前回の続き……

 

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START~一合目下駐車場(3.4km地点)

「思ったよりバチバチせんぞ??」

 

計測開始地点まで先導車がゆっくり引いている。

その間に右車線の空いたスペースから難なく前へと上がっていけた。

 

 

「胎内洞窟入口」交差点を左へと曲がり、いよいよスタート地点が迫ってきた。

 

先導車も徐々に速度を上げて離れていく。

同時に、各選手がシフトアップし、集団全体のチェーン音が大きくなった。

 

「楽しんで来いよ~!」

 

道路脇から応援の声が飛んできた。

ただ、この時は集中していたため、正直自分の耳に入ってきていなかった。

 

「さて…どんなペースで入ってくるか…」

 

序盤のペース配分、位置取り次第でゴールのタイムは何分も変わりうる。

だからこそ、スタート直後の集団の動きに神経を張り詰めていたのだ。

 

「・・・あれ?なんか遅いぞ?」

 

料金所まで一直線に伸びた8%/500mの急坂。

ここで一気にペースが上がるものだと思っていた。

 

でも実際は30秒経ってもゆったりペースのまま。

おそらく4w/kgとかそこら。

 

集団全体が爆上がりするのを恐れていただけに拍子抜けし……

 

 

「ひゅんひゅんひゅんひゅんひゅん

 

 

右後方から何かが近づいてくる気配がした。

 

( ゚д゚)エッ!?

 

「マッ、マジで速え、、、」

 

かつてどのヒルクライムレースでも見たことがないほどの鋭いアタック。

8~9w/kgは出てそうな圧倒的爆発力で、2名の選手が飛び出していった。

 

1人は”アタック職人”として有名な大野選手(天照CST)だろうとの見当が付いた。

この時もう1人は分からなかったのだが、優勝された池田選手(ZWC)だった。

 

 

「最初の坂でペースが上がる」ぐらいしか予想していなかっただけに
自分はただただ唖然茫然と眺めているのみだった。

おそらく周りの多くの選手も同じ気持ちだったのではないだろうか?

 

「優勝を狙う走りとはこういったものなのか…」

 

「追わないと!」 

「行っちゃうよ!」

 

誰かが叫んだのを皮切りに集団全体のペースも上がった。

 

かなり速い。。。

 

上位争いしたいのであれば、この”流れ”には乗らないといけない。

だが、自分の目標はあくまで「65分切り」

 

もしこのペースに合わせればオーバーペースになりそうだった。

だから自分はこの”流れ”に乗らないことにした。

 

急坂を上り終え、料金所を通過。

そこで後ろを振り返ってみると……なんと2人しかいなかった!

 

「ずいぶんと抜かされてしまったなぁ…」

 

 

 

いや、むしろここからの走りが大事だ!

 

いかに良い集団に入れるか?

それが「65分切り」の大きなポイントになるだろうと気持ちを引き締める。

 

 

先ほどのペースアップでこたえた選手が落ちてきた。

その選手達をかわしつつ、前方に目をやって大きな集団を探す。

 

”ポツ ポツ ポツ”

 

「雨が降ってきたか?」

 

予報ではこの時間の降水量は0~1㎜だったはず。

走りに影響は無いだろうから、特に気にすることは無い。

 

「おっ、7番高岡選手(RX)だ!」

 

乗鞍で同じレースを走った際の印象としては
「急勾配でのダンシングが速い」
「コンスタントなペースを刻むのが得意で、好タイムでゴールされる」

 

だから、この集団で一緒に走るのはアリかもしれないと思ったのだが、

 

「………心なしかペースは遅め?」

 

遠のいていく前方の選手たち……

自然と高岡選手をパスし、その選手を追いかけていった。

 

 

高岡選手のレースレポートを読む限り、
どうやらこの日は調子が悪かったらしい。

 

第一チェックポイント「一合目下駐車場」通過9分42秒

 

ちょうどここで一緒に走れそうな小集団を見つけた。

53番落合選手、56番加賀谷選手、59番鈴木選手(プロトン伊豆)の3名だ。

 

この先は緩斜面も増えてくる。

ここで集団に乗れたのは運が良い!

 

 

と、ここで腕時計のLAPボタンを押して通過タイムを確認する。

 

「0:00???」

「……もっ、もしかしてスタートで押し損ねちゃったΣ(゚Д゚;)ガ~ン

 

各駐車場での65分切りボーダーラインタイムは頭に入れていた。

それが丸っとおじゃんに……(´;ω;`)ウゥゥ

 

「まぁタイムが分かったとて、やる事はさほど変わらんやろし……」

 

しゃあない。すぐさま気を取り直した。

一合目下駐車場~樹海台駐車場(10.5km地点)

前の選手が跳ね上げる水しぶきが、身体へと当たってくる。

 

「ビッシャビシャだな…」

 

今はほとんど降っていないから、朝方にでも一雨あったのだろう。

とりあえず走りに影響は無い。

 

 

28番三上選手(ZWC)が加わり、5名でしばらく走っていた。

 

……すると見知ったシルエットが視界へと入ってきた。

 

「あの水色のユニフォームは、、、もしや……梅ぴょんか?」

 

先頭集団のドンパチに突っ込み、見事返り討ちに合ってきた模様。

 

「梅ぴょん!!」

 

抜かし際に一声かけた。

 

「今日アカンす!!」

 

万全じゃない状態でよう頑張ったでな……

 

 

前方に5人前後の集団が目に入った。

50m以上は先だろうか……

届きそうでそう易々とは届かない距離だ。

 

この先「樹海台駐車場」を越えた辺りからスピードの出る緩斜面が続く。

しかも標高が高くなるためなのか、風もより強く吹いてくる。

 

「あの集団に合流して大きい集団となれば、楽に速く走れよう!」

 

「前の選手が大きくなってきたぞ!」

 

3名の選手が良いペースで回してくれているおかげで
前方集団との差がジリジリと、だが確実に詰まっていった。

 

およそ9分間追いかけ続け、ついにキャッチ!!

自分を含めた3名が前7人と合流したことにより10名パックとなる。

 

【合流した7人】
18番土肥選手(天照CST)32番若松選手(ちばサイクル)
42番倉垣選手(MIVRO)46番本田選手(F(t)麒麟山Racing)
47番松下選手(MIVRO)80番立花選手(ZWC)93番石井選手(アーティファクト)

 

「めちゃんこ走りやっすい(゚∀゚)!!」

 

土肥選手が積極的に引いてくれているおかげで、キレイな一列棒状。

まるで”急行列車”に乗せてもらっているような気分だ。

 

2017年富士ヒル、集団で走れるだけの脚力を持ち合わせておらず、
多くの時間が己との闘いだったレースとはまったく異なる感覚だ。

樹海台駐車場~大沢駐車場(17.2km地点)

第二チェックポイント「樹海台駐車場」通過27分53秒

 

スタートで腕時計を押し忘れたせいで
もはや速いのか遅いのかは全く分からん。。。

ただ、集団のスピード感から判断するに”遅い”ってことはないだろう。

 

 

「……おっとっと」

 

最後尾で走っていたら中切れしそうになった。

急いで抜かして前との差を埋めた。

 

実践初投入のLun『Hyper』

”鋭い「加速」⇒追い付くまでの「エアロ」”

今回のレース中、このコンビネーションで相当な回数助けられた。

重量も普通に軽いし、富士ヒルならば
これより速く上れるホイールはないんじゃなかろうか?

 

 

ここで落ちてきた50番川勝選手(MiNERVA-asahi)が新たに加わり、変わらず10名。

 

その後、ほどなくして2名の選手が脱落。

代わりに前から30番金子選手(COW GUMMA)、8番宿谷選手(竹芝サイクルレーシング)が連続で合流。

 

【10名集団】
8番宿谷選手、18番土肥選手、30番金子選手、32番若松選手、46番本田選手
47番松下選手、53番落合選手、80番立花選手、93番石井選手、そして自分

 

この集団は、あたかも新陳代謝を繰り返す生き物・・・そう、大蛇のようだった。

私はと言えば………ほどんど大蛇の尻尾となっていた。

 

「やっぱり風が少し強くなってきているな。。。」

 

樹海台駐車場の先は、勾配のアップダウンが少なめ。

だが、風が吹いてくるから思うほどスピードが上がらない区間。

 

そのせいだとは思うが、
これまで統率の取れた一列縦隊だった集団も
二列になったり、ばらけたりする瞬間が多くなってきた。

 

大沢駐車場に近づきつつあった中、
15km地点のやや手前で4名の選手を”パクリ”と飲み込む。

 

【合流した4人】
14番瀬戸口選手(Avenir YY)、17番谷古宇選手(天照CST)走行動画
38番荒瀧選手、66番宮城選手(天照CST)

 

そのさらに数分後には54番清宮選手(竹芝サイクルレーシング)

 

「ん?なんだなんだ!?」

 

16km過ぎ、思いがけない地点でペースが上がった。

ここまでで一番………5倍前半ぐらいの強度だと感じる。

 

どうやら若松選手が踏み込んだようだった(この時は分からなかったが)

 

この時ばかりは嫌な予感を感じたため、
様子見などせずにすぐさまギャップを埋めに行った。

 

 

”クラッ”

 

 

少し頭が揺れた。

 

……さすがに少し酸欠になってきたか?

しかしパワーに影響は出ていない。

付け焼刃ではあったが、2日前の低酸素トレーニングは活きていた。

 

 

その先、左180度カーブを”グイ~ッ”と曲がっていく……

大沢駐車場~奥庭駐車場(21.5km地点)

第三チェックポイント「大沢駐車場」通過46分15秒

 

「ついに大沢まで来たか……」

 

ここから奥庭駐車場までの4.3kmで坂道は終わり、平坦路が続く。

だから大沢駐車場に到達すると
Mt.富士ヒルクライムもいよいよ終盤、という感じがしてくる。

 

「がんばれ~~!!」

 

スタッフの方々が声援と拍手をくれる。

ただ、この駐車場の名物である
”ドンドドンドドドッ!!”という威勢のいい打撃音は聞こえてこなかった。

晴れた富士ヒルならば、4台の大太鼓が並べられ、
法被(はっぴ)を着た演奏者が、選手たちを鼓舞する打撃音をこだませているのだ!

 

あの音を聞くと、気持ちが”シャキッ”とするのだが……

コロナか小雨の影響だろう。とても残念だ。

 

奥庭駐車場までの間に3ヵ所勾配がキツくなる場所がある。

その初めの急勾配で1人の選手が先行。

先ほどからペースを上げていた若松選手だ。

 

自分は一列列車の5車両目を走っていた。

先頭の選手はなかなか見えない。

だから前3人が乱れた際の隙間から視認してようやく気がついた。

 

 

「あの選手に付いて行きたいけど、少し間を開けちゃったな…」

「今いる集団は相変わらず大きめだし…」

「最後の平坦路で結局この集団に吸収されるんじゃなかろうか…」

 

 

行かない理由ばかりが頭に浮かび、リスクが高いように思えた。

追いつける体力はまだ残っていたのだが「行かない」を選択。

 

 

レース後、この時どんな心境だったのかが気になり、若松選手に直接うかがった。

若松選手「自分と同じく何人か余裕があるんじゃないかなと思って……期待はしたんですけど、一人になっちゃった。」

自分「集団が大きくて行くのに抵抗があったんです。」

若松選手「あー、多分みんなそうだろうなと思って……誰かが付いてきてくれてれば、もうちょっと速く走れたかなって……しょうがないですね(笑)」

 

 

この先しばらく目立った動きは無く……

ペースも比較的ゆるく感じる。

一時は離れそうだった選手たちも再び合流していった。

 

奥庭駐車場手前、肘を”クイッ”とされたため、先頭へ。

強めの風が辺りの木々をゆらしていたが、幸い追い風方向だった。

スピードを乗せ、奥庭駐車場の急坂へと突入していった。

奥庭駐車場~FINISH(24km地点)

第四チェックポイント「奥庭駐車場」通過57分4秒

 

駐車場横の約250mの急坂を過ぎれば、
あとは平坦2km+坂道500mしか残っていない。

ここは気持ち強めに踏んだ方がいい坂だ。

 

5倍強までペースを上げる。

 

「はぁはぁ……いよいよここまできたぞぉ~~!」

 

息もだいぶ上がっていて『苦しい』

しかし、それと同時に『心地良さ』にも包まれていた。

 

白雲をまとった富士山頂が私たち選手を見下ろす荘厳の地で、
ライバルたちと高揚感溢れるースを走れるのも、あとたった4分間だ。

再び味わえるのは早くても1年後。

 

だからこそこの雰囲気を噛みしめ、楽しみたい。

 

【11名集団】
8番宿谷選手、14番瀬戸口選手、18番土肥選手、30番金子選手、46番本田選手、
47番松下選手、53番落合選手、54番清宮選手、80番立花選手、93番石井選手、自分

 

 

「きた!!!!」

 

最初の洞門手前、左手の空いたスペースから石井選手が飛び出していった。

ペースアップは覚悟していたが、この手のフルアタックは想定外だった。

 

本田選手のみが下ハンダンシングで素早く反応。

他の選手たちも「行かせまい!」と必死に追走。

自分も前を行く選手たちをブリッジしながら、
歯を食いしばって400w近くで捕まえに行った。

 

「ふうぅ~~」

 

2つ目の洞門でキャッチ。

石井選手も踏み止め、ペースがやや落ちる。

後ろの選手たちも続々と近づいてきた。

 

「ラストの坂まではもう何も起こらんかな?」

 

2人を捕まえて安堵。少し気持ちが緩んだ。

 

”ゴオォーーーーーー”

 

ピンクの戦車、金子選手が右手を通り過ぎていく。
公式レポートで知ったのだが、彼は序盤の4人逃げに加わっていた一人)

 

「……あれはアタック?? (゚Д゚)ポカーン」

 

たしかに速いが、下ハンも握ってないし、
ダンシングもしておらず、必死そうには見えなかった。

 

瞬時に追いかけるスペースも無く、またも出遅れてしまった!

これにピッタリ付けたのは、本田選手のみ。

 

周りの選手も傍観はせずにペースを上げた。

 

6番手につける。

 

S字カーブで先頭2人との距離が確認できた。

幸い完全には離れていない!

 

白線で滑ったり、ペダルを地面にぶつけて落車しないよう安全に曲がった。

 

S字カーブを抜けてすぐに坂道が目に飛び込んできた。

 

最後の最後、かつて幾多のドラマが繰り広げられ、
勝者と敗者を分けてきた500mの”心臓破りの坂”である。

 

瞬発力だけで登り切れる長さではない。

誰かの後ろについて楽できるほど緩くもない。

 

ゆえに、より強く踏んだ者が先にゴールへと辿り着ける。

単純明快。まさに自分好みのラストだ!

 

2017年は青息吐息の瀕死状態。

精魂尽き果てまともに踏めるような体力は残っていなかった。

だが、今回は最後まで踏み切れる自信があった。

 

「うおぉぉぉぉぉーーーーーー!!!!!!!」

 

一列の選手を横目にゴールへ向けて駆け上がっていく。

おそらく450wぐらいは出せていたと思う。

 

「ゴールまで1分半足らず!このまま全開でイケる!!」

 

先頭の金子選手が近づいてきた。

まだまだ力強いペダリングをされていた。

 

なかなか抜くことができなかったが、
3つ目の洞門内でついに先頭へと躍り出る。

 

洞門を抜けると、一気に視界が開けた。

左手に荷物トラックが”ずら~り”並んでいる。

 

そして、その先。

目を凝らすと小さく『FINISH』の立て看板が見えてきた。

 

「よっしゃ!行くぞ!」

 

”ガチャン!”とシフトアップ。

ダンシングでラストスパートをかけた。

 

「ゼェ!ハッ!ゼェ!ハッ!」

 

口を大きく開き、薄い酸素を目一杯取り込もうとする。

そして残った脚力を全てペダルへと叩きつけた!!

 

 

「1.05.26…………えっ、嘘だろ……」

 

”サーッ”と血の気が引いた。

目標の65分切りにわずかに届いていない!?

 

「もしや、やっちまったのか?」

 

胸に押し寄せてくる落胆と後悔の念……

ゴールしたのにポジティブな感情など一切感じられなかった。

 

 

記録:1時間1分35秒23
順位:主催者選抜クラス18位(総合20位)

 

どうやら「会場~計測開始地点」のタイムも含まれていたらしいε-(´∀`*)ホッ

その事実を知り、ようやく達成感がふつふつと沸き起こってきた。

 

「やったぜ…」

 

前回よりも5分以上も早い、思いがけない好タイムだった。

だが、ど~考えても一緒に走ってくださった方々のおかげなので大変恐縮している。

 

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レースを終えて思うこと・・・”最強”とは何か?

レース後、同じパックで走っていた若松さん、立花さん、
ZWIFTでよくご一緒していた貴家(さすが)さん、池田さん、
天照の加藤さん、「突撃王」の異名をもつ布留川(ふるかわ)さんらと少し話させていただいた。

 

「同じ釜の飯を食った」……は大袈裟だが、
参加者の誰もが富士ヒルのためにトレーニングを積み、
この日本一の霊峰を苦しみながら精一杯登ったのだ。

 

そんな方々とのレース後の会話は実に楽しい!

 

 

一緒に下山した方がくださった『最強』シール。

 

「”最強”……か。」

 

私には全くもって不釣り合いな言葉で、ピンとこない。

 

「65分切りゴールドリング」を獲得した今、
次なる分かりやすい目標は「60分切りプラチナリング」だ。

 

だが、プラチナリングを取れるならば、先頭集団で闘える実力はあろう。

そして先頭集団を走る自らの姿を想像するだけで、
なんだか胸がワクワクドキドキと高鳴ってくるのだ!

 

 

もし来年もMt.富士ヒルクライムが開催され、再び参加するとなれば、
おこがましいだろうが、やはり「優勝争いに加わる」が目標だ。

 

それが実現できた時、『最強』がなんたるかを理解できるのかもしれない。


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