松木です。
ロードバイクチェーンをつくるWippermann(ウィッパーマン)が、
12種類の11速チェーンに対して耐久テストを実施しました。
- Connex『11SX』
- Connex『11SB』
- Connex『11SO』
- Shimano Dura-Ace『CN-HG901』
- Shimano Ultegra『CN-HG701』
- Shimano 105『CN-HG601』
- Campagnolo『Record』
- KMC『X11SL Gold』
- KMC『X11-93』
- Sram『XX1』
- Sram『1110』
- FSA『N1』
なかなか面白い結果が出ているので紹介します。
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Wippermannについて
知名度は低いですが、
Wippermannは1893年創業の老舗メーカー。
現在は”チェーン”が主力商品で、
「Connex(コネックス)」というブランド名を付けています。
一時期”チタン製”で5万円を超えるチェーンを作っていたりもしました。
チェーンに対する情熱の高さがうかがえます。
(普通はこんな商品つくりません(笑))
ちなみに、106リンクで226g。
これはDura-Aceと比べて10gも変わりません(^^;
今回の耐久テストは、
Wippermannの主力商品であるConnex『11SX』という
ステンレスチェーンが”長寿命”だと示す目的で実施されています。
テスト方法
テスト方法を説明します。
試験装置がこちら。
前52T、後ろ17Tのギア、
チェーンに異物を吹きかけるノズルなど。
後ろ17Tの部分は前後左右に動くようになっていて、
「テンション」や「チェーンライン」を変化させられます。
続いて”実験条件”。
- 63リンクのConnex『11SX』(←毎回同じ)
- 63リンクの他メーカー「11速テストチェーン」(←変更される)
の二種類をConnex製のミッシングリンクで二箇所つなぎ合わせ、
合計で128リンクの状態になったチェーンを試験装置に引っ掛けます。
そして、600Nのチェーンテンションを加えながら、
ケイデンス90rpmでフロントギアを回転させ、
一定の時間が経過したら、チェーンの伸びを測定します。
ただし、単に回転させ続けるのではなく、
ロードバイクの実走環境に近づけるため、少し工夫をしています。
- チェーンアングル(0°、+5°、-5°)
- チェーンに吹きかける異物(水20ml、オイル15ml、砂15ml)
- 回転させる時間
これらの条件の違いによって、
4種類の”フェーズ”に分けて考えます。
【フェイズ①】
アングル:0°
吹きかける異物:無し
回転時間:5時間
【フェイズ②】
アングル:+5°(インナー×トップを再現)
吹きかける異物:フェーズ開始直後に「水20ml→オイル15ml→砂15ml」
回転時間:10時間
【フェイズ③】
アングル:-5°(アウター×ローを再現)
吹きかける異物:フェーズ開始直後に「水20ml→オイル15ml→砂15ml」
回転時間:10時間
【フェイズ④】
アングル:0°(アウター×ローを再現)
吹きかける異物:フェーズ開始直後に「水20ml→オイル15ml→砂15ml」
回転時間:10時間
そして、
「フェーズ①→②→③→④→③→④→③→④→‥‥‥」というように
①~④を行った後、ひたすら③と④を繰り返します。
各フェーズ完了時には、
必ず「チェーン洗浄」と「伸びの測定」を行い、
チェーンの伸びが1%を超えた時点で終了とします。
実験結果
【1位】Connex『11SX』187時間(≒6,695㎞)(100%)
※距離は、タイヤ外径を690mm(25cタイヤを入れたホイールの実測値)として算出。
【2位】Campagnolo『Record』132時間(≒4,726㎞)(71%)
【3位】Connex『11SB』125時間(≒4,475㎞)(67%)
【4位】KMC『X11SL Gold』112時間(≒4,010㎞)(60%)
【5位】Shimano『CN-HG901』87時間(≒3,115㎞)(47%)
【6位】Connex『11SO』85時間(≒3,043㎞)(45%)
【7位】FSA『N1』74時間(≒2,649㎞)(40%)
【8位】Shimano『CN-HG701』70時間(≒2,506㎞)(37%)
【9位】Shimano『CN-HG601』67時間(≒2,399㎞)(36%)
【10位】KMC『X11-93』58時間(≒2,076㎞)(31%)
【11位】Sram『XX1』57時間(≒2,040㎞)(30%)
【12位】Sram『1110』53時間(≒1,898㎞)(28%)
チェーン伸びに関する考察
- Connex『11SX』が長寿命なのは”ステンレス製”という部分が大きそう
- 伸びにくさの傾向は「Connex>カンパ>シマノ>スラム」
- シマノに関してはグレードが高いほど寿命は長い
なぜConnex『11SX』は長寿命なのか?
チェーンは、上の4種類の部品から成ります。
内プレートを「インナーリンク」、
外プレートを「アウターリンク」と呼んだりもします。
そして「チェーン伸び」という現象。
「伸び」とは言っていますが、
実際にチェーンの金属自体が伸びるのではなく、
4種類の部品同士が互いに削り合い、
その間に微小な隙間が空いていくことで起こります。
つまり、チェーンが削れにくければ、
チェーンの寿命も長くなる訳です。
すると、チェーンの寿命を決める主な要因は、次の4つ考えられます。
- チェーン素材自体の摩耗しにくさ
- 摩擦に関わる「コーティング処理」「潤滑剤」「金属表面の滑らかさ」
- チェーンの汚れ具合(細かいゴミや金属粉により削られる)
- チェーンにかかる負荷の大きさ(パワーの大きい人ほど伸びるのが早い)
2の「潤滑剤」の種類次第で
摩耗を大きく減らせることは、下の記事でも話しました。
科学が実証する世界最速のチェーンオイルCeramicSpeed『UFO Drip Chain Coating』
以上の4つ要因の中で、
Connex『11SX』にしか備わっていないのは、
インナーリンクが”ステンレス製”ということ。
(他のチェーンは”スチール製”)
ステンレスという素材は、相当硬く、削れにくいのだと考えられます。
ちなみに、
Connex『11SX』には「ニッケルコーティング」が施されているのですが、
これは”低摩擦”というよりは”耐腐食性”が目的なので、
圧倒的長寿命であることの直接的要因だとは思えません。
伸びにくいメーカー
実験手順は多少異なるものの、
Wippermannが5年前に行った10速チェーンでの実験結果。
やはり「Connex>カンパ>シマノ>スラム」という順番です。
「カンパは寿命が長く、スラムは強度が弱い」
という話を聞いたことがありましたが、
Wippermannの実験からも裏付けられています。
グレードと寿命の関係
10速チェーンのほうの結果を見ると、
カンパとスラムに関しては「高グレード≠高寿命」。
(「Record」や 「PC 1090」が最高グレード)
ですが、シマノだけに着目してみると、
11速と10速、どちらの場合も
「Dura-Ace>Ultegra>105」という結果になっており、
「高グレード=長寿命」が成り立っています。
これは何故なんでしょうか?
シマノの11速チェーンには、
長期間の低摩擦を実現する「SIL-TEC(シルテック)」という
フッ素系の表面加工が施されているのですが、
ワールドサイクルさんの調べでは、
このようになっているそうです。
高いグレードのチェーンほど
「SIL-TEC加工」されている部品が増えていってます。
デュラチェーンはVIPな特殊表面加工が施されている結果、
抵抗が小さく、ひいては”耐摩耗性”も高くなっていて、
Ultegraや105のチェーンよりも長寿命であるのでしょう。
「『CN-HG901』を付けたいけど高いから‥‥」と敬遠する人もいますが、
”寿命”も考慮すれば、そこまで割高ではなくなります。
となれば、やはりチェーンだけでも
『CN-HG901』にしておくのが、
ベストな選択だと言えるでしょうね。
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こんには。はじめまして。
為になる記事ありがとうございます。
こちらの記事にある
デュラエース『CN-HG901』のピンにだけ
”耐腐食性”、”耐摩擦性”を高める「クロム処理」が成されています。
シマノの電子カタログを見てみたのですが、中空ピン自体に”耐腐食性”、”耐摩擦性”を高める「クロム処理」が成されていると考えて良いでしょうか?
そこが気になりました。教えていただけると幸いです。
CHANさん、ブログご覧いただきありがとうございます(^^)
改めて確認したのですが、『CN-HG901』”だけ”ではなく
701や601のピンにも「クロム処理」は施されていますね……
訂正しておきました。ご指摘ありがとうございます(^^♪
中空ピン自体に”耐腐食性”、”耐摩擦性”を高める「クロム処理」が成されているのは間違いありません。
ご丁寧に回答ありがとうございます。
もう凄く詳しい記事ばかりで読んでいて楽しいです。
海外物の発信と思われる記事とかは、何を参考にされているのでしょうか?
英語が堪能でないと翻訳ソフトだけでは、解読出来ないように思います。
これからも、渾身の記事楽しみにしておきます!