松木です。
2017年全日本ロードにおいて逃げ切り優勝した畑中選手。
綺麗なエアロフォームです。
「先頭を引く」「逃げを決める」際に、
理想的なエアロポジションを取り、
少ないパワーで楽に、かつ速く走れることは相当に重要なこと。
脚を残すことは、レース結果にもろに直結しますからね。
Cycling Weeklyの記事の中に
「空力」と「手と肘の位置」に関する
興味深いものがありました。
今回は、”何となく見様見真似をしている”
だけに過ぎないエアロフォームについて
もう少し突き詰めて考えてみたいと思います。
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エアロ的に最速に走れる「手」と「肘」のポジションとは?
ミカエル・ハッチンソン氏の見解
今から10年ほど前、得意なTTにおいて、
幾度となく国内チャンピオンに輝き、
数々の記録を打ち立てた実績があるミカエル・ハッチンソン氏。
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風洞実験の結果、
手を肘よりも高く、さらに両手の間を100mm空けるのが最速でした。
実際、そのポジションによって、
自分でも信じられないほど速く走れたレースもあります。
ただ、少し横風が吹いていたレースでは、
平凡な結果に終わることもしばしばありました。
そこで翌年、横風を想定し、
ヨー角を変化させて風洞実験をし直しました。
その結果はと言えば、正面から風が吹く場合と、
横風がある場合では、理想的なエアロポジションは異なることが判明。
両手の間を100mm空けるのは、正面からの風には強いのですが、
横風が吹くと、とたんに大きな空気抵抗を生んでいたのです。
ただ、このことが分かっても、
現実として難しい問題があります。
それは、コースがずっと同じ向きの直線ということはほとんど無く、
そして、走る向きが変われば、風向きも変わってしまうことです。
さらに細かいことを言えば、
トラックが横を通過する度に空気はかき乱され、風向きは変化します。
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ザビエル・ディスリー氏の見解
続いて、空力学のエキスパート集団「AeroCoach」で
トップを務めているザビエル・ディスリーさんの話です。
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手は、風が最初に当たる場所であり、
以降の空気の流れに大きな影響を及ぼします。
それゆえ、手と肘の位置を少し変えるだけで、
20wもの差が生まれることだってあり得ます。
一般的に、手はなるべく近づけ、身体全体が小さくなる方が良いです。
空気が、身体の”中”に入るのをシャットアウトし、
身体の”周囲”を流れるようにするのです。
(ミサイルになるようなイメージでしょうか)
しかし、大柄なライダー(大抵の日本人には当てはまらない)ならば、
適度に両手の間を空けた方が良い場合もあります。
一度身体の中、つまり胸の部分に空気を呼び込んだ後、
それからお尻の周囲を空気が流れるようにさせる訳です。
続いて、「手の高さ」に関して。
手を肘よりも高くすると、
ヨー角が小さい(=正面に近い風)範囲では、非常に速く走れます。
ですが、ヨー角が大きくなるにつれ、
エアロダイナミクスは崩れていってしまいます。
以上の考えから、
(「風向き」や「体格」によって異なるものの)
あなたが、まずスタートすべき基本のエアロフォームとして、
手が肘よりも少しだけ上の位置になるようにし、
両手の間隔はなるべく狭く、
最低でも15mm以内に近づけてください。
さらには、肘と膝はなるべく一直線となるようにし、
肘をこれより広げたり、逆に狭くもしないことです。
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まとめ
ザビエル氏の話を知っていると、
トム・ドユムランのタイムトライアルにおける
手と肘を位置は、とても理想的に思えます。
カンチェラーラが先頭を引いている場面ですが、
こちらは、肘をもう少し狭めた方が良いように見えます。
ただし、
理想的なエアロフォームばかりに気を取られ、
他の要素との兼ね合いを忘れてはいけません。
肘を締めれば、ハンドリングは不安定になります。
それに、ある程度の肩周りの柔軟性が必要ですし、
人によっては胸の苦しさを感じてしまうかもしれません。
その結果、維持できる平均出力が下がってしまっては本末転倒。
元も子もありませんよね(^^;
このような注意点はありますが、
基本となるエアロフォームを知り、
パワーの落ちない範囲で、それに忠実に従えば、
ライバルよりも一つ抜きん出ることは可能でしょう。
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