松木です。

 

タイヤの「速い、遅い」を決める際に注目されるのは
十中八九が”路面抵抗”ですが、
実は、前輪に関しては”空気抵抗”がかなり重要だという話です。

 

以前、下の記事で路面抵抗の低いタイヤを検証しましたが、
「空気抵抗」を考えた際、最速のクリンチャータイヤは変動してしまいます。

『世界最速のクリンチャータイヤを決める。』

 

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Cycling WEEKLYの記事「タイヤの空気抵抗の影響は?」

Do your tyres actually make a difference to aerodynamics? And how can you pick the right ones to go with your bike and wheels to make you faster?

 

かなり面白い記事なんですが、
すべて英語なので、要点だけいくつか挙げてみます。

 

  • タイヤの空気抵抗を考えるべき速度は30~35km/h以上
  • タイヤの空気抵抗に関係する要素は、タイヤ直径/リム幅が80%、タイヤトレッドが15%、ホイールの回転速度が5%
  • 空力的に最適なタイヤ幅は、ホイールブレーキ面の幅-2~4mm
  • Continental GP4000S IIは、偶然にも斜めからの風に対して空力的に非常に優れているトレッドパターンである
  • スリックタイヤ、トレッドパターンが不適切なタイヤは、斜めからの風に対して”セーリング効果”が生まれずに空気抵抗が大きい
  • 太いタイヤは、”セーリング効果”が生まれにくいだけでなく、80%を占める正面~やや斜めの風に対しても空気抵抗がやや悪い

 

タイヤに関しては、
「25cが良い」だとか、「路面抵抗が低いタイヤが良い」というのが常識ですから、
「前輪に太いタイヤやスリックタイヤはNG」という見解は新常識かもしれません。

各タイヤの具体的な空気抵抗

本シリーズの パート 1 では、 Front FLO 60 Carbon Clincher ホイールに装着した様々なタイヤによって生み出される空気抵抗を調べました。   多くの方がご存知のように、最速のタイヤを探す際、空気抵抗はその公式の半分に過ぎません。   タイヤの回転...

 

ホイールメーカー「FLO」の、ホイール「FLO 60」に取り付けた状態での実験結果です。

 

ホイール「FLO 60」

ブレーキ面は26mm程度といったところでしょうか。

「GP4000S II 23mm」 VS 「GP4000S II 25mm」(太いタイヤ)

各タイヤの具体的な空気抵抗 「GP4000S II 23mm」 VS   「GP4000S II 25mm」

 

「GP4000S II」タイヤ

黄色のほうが「GP4000S II 23mm」です。

 

「GP4000S II 25mm」を26mm幅のリムに取り付けた場合、
実際のタイヤの幅は、膨れ上って27~28mmほどになります。

空力的にはリム-2~4mmが最適なタイヤ幅ですから、
前輪に25mm幅のタイヤを付けることは太すぎます。

結果、正面~やや斜めからの風に対して
23mmタイヤよりも常に空気抵抗が大きくなります。

また、現実世界ではあまりない風ですが、15°~の風に対しては、
23mmタイヤに比べて空気抵抗がかなり大きくなってしまっています。

 

ただ、25mmタイヤのほうが路面抵抗が低いため、空気抵抗のデメリットを上回り、
40kmTTにおいては、25mmタイヤのほうが、2秒ほど速く走れる結果になります。

「GP4000S II 23mm」 VS 「Supersonic 23mm」(スリックタイヤ)

各タイヤの具体的な空気抵抗 「GP4000S II 23mm」 VS   「Supersonic 23mm」

 

「Supersonic 23mm」タイヤ

ヨー各10°までは「GP4000S II 23mm」と変わりありませんが、
それ以上の斜めからの風に対しては、大きな抵抗を生みます。

これは「境界層移行」という空力学的に重要な現象が、うまく機能しないためです。

 

それでも「路面抵抗が非常に低い」、「浅い角度での空気抵抗は良い」ので、
結果的には、40kmTTにおいて、「GP4000S II 23mm」よりも6秒速く走れます。

「GP4000S II 23mm」 VS 「Bontrager R4 22mm」(タイヤとリムの隙間を埋める構造を持つタイヤ)

各タイヤの具体的な空気抵抗 「GP4000S II 23mm」 VS   「Bontrager R4 22mm」

 

「タイヤとリムの微妙な溝が乱気流を生む」
というのを聞いたことがあるかもしれまんせんが、
それは果たしてどれだけの効果があるんでしょうか?

マビックには、この溝を埋めるための
ゴムを取り付けるホイールがあったりします。

 

「Bontrager R4 22mm」タイヤ

「Bontrager R4 22mm」 aero wings

「Bontrager R4 22mm」タイヤは、
タイヤとリムの溝を埋める形状になっています。

取り付けたことがありますが、かなり綺麗に溝を埋めてくれます。

 

ただ、風洞実験を見る限り、この形状はほとんど機能しておらず、
「タイヤとリムの溝の乱流は、空力学的にはほぼ無視できる程度」だと分かります。

グラフは、同じスリックタイヤの「Supersonic 23mm」に近いものになっていますね。

 

「Bontrager R4 22mm」タイヤは路面抵抗は、
「GP4000S II 23mm」よりもやや劣るぐらいですから、
40kmTTにおいて、「GP4000S II 23mm」よりも6秒遅くなります。

「GP4000S II 23mm」 VS 「S-Works Turbo Cotton 24mm」(路面抵抗的に最速のタイヤ)

「GP4000S II」 VS 各タイヤの具体的な空気抵抗 「S-Works Turbo Cotton」

 

「S-Works Turbo Cotton 24mm」タイヤ
「S-Works Turbo Cotton 24mm」は、リム幅に対して太い過ぎるため、
正面からの風に対しての空気抵抗が大きく、
また、ブツブツのトレッドパターンが斜めからの風に対しても良くありません。

つまり、「横風に煽られやすい」ということです。

 

「S-Works Turbo Cotton 24mm」は、世界一とも言える路面抵抗の低いタイヤですが、
空気抵抗も考慮すると、40kmTTにおいて「GP4000S II」よりも3秒遅くなってしまいます。

 

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路面抵抗、空気抵抗を考えた最速のタイヤとは?

路面抵抗、空気抵抗を考えた最速のタイヤとは?

路面抵抗と空気抵抗の両方を考慮した40kmTT、180.2kmTTでの、
前輪FLO60+各タイヤのタイム短縮結果です。

 

さっき話には出しませんでしたが、
一般的に速いタイヤと思われている「S-Works Turbo 24mm」や「One 25mm」は、
「GP4000S II 23mm」に比べて、12秒以上遅いという驚きの結果になっています。

これは距離にして130m以上です。

 

路面抵抗に関しての科学的実験はよく見ますが、
空気抵抗にまで突っ込んだものはほとんど見たことがありませんから、
貴重な実験結果だと思います。

 

 

さて、「GP4000S II 23mm」を基準にして見ると、
これよりも速い結果なのは、次の3種類。

 

  • 路面抵抗と空力のバランスの良い「Force 24mm」
  • 路面抵抗の非常に低い「Supersonic 23mm」
  • 「GP4000S II 25mm」

 

「Supersonic 23mm」は、
耐パンク性能が非常に低いですから、
あまり実用的とは言えないタイヤです。

 

「GP4000S II 25mm」はタイムだけ見れば、
「GP4000S II 23mm」よりも良い結果になっていますが、
横風に強くて煽られにくいのは23mmのほう。

 

2秒のメリットよりも操作性を取るならば、

 

”前輪に「GP4000S II 23mm」、後輪に路面抵抗の低い25mmタイヤ”

 

というのが、
「速さ」に加え、「コスパ」、「耐パンク性」、「操作性」など、
バランスの良い、前後タイヤの組み合わせです。

 

 

それから、
「ATTACK 22mm」は「GP4000S II 23mm」よりもやや遅い結果ですが、

先日発売した「ATTACK & FORCE 」なら、
「ATTACK」が23mmですから、
空力的に改善され、さらに太くて路面抵抗も低いですから、
「GP4000S II 23mm」よりも速いはず。

 

『2017年からコンチネンタルタイヤが変わった!?「アタック&フォース 3」の評判』

 

そう考えると、
「ATTACK & FORCE Ⅲ」が、最速のタイヤ組み合わせかもしれません。
(後輪用の「FORCE 24mm」は、前輪に付けても最速の結果となっています)

 

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