松木です。
先日の記事でも登場したEndura D2Z『エンカプスレーター』スキンスーツ。
肩から脇にかけて無数に配置された、山型のシリコン『SST』。
Endura×D2Z『エンカプスレーター』を紹介しているIT技術者さんの記事↓
理想的なエアロ効果を生み出させるために
「効果的なシリコンの形」「SSTを配置させる場所」
「縫い目の位置」「異なる生地の使い分け」など、
80種類ものバリエーションを試した末に完成。
さらに、”世界最速”であることを証明するために
Castelli、Rapha、Specialized、Nopinz、Bioracer、Assosなど、
名だたる有名ブランドのスキンスーツと比較したデータを取っています。
『エンカプスレーター』のターゲットである速度域46~58km/hで、
最速のライバル(黄緑のBioracer?)よりも-1.4~21.8wの削減。
速度48.3km/hで40kmTTを行った場合、
100秒ものアドバンテージが得られます。
適当なダブダブジャージと比べているならいざ知らず、
各メーカーが長年に渡る研究と、
風洞実験を繰り返して生み出された自信作の中でも
特に優秀なスキンスーツとの比較です。
そう考えれば、100秒という数字がいかに凄いか……
そんな『エンカプスレーター』を
Cycling Weeklyがベロドロームにて実走テスト。
2017年10月に実施された6種類のスキンスーツを競わせたテスト(動画)
においてNo.1、2であったBioracerとVelotecのスキンスーツを用意し、
40km/h、45km/h、50km/h、55km/hで走るために必要なパワーを調査しました。
これまでで「最も速く走れるウェア」であったのは、
トム・ドュムランを始めとする多くのプロ選手が着用している
Bioracer『Speedwear Concept TT Suit』だと考えて間違いないでしょう。
つまり、今回の実走テストによって、
「世界最速のエアロウェア」が判明すると言っても過言ではありません。
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実験方法
実験を行う場所は、
Cycling Weeklyお馴染み「ダービーベロドローム」1周250m。
40km/h、45km/h、50km/h、55km/hそれぞれの速度で4周ずつ走り、
その際の「速度」「パワー」などを記録していきます。
そのデータを「Watt Shop」が開発したソフトウェアに入力し、
「空気抵抗」だけを抽出した値「Aero Watt」を実験結果とします。
(「Aero Watt」=「〇〇km/h走行に必要な出力」-「転がり抵抗」-「駆動抵抗」)
エントリーNo.1:Bioracer『Speedwear Concept TT Suit』
最大の特徴は、首~肩~肘にかけて見られる「Air Stripe」。
「溝を設ける」⇒「そこで空気が乱れる」
⇒「乱流が、身体から空気が剥離するのを抑える」
⇒「身体の後ろに、”低圧の空間”が出来るを抑えられる」
⇒「後ろに引っ張る力(=空気抵抗)の発生を抑えられる」
この辺りの詳しい理論について
下の記事で話してますので、気になるならどうぞ参考に。
エントリーNo.2:Velotec『Elite Pro Speeds』
Bioracerで言う所の「Air Stripe」にあたる加工が、
上半身の広範囲に渡って(背中にも)施されています。
果たして「多けりゃ良い」ってものなのかどうか……
エントリーNo.3:Endura D2Z『Encapsulator』
「SST」が配置されているのは肩~肘、それから脇腹です。
「SST」を前面に配置していない理由は、
前面に乱流を発生させても、あまり意味がないから。
「SST」を背面に配置していない理由は、
背中が後方に向けてなだらかな曲線となっているために、
「SST」を配置しなくても空気の剥離が起きづらいから。
「SST」を太腿の側面に配置していないのは、
下半身はペダリングによって激しく動くために、
「SST」の効果を測定することが困難であるから。
論理的に必要最小限に抑えているのは好印象。
むやみに「SST」を配置するのがカッコ良いとは思えませんからね(^^;
ちなみに、旧『Encapsulator』は、Bioracerの真似をしていました。
ですが、生地に溝を設ける「Air Stripe」には2つの問題があったのだそう。
- 空気抵抗を抑えられる速度域が限定されてしまう
- 厳密に配置されないと十分な効果が発揮されない
②の問題に関して、もう少し考えを進めると
「ライダーの姿勢、ポジションにも影響を受けやすい」
といった事も言えるかと思いますね。
そこで、両方の問題をクリアするために
数年間に及ぶ試行錯誤によって生み出されたのが「SST」でした。
「SST」は特許を出願されているため、
「Air Stripe」のように他メーカーは真似できません。
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実験結果
VelotecとBioracerを比較すると、ほぼほぼ互角です。
ですが、Enduraだけはどの速度域においても明らかに優位。
こちらは冒頭で載せたEndura自社の測定結果ですが、
「Best Competitor」というのがBioracerであると仮定するならば、
今回のベロドローム実験とは、かなり食い違っています。
例えば、50km/hの結果に注目すると、
両実験は-7.0wと-21.8wで、14.8wもの開きがあります。
それでも、Endura D2Z『Encapsulator』が、
相当優れていることに変わりはありません。
速度40km/hならば、VelotecとBioracerに比べて-5w削減できます。
『Encapsulator』を着て40km/hで1時間走った場合、
他の2種類のスキンスーツよりも20秒早くゴールに辿り着き、
距離にして200m以上のリードを得ることが可能となります。
特にシリアスライダーにとって、この-5wは大きいでしょう。
勝つか、負けるか?
入賞できるか、逃してしまうか?
自己ベストを更新できるか否か?
そのように命運を分けるに十分な差だと思います。
ロード用のEndura D2Z『Road Suit』
『Road Suit』の『Encapsulator』との違いは、
- 32~50km/hという低めの速度域に最適化されている
- 肩~脇に「SST」は無く、代わりに網目模様の生地を使用している
- 下半身の外側に「SST」を配置している
- 3つのバックポケットがあり、入り口をカバーしてエアロ効果を高めている
生地には”スイートスポット”と呼べる速度域があります。
例えばBioracerなら、
- 一般的な速度域である38~45km/hに適した生地
- プロロード選手のために48~53km/hに最適化された生地
- 60~73km/hのトップスプリンター用に開発された生地
このような3種類の生地を「選手」「用途」によって使い分けているそうです。
そして、『Road Suit』に採用される「網目」は、
「SST」よりも”スイートスポット”である速度域が低い模様。
『Road Suit』は意図して「網目模様」を選択している訳ですね。
また、『Road Suit』には、便宜性を図って
バックポケットが設けられているのですが、
入り口から空気が流れ込んで抵抗を生まないように
「Spoiler Cover」で覆っているという徹底ぶり。
使い勝手が落ちてしまうデメリットは多少あるでしょうが、
”細かい部分に工夫を凝らす姿勢”みたいなものは嫌いじゃありません。
『Encapsulator』同様、『Road Suit』の自社データも公開しています。
比較しているのは、Specialized、Castelli、Assosのエアロジャージ。
『Encapsulator』の時のことを思い出すと、
(実験条件にも左右されるのでしょうけど)
100%正確だと考える訳にはいきません。
ですが、速度38km/hの所に注目すると、
強豪ライバル製品より-7.4wも削減できてしまう
結果が出ているのは、かなり魅力的に感じます。
「ウェアは、機材や他のアイテムの進歩に比べて5年遅れている」
そのように話すサイモン・スマート氏(Smart Enve生みの親)が
『Encapsulator』『Road Suit』を世に送り出したことで、
”ウェア”という分野は、これまでにない飛躍的な発展を遂げました。
そして、これから先もその発展は加速していくことでしょう。
現在のところ、国内正規代理店が存在せず、
海外通販からしか手に入りません(^^;
とりあえず『RoadSuit』のほうを注文しておきました。
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