松木です。

 

以前、この本の背景について記事にしました↓

『4/25発売。「ロードバイク本音のホイール論」について。』

 

シマノでホイールの研究・開発・設計を担当し、
カーボンホイール設計、風洞試験、ホイールの耐久試験などを手がけていた
田中良忠さんが物理的な観点から、

ロードバイク歴33年で、300種類以上のホイールを乗ってきた
フリーサイクルジャーナリストの吉本司さんが「知識」と「感覚」の観点から

ロードバイクホイールについてのみ語っている本です。

 

本を読んだ感想を話していきます。

論文みたいに難しい内容を想像していましたが、
専門的ながら、幅広く受け入れられるよう分かりやすく書かれていました。

 

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『ロードバイク本音のホイール論』の目次

第1章 ホイールの基礎知識(担当:吉本 司)

ホイールの歴史
手組から完組へ
完組ホイールの登場
ホイールの近代化
ミシュランからはじまったレース用クリンチャータイヤ
チューブラータイヤの上質さ
ロードバイクタイヤの未来はどこにある?
ホイールを評価する

 

第2章 ホイールの作りかた(担当:田中 良忠)

ホイールはリムが7割
アルミホイールの作りかた
カーボンは頑丈で軽く、高剛性
カーボンホイールの作りかた
ホイールに加わる力

 

第3章 ホイールのウソ・ホント(担当:田中 良忠)

リムハイトの意味
軽さだけに着目してはいけない
エネルギーか、フィーリングか
メーカーと軽量化
50万円のホイールよりも2万円のホイールのほうが進む
ニップルは外出しでもOK
アルミスポークにメリットはない
スポークの形とテンション
スポークパターン
ハブフランジ
ラチェットと軽量クイック
ハブで走りを軽くできるか?
タイヤに投資すべし

 

第4章 よりよいホイールに出会う(担当:田中 良忠)

軽さは正義か?
剛性と脚力
カーボンホイールを恐れない
ホイールを絞り込む
リムに加わる力
スポークは引っ張るだけ
ゴキソホイールの秘密は?
空気抵抗削減の意味は大きい

 

第5章 ホイールを使いこなす(担当:吉本 司)

クイックを締める
日常のメンテナンス
空気圧で走りを変える
タイヤでホイールは変わる
ホイール選びは目的から
独自の味を持つカンパニョーロ
マヴィックは転がりが強い
「穴」がないシマノ
群雄割拠のホイール界

 

おわりに ~道楽としてのホイール~

第1章 ホイールの基礎知識(担当:吉本 司)について

第1章 ホイールの基礎知識(担当:吉本 司)について

ホイール黎明期1980年代まで遡り、
現在までのホイール歴史、そして未来予想まで書かれています。

 

特に知りたいような事ではなかったですが、
「へぇ~、そうだったんだ」と楽しみながら読めました。

この本を手にするような人だったら、
誰もが面白いと感じるんじゃないでしょうか。

 

ただ、聞き慣れない単語(オーディナリー型など)も出てきてイメージしにくく、
その単語が表す写真を載せくれれば深く理解できるのに‥‥も感じました。

 

それから、
吉本司さんのホイール性能基準について語っている部分があるんですが、
「剛性、軽量というのはホイールの一要素でしかない」
という文章は、的を得ているなと思いました。

第2章 ホイールの作りかた(担当:田中 良忠)

第2章 ホイールの作りかた(担当:田中 良忠)

「ホイールはリムが7割」と話す意味を、
「ホイールの素材・形状」、「ホイールに加わる力」といった観点から説明し、
結果、「どういったリムが速く走れるのか」の答えへと導いています。

 

少しネタバレになりますが、
この章に書かれていることを簡単にまとめると、

ホイールにおいてリムは最も重要で、
「剛性」(駆動剛性+横剛性)と「空力学的形状」が特に大事。

その上で、ある程度軽量なものとなると、
現在主流の”カーボンディープなワイドリム”になる、ということ。

第3章 ホイールのウソ・ホント(担当:田中 良忠)について

第3章 ホイールのウソ・ホント(担当:田中 良忠)について

田中良忠さんのホイールに関する考え方に深く触れている章、
つまりは、SACRAホイールの設計思想そのものだとも言えます。

DURAホイールについての言及はほぼありませんが、
おそらく田中さんも関わったであろうDURAホイールの裏側も
何となく垣間見えてきます。

 

まず、具体的な数字を交えながら
「リムが重いデメリットは少ないが、リムが軽いデメリットは多い」
ということを解説してくれたりしています。

その反面で、自分たちロードバイク乗りが
「重いリムが物理学的に考える以上に遅いと感じる傾向にある」とも話していますが、
その理屈を説明した部分も、「なるほど!」と思わせる納得いくものでした。

 

 

その他にも、

 

  • 反フリー側はラジアル組にすべきか、タンジェント組にするか
  • 内臓ニップルについて
  • 結線について
  • 無視できない駆動剛性を示す「スターラチェット構造」を各社が採用しない理由
  • ベアリング玉の等級、セラミックベアリングについて

 

など、ホイールの性能を考える上で外せない事柄について
抜け目なく書いてくれています。

 

ページ数の関係からサラッと済ませ、
少し説明が足りないように感じる箇所もありましたが、
一番興味深く読めた章でした。

ここに書かれた知識があれば、
メーカーの売り文句にだまされず、
「進むホイールかどうか」ということを自分で考えられると思います。

第4章 よりよいホイールに出会う(担当:田中 良忠)について

第4章 よりよいホイールに出会う(担当:田中 良忠)について

この章では、これまで書かれた内容をもとにして
「どのようにホイールを選んでいけばいいか」
ということが主題になっています。

 

ただ、

「ホイールの横剛性の測定方法」
「カーボンホイールの体重制限はブレーキ熱によるものである」
「スポーク切れの原因」
「ゴキソホイールが速い理由」

 

などといったコラム的なトピックも多く、
内容的に、あまりまとまりがあるような感じがしませんでしたが、
ある程度は面白く読めました。

第5章 ホイールを使いこなす(担当:吉本 司)について

第5章 ホイールを使いこなす(担当:吉本 司)について

「ホイールの性能を最大限引き出す玉当たり調整法」
「アルミとカーボンでブレーキパットは使い分けるべきか?」
「トーインは本当につけるべきなのか?」
「空気圧が高いほど速く走れるのか?」
「タイヤとホイールのベストな組み合わせとは?」
「各ホイールメーカーがもつ乗り味の特徴」

 

など、ちょっと気になるホイールにまつわる
豆知識について多く書かれている章になっています。

 

当たり前のようにNGなことをやっていることも多いので、
自分が冒している間違いを正すのに役立つでしょうね。

 

知識が豊富な人なら既知の話題も多いかもしれませんが、
ホイールの性能を100%発揮させるためのヒントが散りばめられていました。

 

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まとめ

『ロードバイク本音のホイール論』を読んだ感想

はっきり言ってネットに書かれている
ホイールに関する情報は間違いもかなり多いです。

 

常識っぽいことを鵜呑みにしていたり、
どこかで聞いたことを知ったかぶりで話しているものもあり、
真偽のほどはちゃんと確かめられていなかったりします。

 

対して、この本に書かれていることは、
非常に論理的かつ、信用に足る十分な経験則に基づいており、
よりホイールの真理に近づいている内容になっています。
(「科学的データがもっと欲しい」とも正直感じましたが‥‥)

 

この本を読めば、
誰しもが少なからず持っているであろう
ホイールに関する偏見は解かれるでしょうし、

 

そうすることで
自分に本当に合っているホイールを見つけるための
近道になることは間違いありません。

 

初心者はもちろん、相当マニアな人でも満足させる
素直にオススメできる本に感じました。

 

 

ホイールに関して、もっと物理学的に知りたいなら、
SACRAのHPにあるコラムを読んでみてください。

例えば、本の中では難しくて割愛されていた
「スポークテンションを上げすぎると、わずかに横剛性が落ちる」
ということが、より詳しく書かれていたりします。

ロードバイク用自転車部品の研究&開発、カーボンホイール、DHクローザー、シートハイトアジャスター、低摩擦チェーン、チェーンオイル、ベアリングアジャストプレート

 

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