松木です。
「エアロハンドルのどこまでバーテープを巻くのか」という問題。
大抵の場合、次の二択です。
- 見た目を意識して、上の写真のようにブラケットまでしか巻かない
- 上ハンドルを持つ位置まで巻く
ですが、空力学的な観点も入れて、もう少し深く考えてみたいと思います。
F1のエアロダイナミクス研究、
他メーカー(「DT SWISS」「CUBE」)との共同開発、
自社ブランドホイールの制作。
空気抵抗に関する事業を幅広く行っている
空力のスペシャリスト集団「SWISS SIDE」。
彼らによって、
「バーテープの位置の違いで、どれくらい空気抵抗が変わるのか?」
という、少し気になっていた疑問が明らかにされました。
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実験方法
キャニオンのエアロロード「Aeroad」を使います。
専用エアロハンドルに、一般的な厚さのコルクバーテープを巻き、
45km/h走行を想定して風洞実験を実施。
①ステム近くまでバーテープを巻く
意外にもトッププロ選手にしばしば見られる巻き方で、
フルームのバイクなんかも比較的この状態に近いです。
②上ハン部分には一切バーテープを巻かない
「見た目」「エアロ」を重視した位置です。
自分は上ハンドルを全く握らないので、この状態。
③「①」と「②」の間までバーテープを巻く
上の写真だと、段差になっている辺り
最もポピュラーな位置までバーテープを巻いた状態。
以上の3パターンで比較されました。
実験結果
①+0.7w(水色)
②-0.7w(黄緑)
③0w(赤)(基準)
①と②の差は1.4w。
45km/hだと速すぎるので、
もう少し現実的な42km/hに換算すると、およそ1.14w。
これは、速度差にして0.053km/h、
40キロTTをした際には、4.3秒、50mのアドバンテージを生む計算になります。
決して大きな効果とは言えませんが、
競技者にしたら無視できない数字でもあるように思います。
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どこまでバーテープを巻くべきかの結論
2016年の「ツール・ド・おきなわ」で40km独走優勝した増田選手。
”ブラケットの角”を持ち、肘を90度に曲げて頭を下げた
非常に空気抵抗を小さいエアロフォームで逃げ続けました。
そして、こちらが2017年「全日本ロード」で31km独走優勝した畑中選手。
増田選手と似たフォームを取っていますが、
ブラケットではなく、”上ハンドル”に腕を置いています。
このフォーム、横幅が相当コンパクトになり、
お腹の空間に入ってくる空気もかなり減らせます。
空気抵抗の割合が圧倒的に大きい「体部分」だけあって
増田選手のフォームと比べて-10w、+0.5km/hも十分ありえそうです。
その反面、明らかに安定感は低くなってしまいますが、
バーテープをステム近くまで巻いていれば、
上ハンに置いた腕は滑りにくい上に、クッションで痛くなりにくいため、
長時間、このフォームを維持しやすくなります。
「常時+0.053km/h」か「勝負所での+0.5km/h巡航」という選択。
今回の「SWISS SIDE」の実験結果を受け、
さらに「勝つためにはどちらの選択が正解なのか」と考えてみた結果、
「ステム近くまでバーテープを巻こう」と思い直しました。
(ただし、ヒルクライムなら、やはり巻かないほうが有利かと)
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