松木です。
先日、こちらの記事で紹介した
『ピーキングのためのテーパリング −狙った試合で最高のパフォーマンスを発揮するために−』
を昨日購入して、一気読みしてしました。
元々かなり期待していた本ですが、
その期待を上回る良書でしたね(^^)
(現在、Amazonの「スポーツ医学」カテゴリーでベストセラー)
”競技”としてスポーツに取り組む
すべて人にとって必読だと言い切れます。
「テーパリング」と言うと、
少し”ニッチ”に聞こえるかもしれませんが、
「テーパリング」を解説する過程で
「パフォーマンスアップ」「リカバリー」の仕組み
についても述べられていて、
この本で得られる知識は「汎用性が高い」と思います。
ネタバレし過ぎずに「書ける範囲での本の内容」と
「何が良かったのか」を中心に話します。
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目次
はじめに P3~
第1章 テーパリングとは何か P9~
1.テーパリングの定義
2.ピーキングの定義
3.テーパリング vs. ピーキング:意味の違い
4.適切なテーパリングがもたらすパフォーマンス向上効果の大きさ
5.そもそもテーパリングは必要か
第2章 テーパリングのメカニズム P19~
1.なぜテーパリングをするとピーキングにつながるのか
2.「フィットネス−疲労理論」とはどのような理論か
3.超回復理論 vs. フィットネス−疲労理論
3-1.超回復理論(one-factor theory)
3-2.フィットネス-疲労理論(two-factor theory)
3-3.「超回復理論」と「フィットネス-疲労理論」の違い
4.テーパリングがピーキングにつながるメカニズム
5.テーパリングに入る前の時期(pre−taper period)の重要性
6.テーパリングが失敗しうるシナリオ
シナリオ1.追い込むようなトレーニングをして一度preparednessを落としてからテーパリングを開始する
シナリオ2.pre-taper periodに練習・トレーニング量が減っている状況で、マニュアル的なテーパリング戦略をそのまま当てはめてしまう
シナリオ3.なかなかpreparednessが上がってこないからといって一時的に練習・トレーニングの負荷を増やしてしまう
シナリオ4.ピークのタイミングが早すぎる
7.フィットネス−疲労理論2.0
8.トレーニング歴の影響
9.個人差の影響
第3章 テーパリングの実際 P72~
1.科学的知見に基づくテーパリングのガイドライン
1-1.どの変数を減らすのか
1-2.テーパリング期間の長さ
1-3.テーパリングのタイプ
1-4.科学的知見に基づくテーパリングのガイドラインまとめ
2.科学的知見に基づくテーパリングのガイドラインが当てはまらないシナリオ
シナリオ1.テーパリング開始前にあまり練習・トレーニングが積めていない
シナリオ2.テーパリング開始前に通常以上の疲労が蓄積している
シナリオ3.ピーキングのターゲットとなる重要度の高い試合が複数あり、その間が数週間しかない
シナリオ4.重要な試合が1日で終わらず、数日間から数週間続く
3.戦略的な「pre−taper overload training」の利用
4.テーパリングを実施する頻度
5.競技コーチとトレーニング指導者との連携の重要性
6.テーパリング以外のピーキング手法とうまく組み合わせる
あとがき P119~
まえがきを試し読みする
出版社サイトのこちらから「まえがき」を読めるようになっています。
- どういった想いで本書を執筆したのか
- 本書がどういった構成から成り、どのように読み進めて欲しいか
ということが話されています。
『ピーキングのためのテーパリング』の何が良かったのか
①抵抗を感じさせないサイズ
本屋で手にしたとき、
思っていたよりも小さい本で「えっ?」と少し驚きました。
「本」でありながらも
「ハンドブック」という印象も受ける”大きさ”と”薄さ”。
『テーパリング&ピーキング』と比較します。
上記の本がB5サイズなのに対し、
『ピーキングのためのテーパリング』はA5サイズ。
続いて”厚み”。
『テーパリング&ピーキング』が220ページ(14mm以上)あるのに対し、
『ピーキングのためのテーパリング』は128ページ(9mm強)。
(著者いわく、「4~5回のウンコ中に読み終えられる」そうですが、無理ww)
結果、『テーパリング&ピーキング』が”ズッシリ”した重さ(727g)。
『ピーキングのためのテーパリング』は、
感覚としては「単行本よりも少し重たいぐらい」(220g)です。
本の”大きさ”、”厚さ”は内容とは関係ないものの、
「読みたくなるか」「持ち運びたくなるか」という観点からは大事です。
『テーパリング&ピーキング』は、
持った瞬間「うっ‥‥」と読む気が削がれてしまいますが、
『ピーキングのためのテーパリング』なら、そういった事はありません。
②マンガ並みに読み進めやすい文章
次に、両方の本を開いてみます。
どちらの本も
「研究結果のグラフ/表 + ”ビッチリ”詰まった文章」なのですが、
実際に読んでみると「読みやすさ」は雲泥の差でした。
『テーパリング&ピーキング』は読み進めるのに苦痛を伴いますが、
『ピーキングのためのテーパリング』のほうは、
むしろ次を読みたくなってきます。
なぜ『ピーキングのためのテーパリング』が読みやすいのか?
思いつく理由を表に整理してみましょう。
『テーパリング&ピーキング』 | 『ピーキングのためのテーパリング』 | |
著者 | 洋書を翻訳しているので、細かいニュアンスが伝わりづらい部分がある。 | 日本人によって書かれた本なので、細かいニュアンスまで読み取れる。 |
構成 | 研究結果を大量に掲載した「論文」というイメージを受ける。 | 「①基礎②仕組み③方法」という3章構成で、「基礎知識→実践」の流れがスムーズ。 |
理由付け | 理由付けが十分ではなく、未消化のままで終わる部分がある。 | 読者の疑問を先読みし、十分な「理由付け」「根拠の提示」がなされていて、得心しながら読み進められる。 |
中身の概要 | テーパリングに関して、あらゆる角度から考察した情報が網羅されている。 | 『フィットネス-疲労理論』というキーとなる概念をベースに、ケースバイケースで、どうテーパリングをしていくかを解説。 |
情報の”量”と”質” | 情報量は非常に多いものの、自分には関係ないものも多い。 | すべての競技者に必要な、厳選された情報に絞り込んでいる。 |
総じて感じること | 著者の研究成果をまとめた本。 | 「読者にテーパリングの最新科学を伝え、実践してもらう」という目的が明確に伝わってくる本。 |
総評
著者の河森さんは、
おそらく日本で最もテーパリングに関して造詣の深い方で、
指導者としての(オリンピック選手などの)選手への実践経験も豊富。
しかも、ブログを通して磨かれた文章力も相当高い。
(「巧みな文章」というよりは「分かりやすい文章」)
仮にスポーツなどやっていない人が読んだとしても、
テーパリングに関して十分理解できるでしょうね。
鍛えたパフォーマンスを100%発揮し、
それまでの努力を実らせて「自己ベスト」「勝利」をつかみ取るため、
最後の数週間のトレーニングのあり方を学ぶのに、
これ以上後押ししてくれる本は無いでしょう。
ぜひ読んでみてもらいたいです。
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