急斜面。
地盤と雪が織りなす、黒の白コントラストもまた美しい。
「壮観だ……(;゚д゚)ゴクリ」
かつて見たことのない山の姿に。思わず息を飲みました。
ちなみに現在私がいるのは赤丸の地点。
そこから矢印の方向、
いわゆる「北壁」と呼ばれる斜面を眺めております。
この先は頂上までずーーっと稜線(りょうせん)を登っていき、
大山の代表的な頂上「弥山(みせん)」へと向かっていくんですね(^^)
7合目を越えて標高1500mへ。
あと200m上がれば山頂です。
ここで何気なく通ってきた道を振り返りました。
「すっ………」
「すげぇぇぇーーーーーo(≧◇≦)o」
眼下に広がる一面の雲海。
地上からは ただのどす黒い雲だったのに、
上から眺めるとこんなにも神秘的だなんて……
”ブルッ”
この時 小さな身震いが起きたのは、
肌寒さからか、それとも感動によるものか。
北壁の最上部が見える8合目までやってきました。
正面に見える最も高い地点が、
大山最高峰の「剣ヶ峰」(1729m)なのでしょう。
”ギシ!ギシ!ギシ!”
”ガララララ”
北壁からは絶え間なく聞こえてくる
雪が解けてヒビ割れる音、
そして壁が崩れて岩が転がり落ちていく音。
それはまるで大山が上げる鳴き声のようでした。
標高1600m、いよいよ9合目です。
階段は無くなり、
うねりながら緩やかに登っていく
幅の狭い木造の道に変わりました。
山頂にある避難小屋(肉眼だとチラっと見えている)まで長く伸びており、
「ラスボス感あるわ…(タッタッタッタッ)」
まるでRPGの主人公にでもなった気持ちで、歩を進める自分。
そんな厨二病的な妄想を駆り立てるほどに
この地の風景は、非日常的な雰囲気に包まれていたんですよ(^^)
ちなみに、この辺りは「風衝(ふうしょう)低木草本帯」と呼ばれる
厳しい風に適応した高山地帯特有の様相を呈しています。
少し先に見える緑の低木は、
鳥取県の県木ダイセンキャラボクという植物です。
8ha(東京ドーム2倍弱)もの群落が広がっており、
「大山のダイセンキャラボク純林」として特別天然記念物にも指定されています。
ついに大山頂上避難小屋に到着。
小屋の前には、楽しそうに昼食を食べるカップル。
その光景に若干の嫉妬を感じながら山頂へ。
14時5分大山「弥山」登頂。
(所要時間1時間35分)
ここまでの階段総数は4200~4300段。
京都大階段(199段)の21倍以上、
あべのハルカス(1610段)の2.7倍ってところでした。
ここには何もありません。
全身に浴びる、遮られない暖かな日差し。
肌をなでる、清らかなそよ風。
心地良く耳に入る、小鳥のさえずり。
360度見渡す限りの、真っ白な雲海と青い空。
そして、殺風景に広がる山肌と低木帯。
これだけしかありません。
ですが、少なくとも自分にとっては、
「最高の場所の一つ」と思えるほどに心地良い空間でした。
私が山に登るのはきっと
苦労して登った先にもたらされる「達成感」もさることながら、
頂(いただき)でしか味わうことができない
「壮大な眺め」「解放感」「全身に感じられる自然」なんかに
心が魅せられているからなんでしょう。
遮るものも何もない”頂”という場所は、やはり特別なんですよ。
「なぜ山に登るのか?」
その哲学的な問いの答えを見出すのに、
この大山という山は最適なのかもしれないと感じましたね(^^)
その後、山頂看板の前で5分ほどボーっとしてから下山開始。
「こっ……怖い……(^^; ヒヤヒヤ」
実は、DAY11の由布岳にて しこたま打ち付けた尾骨が今だズキズキしております。
この骨の芯に残り続ける鈍痛具合は、
おそらく小さいヒビが入っている気がします。
とにかくもう一発同じ箇所を打ってしまったら人生終わるので、慎重に慎重に・・・
”ズルッ”
「あっ……」
「マズい!足を取られたΣ(゚Д゚)!」
┌(。-。┌ )┐ピタッ!
とっさにブリッジのように背中を反らしてケツを守りましたよ(笑)
そんな危なっかしい瞬間もありつつ、
15時2分無事帰着。
行って帰ってくるまで2時間半。
最大3時間を見てたんで、やや巻けたかなーと。
「うわぁ~、もう下ってこられたんですか!」
「あっ、はい?」
水色の上着を着た男性。
この時は誰だか分からなかったのですが、
改めて写真を見返していると、雪斜面で会ってた方でしたねw
まだ宿まで距離があります。
5分で自転車モードに着替えて即出発しました。
大山環状道路を9時から5時の位置まで反時計回りに。
大山環状道路は1周64kmほど。
獲得標高は2000mを越えるハードな道路です。
ここまで散々登ってますけど、まーだまだ登りまくりますw
(この辺りは鍵掛(かぎかけ)峠という登り)
『大山まきばみるくの里1.5km』の看板を発見。
まっすぐ行けば宿方面。
右に1.5km下っていけば『みるくの里』(+110mUP)
気温は12℃。
太陽も雲に隠れて普通に寒かったんで、
『みるくの里』の名物であるソフトクリームを食べる気も全くしません。
「先も急いでるしなぁ……」
「別に行かんでもええか!」
「うまいうまい!(゚д゚)パクパク」
行くんかい!
そして食うんかい(笑)
400円とちょい高めのソフトクリーム。
「ミルクが濃厚!!」っていう感じではありません。
ただ、安いソフトクリームにありがちな水っぽさは一切無く、
上質に甘くとろけるミルク感が口いっぱいに広がります。
そして、特製コーンカップが湿り気0で”サックサク”
滑らかなソフトクリームとの相性は言わずもがなです。
王道美味な『Theソフトクリーム』
こんな寒い中でも、近くにいた人全員が食べてましたよー(^^)
「……そう言えば、牛さんが見当たらんなぁ(・ω・三・ω・)キョロキョロ」
「あっ、いた!!」
「遠っww」(5倍ズーム)
豆粒のような牛さんを尻目に大山環状道路へと戻ります。
鍵掛峠を越えて少し下り。
そしてまた「鏡ヶ成(かがみながる)」という高原へと向かう登りが始まりました。
ここがまーーた見事な九十九坂(つづらざか)でした!
たぶん20ターンぐらいありましたかね(^^;ハアハア
鏡ヶ成へと辿り着いた後は、
大山環状道路と蒜山高原をつなぐ「蒜山大山スカイライン」へ。
ここから蒜山までは楽勝なダウンヒル(*゚∀゚*)ヒーハー
ただ、ここにきて風が強くなっており、
気温も10℃ちょいしかなかったんで、
ひじょ~に寒かったです…… ((>_<)) ブルブル
手足はかじかみ、身体を震わせながら下り続けること15分。
「うわぉ~、ここが噂に聞く蒜山かぁー(゚∇゚ )ホホウ」
広い野原、大きなタンクのある牧場、
ジンギスカン・焼きそばなどの飲食店。
遠くには観覧車のある遊園地も見えました。
蒜山は明日グルっと回る予定なので、この日はスルー。
どこにも立ち寄らずに宿へと直行しました。
ホテル蒜山ヒルズ
道の駅「蒜山高原サイクリングターミナル」にある宿です。
向かって左1Fがレストラン、左2Fが大浴場&宴会場。
そんでもって右半分が宿泊部屋ですねぇー
ジャズやピアノ曲が流れるオシャンティーなエントランス。
私の部屋は2F角部屋のバルコニー付き和室でした (*^ー゚)b
最後なんで、ちょっと奮発しちゃいましたよね(笑)
(蒜山にほとんど宿がなかったからというのもある)
片づけもそこそこに・・・
ε===(っ・ω・)っビューン
(ザッブーーーン!)
「あったけぇ~~~ε-(´∀`*)ハフ~」
とにもかくにも、まずは大浴場で身体を温めました。
「色々あったけど、いよいよ明日が最後の日かぁ~」
湯気が立ち昇る天井を見上げながら物思いに耽ります。
終わってしまう”寂しさ”
家に帰れるという”安堵”
そして、明日を乗り切れるかという”不安”
DAY13で一度は爆発した膝は持ち直してくれたものの、
相変わらずお尻の骨はズキズキ痛むし、
今日の登り地獄(2787mUP)で疲労もピーク。
そして、肉体面以上に機材面がピンチ!
前輪がバキバキにひび割れまくりで、
いつ爆発してもおかしくない『時限爆弾状態』
(同じ状態の後輪タイヤは、今日バーストした)
あと、あられもない姿を何度かご覧いただいた
右のビンディングシューズも、もはや虫の息。。。
テーピングで どうにか持ち堪えてはいますけど、
もはやその応急処置も限界を迎えつつあります。
「頼むから乗り越えさせてくれ!!」
その願いと決意を胸に、いざ西日本編最終日へ。
スポンサーリンク