松木です。

 

キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。

2月のアブダビツアーにて初お目見えとなった
キャノンデールのエアロロード『SystemSix(システムシックス)』
ツールを目前に遂にベールを脱ぎました。

 

日本時間7月2日22時が解禁日時だったようで、
本家HPや自転車情報メディアが一斉に公開。

 

今シーズン序盤から度々プロトタイプが目撃されてきた、キャノンデール初のエアロロード「SYSTEMSIX」がついにデビュー。徹底的に煮詰められたエアロデザインと、ディスクブレーキに最適化されたインテグレートシステムによって、世界最速を謳うロードバイクがここに誕生した。スペイン・ジローナにて行われた発表会の様子とともに紹介しよう。

 

3年前、エアロへの潮流を全否定し、現行スーパーシックスエボをリリースしたキャノンデール。しかし、今回発表されたシステムシックスで...

 

 

『システムシックス』の形状的な特徴や
搭載されているテクノロジーなどは、上のサイトに任せるとして、

”世界最速のエアロロード”を謳う『システムシックス』に
科学的の観点から迫りたいと思います。

 

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『SystemSix』に見られる特徴的なエアロ形状

流線形のシッポを切り押した「カムテール」

キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。 『SystemSix』に見られる特徴的なエアロ形状
一見すると空気抵抗が小さそうな流線形のフレーム。

 

キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。 『SystemSix』に見られる特徴的なエアロ形状

縦幅が十分でないと、
フレームに沿うように空気が流れてくれず、
実は空気抵抗が大きくなってしまいます。

 

※図の「急にすぼまる」=「空気の剥離」=「空気抵抗が大きい」
というのがよく分からなければ、下の記事を参考に。

 松木です。 ツール・ド・フランス2017、第一ステージの個人TTは、チームスカイのゲラント・トーマスが制しました。 しかも、10位までの間にチームスカイの選手が4人も入る結果となっています。  しかし、レース終了後、FDJ(エフ・デ・ジ)のコーチが、次のことを主張。 「チームスカイの選手たちが着用していたスキンスーツはUCIルールに抵触しているのではないか?」 そのルールというのは、「エアロ効果を高める物を追加してはならない」というもの。 エアロ効果を高める物、それはスキン...

 

 

キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。 『SystemSix』に見られる特徴的なエアロ形状

続いて、流線形のシッポを切り押した
いわゆる「カムテール」と呼ばれる形状。

 

キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。 『SystemSix』に見られる特徴的なエアロ形状

縦幅が足りない流線形よりも空気抵抗は小さくなります。

 

そのため、このフレームに適した「カムテール」形状が
『SystemSix』の多くの箇所に採用されています。

ヘッドチューブ下部付近に見られる「Chine」

キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。 チェイン

ダウンチューブのヘッドチューブに近い部分がエグれています。

 

これが「Chine(チャイン)」と呼ばれるデザインで、
「フォークに沿って吹き上がってきた気流を後方へと流す」
という役割を果たしてくれます。

 

キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。 チェイン

キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。 チェイン

この「Chine」によって、
「ヘッドチューブを通過した空気の流れ」と、
「フォークから吹き上がってきた空気の流れ」がぶつからずに済み、

結果、乱流が発生してしまうのを抑えることが可能。

 

この理論は初耳ですね(^^)

他社8モデルと比較した風洞実験データ

キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。 空気抵抗

キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。 空気抵抗

『自転車単体』『時速30mph(≒48.28km/h)』
という条件における風洞実験データです。

 

20°のヨー角でCervelo『S5』に後れを取っている以外は、
すべてのヨー角においてCdA(空気抵抗係数)が最小。

 

キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。 空気抵抗

続いて、
この折れ線グラフ(①)「ヨー角の重み付け」()を組み合わせて、
「重み付けされた空気抵抗カーブ」(③)を作成します。
(現実世界において、大きいヨー角の風が吹く割合は低い)

それを数学的に棒グラフ化(④)

 

『Classic Road Bike(=SuperSix Evo)』を含めた10モデルに対して、
その処理を行ったグラフが次の通りです。

キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。 空気抵抗

やはり『SystemSix』の空気抵抗が最小。
(正確には「ヨー角の重み付けが為された空気抵抗係数」)

 

さらに、この棒グラフを元に
『時速30mph(≒48.28km/h)』における必要パワーを算出。

キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。 空気抵抗

このグラフから判断する限りでは、

  • TREK『Madone 9』より-6w
  • Cervelo『S5』より-10w
  • Scott『Foil』より-24w
  • 『SuperSix Evo』より-56w

 

これは素晴らしい……

 

 

ちなみに、『SuperSix Evo』比で、

  • 35km/h:-26w
  • 32km/h:-20w
  • 30km/h:-17w

となっており、低速であったとしてもエアロ効果は十分発揮されます。

『SystemSix』は勾配何%まで『SuperSix』より速いのか?

勾配●●%まで『SystemSix』は『SuperSix』よりも速いのか?
※「機械効率ロス」は、フレーム等のたわみにより失われるエネルギーで一定(3%)

75kgのライダーが300wで走った際、
各抵抗が占める割合を示しているグラフです。

 

大雑把な傾向としては、勾配がキツくなるほど、
「空気抵抗」「転がり抵抗」の割合が小さくなり、
「重力に逆らって登るのに必要な力」の割合は大きくなります。

 

 

では、何%の勾配まで『SuperSix Evo』(1kg軽いが、空気抵抗は大)より
『SystemSix』(1kg重いが、空気抵抗は小)のほうが速いのでしょうか?

 

 

その答えが、次のグラフです。

 

勾配●●%まで『SystemSix』は『SuperSix』よりも速いのか?

出力300w、体重75kg、つまりパワーウェイトレシオ4w/kgの場合では、
およそ6%が境界線(これを「ティッピングポイント」と呼ぶ)となります。

 

ただし、パワーウェイトレシオが4w/kgよりも大きい場合、
より速度が出て「空気抵抗」の占める割合が高くなるため、
必然的にティッピングポイントも6%より大きくなります。

 

勾配●●%まで『SystemSix』は『SuperSix』よりも速いのか?

このティッピングポイントは、
4w/kgでは6%、5w/kgでは7%弱だと公表されています。

 

また、グラフから読み取ると、
およそ3w/kgで5%6w/kgで8%弱だと見当がつきます。

 

勾配●●%まで『SystemSix』は『SuperSix』よりも速いのか?

例えば「Mt.富士ヒルクライム」のケースですと、平均勾配は5.2%

 

そして、90分以内のブロンズリングを獲得できるような人なら、
平均出力が3w/kg強は出ている計算になりますから、

『SuperSix Evo』ではなく『SystemSix』で挑むほうが良いタイムが出せることになります。

 

勾配●●%まで『SystemSix』は『SuperSix』よりも速いのか?

続いて、世界一有名な峠「アルプ・デュエズ」(距離13.8km/平均勾配8.1%)。

 

62㎏のライダーが350w(5.65w/kg)で登ったとしても、
『SuperSix Evo』のほうが10秒速いです。

 

ティッピングポイントは「6w/kgで8%弱」でしたから、
8.1%の「アルプ・デュエズ」のティッピングポイントは6w/kg強。

 

つまり、62㎏の人なら380w(6.13w/kg)で踏み続けられれば、
『SystemSix』のほうが速く登れますね!(無茶かw)

 

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スプリントにおける『SystemSix』の優位性

スプリントにおける『SystemSix』の優位性 キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。

『SuperSix Evo』と比較した場合、
1000wの200mスプリントにおいて、+2.1km/h-0.4秒7.2m先行

ダウンヒルにおける『SystemSix』の優位性

ダウンヒルにおける『SystemSix』の優位性 キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。中

 

【-5%】
『SystemSix』@200w:60.6km/h
『SuperSix Evo』@309w(+109w):60.6km/h

『SystemSix』@0w:53.1km/h
『SuperSix Evo』@0w:49.9km/h(-3.2km/h

 

【-6%】
『SystemSix』@0w:63.6km/h
『SuperSix Evo』@130w(+130w):63.6km/h

 

【-8%】
『SystemSix』@0w:74km/h
『SuperSix Evo』@0w:68.6km/h(-5.4km/h)(1km当たり+4秒、-80m)

ドラフティング中における『SystemSix』の優位性

ドラフティングにおける『SystemSix』の優位性 キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。

同じく『SuperSix Evo』と比較。

 

単独走行の場合は、48km/h走行において-50w以上削減。

 

ドラフテフィング中、空気抵抗は40%ほど小さくなりますが、
それでもまだ-30wも削減してくれます(1km当たり-4秒)。

フレーム単体重量

フレームセット重量 キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。

ペイントで+70g、フレーム小物で+65g

つまり、54サイズの実際のフレーム単体重量は、

 

957g+70g+65g=1092g(⇔『S5』54サイズの実測が1065g)

 

決して「十分に軽い」とは言えない重量ではあるものの、

「エアロ」の恩恵の大きさを考えれば、
目をつぶることができる程度の重さだと感じます。

フレーム剛性

フレーム剛性 キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。

『SystemSix』は、サイズごとにフレーム剛性を最適化。

 

「ヘッドチューブ(HT)剛性」(「ハンドリング」に影響)と
「BB剛性」(「パワー伝達性」に影響)に関して、
キャノンデールが”合格”と定める基準を、全サイズでクリアしています。

 

どうやら「エアロロード=剛性不足」といった心配は無さそうですね(^^)

ホイール『Hollowgram KNOT 64』

ホイール『KNOT 64』

【仕様】ディスクブレーキ、カーボンクリンチャー
【公表重量】1,642g(F:765g、R:877g)
【リムハイト】64mm
【リム幅】外幅32mm内幅21mm

【スポーク数】F:20本、R:24本

 

リム幅が尋常じゃありません……

 

内幅21mmはチラホラと見かけますが、
外幅32mmというのは聞いたことがありませんね(^^;

 

この極太のリム設計には

  1. 空気抵抗の削減
  2. 乗り心地の向上

といった2つの狙いがあります。

外幅32mmによる「空気抵抗」の削減

ホイール『KNOT 64』

フレームの「カムテール」の理屈と同じく

リム幅が広いと、上記のように空気の剥離が起こりづらく、
空気は後方へとキレイに流れていってくれます。

 

ホイール『KNOT 64』 風洞実験

こちらが、他社6モデルと比較した風洞実験データ。

 

『KNOT 64』は、どのヨー角でも
優れたCdA値(空気抵抗係数)を誇っていますが、

特に-15°以上の横風に強い印象です。

 

 

そして、先ほどのフレームの時と同様に
「ヨー角の重み付け」処理を行ってから棒グラフ化。

 

ホイール『KNOT 64』 風洞実験
(縦軸:25mph(≒40.23km/h)における「ヨー角の重み付けが為された空気抵抗係数」)

 

他社ホイールをおさえて最小値を記録。

内幅21mmによる「快適性」の向上

ホイール『KNOT 64』 快適性

また、内幅の広い『KNOT 64』に「GP4000s Ⅱ」23c、25cを取り付けると、
それぞれタイヤの太さは26mm、28mmまで膨れ上がります。

 

キャノンデール曰く、ロードバイクの「快適性」に重要なのは”タイヤ”

 

そして、表記よりも実測値が+3mmタイヤが太くなる『KNOT 64』は、
ロードバイクの「快適性」にも大きく貢献してくれると主張します。

 

 

キャノンデール『SystemSix』世界最速エアロロードを科学データ分析する。

以上、様々な科学データを見てきましたが、
『SystemSix』に掲げられた

 

〝Faster Everywhere(どこでも最速)〟

 

このコンセプトに、嘘偽りはなさそうです。

 

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