松木です。
空力学のエキスパート集団AeroCoachが、
『GP5000』の「空気抵抗」をテストしました(こちら)。
前回、
『GP5000』の「転がり抵抗」は、クリンチャートップの『GP TT』に匹敵する
という趣旨の実験を紹介しましたが、
今回は「タイヤの”エアロ”も考慮するとどうなの?」という話。
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イントロダクション
『GP4000sⅡ』は「転がり抵抗」「耐パンク性」の両方優れていることで知られていますが、
更にトレッドパターン(模様)が風洞実験おいて優秀な性能を発揮するため、
”エアロタイヤ”と言われたりもします。
そこで、本テストの目的は、
コンチネンタルの新作タイヤである『GP5000』の
「転がり抵抗」と「空力性能」を評価することです。
テスト方法
『GP4000sⅡ 23c』『GP5000 23c』、
そして「転がり抵抗」が非常に小さい『GP TT 23c』の3種類のタイヤを用意。
『GP4000』:実測25.7mm幅、葉っぱのようなパターン
『GP5000』:実測25.2mm幅、『GP4000』よりもシャープなパターンで、その数も少なめ
『GP TT』:実測26.2mm幅、正面スリック/側面ヤスリ目
- タイヤ空気圧は90psi(≒6.21bar)に設定
- 45km/hを想定した風を流す
- 精度を高めるため、各タイヤ毎に複数回試行
前輪のみタイヤ交換しているのは、後輪タイヤの空気抵抗の影響は小さいから。
また、想定速度が45km/hなのは、
実際のレース速度に近く、かつ強い風のほうが綺麗なデータが取れるため。
(もし35km/hのデータを得たければ、45km/hの結果からの算出も可能)
以上は、主に風洞実験方法の詳細ですが、
同時に「Crr(転がり抵抗係数=Coefficient of Rolling Resistance)」も測定。
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テスト結果
空気抵抗
【補足】ヨー角について
ヨー角は「風が吹いてくる角度」ではありません。
ライダーの速度&向き、風の速度&向き。
この4つの要素から算出される
「認識される(ライダーが体感する)風向きの角度」です。
- ヨー角0~2.5°では、3種類の空気抵抗の差は小さい
- GP5000はあらゆるヨー角で優秀
- GP4000はヨー角が大きいほど空気抵抗も大きくなる
- GP TTは2.5~10°の空気抵抗は大きいが、10~15°で盛り返す
上の記事で示しているデータから
「『GP4000』は、ヨー角が大きいほど空気抵抗は有利になる」
と考えていましたが、これは今回のテスト結果と異なりますね(^^;
続いて、
小さいヨー角(現実世界で大半の時間を占める)ほど重み付けして
パワーロス値を算出。
その結果は次のようになりました。
『GP5000』が最もエアロ。
僅差で『GP4000』、少し開いて『GP TT』。
転がり抵抗
測定されたCrrを元にして
「転がり抵抗」によって失われるパワーを計算。
- GP TT:26.6w
- GP5000:29.7w(+3.1w)
- GP4000:33.7w(+7.1w)
前回記事のテストでは、
「転がり抵抗」はGP TT≒GP5000という結果でしたが、
本実験では、両者の間にハッキリと差が出ましたね(^^)
この点に関しては、
実験の施設・方法の違いが、結果の違いにつながったのだと考えられます。
特に
- ローラーの表面の質(本実験では滑らかな表面をもつローラーを使用)
- 実験速度(29km/hと45km/h)
- 片輪だけか、両輪か
これらの違いは大きいでしょう。
空気抵抗+転がり抵抗
最後に、上記で得られた
「空気抵抗」「転がり抵抗」のデータを組み合わせて、
”最速のタイヤ”を決定します。
- 【1位】GP TT:28.3w
- 【2位】GP5000:29.7w(+1.4w)
- 【3位】GP4000:34.0w(+5.7w)
確かに、タイヤの「空気抵抗の差」は無視できないものの、
やはり「転がり抵抗の差」の方が大きいために『GP TT』が1位という結果に。
ちなみに、35km/hのケースでは、
- GP TT:21.5w
- GP5000:23.1w(+1.6w)
- GP4000:26.4w(+4.9w)
『GP TT』と『GP5000』の差が1.4w⇒1.6wと広がっているのは、
「速度が遅い⇒空気抵抗が小さい⇒『GP TT』の空力の悪さの影響が小さくなる」
という理屈が通るからです。
『GP5000』と『GP TT』どちらが速いタイヤなのか?
前回の記事の最後に
「『GP5000』の総合性能が高すぎるが故に、
結果的に、ヒルクライムでさえも最速で走れてしまう気がする」と話しました。
ですが、
今回のテスト結果を信用するならば、そうとも言い切れません。
- ヒルクライムなら平均速度は35km/h以下⇒『GP TT』なら『GP5000』より1.6w以上削減
(低速ほど「転がり抵抗」の小さい『GP TT』にとっては有利) - 『GP TT 25c』(実測195g)は『GP5000 25c』(実測221g)より一本当たり約25g軽い
⇒リム外周部を計50g軽量化でき、ヒルクライムにおいては決して無視できない重量差 - ヒルクライムにおいて『GP5000』のグリップ力は、そこまで重要にはならない
ですから、
ヒルクライムにおいてはまだ『GP TT』の優位性は揺るがない
と言えるのではないでしょうか?
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