松木です。

 

Ver1,2で、タイヤの「転がり抵抗」に関して
かなり深い所まで掘り下げて考えてきました↓

 松木です。 何となく使っている「転がり抵抗」という言葉。 冷静に考えると、上図の①のように地面とタイヤはこすれている訳ではありません。(ホイールがロックしたような状態) 実際の所は、ホイールが回転しているため、地面とタイヤは基本的に接地しているだけで、そこに発生する”こすれによる摩擦”は限りなく0(図②)。  こちらの記事でも話しましたが、『4000s Ⅱ』タイヤの場合、8000kmも走っての摩耗はたった0.8mmであり、”こすれによる摩擦”は非常に微々たるものでしょう。 では、「転がり...

 

 松木です。 前回、タイヤの「転がり抵抗」の主な要因が、「タイヤと地面との摩擦による抵抗」ではなく、タイヤが地面と接地し、変形した際に発生する熱によるエネルギー損失、つまり「ヒステリシスロス(内部損失)」だという話をしました。  そして、さらに最後には、「転がり抵抗」=「ヒステリシスロス」+「インピーダンス」として、「インピーダンス」という要因にも触れて終わりました。 今回は、この「インピーダンス」にフォーカスした話。 【タイヤ熟考Ver3の記事】 インピーダンスの概要...

 

タイヤ熟考Ver3「タイヤは何気圧が9割」

ただ、性能の優れたタイヤとチューブを揃え、
さらに「転がり抵抗」の知識を身に付けたところで、
最後、空気圧設定を誤ってしまえば、すべてが台無しです……

 

そこで最終回となるVer3では、

 

「タイヤに何気圧入れるべきなのか?」

「Myベスト空気圧を見つける手っ取り早い方法」

 

この2点を考えていこうと思います。

 

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タイヤに何気圧入れるべきなのか?

かなり前になりますが、
「空気圧設定」に関しては既に話しています↓

 松木です。 タイヤの空気圧って気にしたことありますか? ほとんどの人が、「標準は7気圧」って認識だと思うんですが、もうちょっと深く考えてみたほうが良いです。 空気圧を最適化することで数ワットの出力削減、時速にして約0.3km/hほど速く走れるようになるかもしれません。 ただ、やみくもに高くすればいいってものでもありません。 空気を入れすぎたタイヤは、「乗り心地」と「グリップ力」、さらには「路面伝達性」が下がり、路面抵抗は減っても、逆に遅くなってしまいます。 転がり抵抗の...

 

まとめると、”7bar”を基準として、

「体重」「タイヤの太さ」「タイヤの前後」
「コースの特徴」「路面状況」「乗り手の好み」
「タイヤ/チューブの種類」「フレーム/ホイールとの相性」

これらの要因によって上げ下げすべき、という話でした。

 

この考え方は、今も変わってはいませんから、
改めて繰り返したりはせず、上の記事に任せることにします。

 

今回の本題は次です。

Myベスト空気圧を見つけられる手順

タイヤ熟考Ver3「タイヤは何気圧が9割」 Myベスト空気圧を見つける手っ取り早い方法

「色んな空気圧を試してみればいい」

 

これは正論ではあるのですが、あまりに味気無い……

もう少しスマートで、賢い方法は無いものでしょうか?

【第一段階】My Mavicを利用する

「転がり抵抗」を小さくする方法 空気圧を上げる
(Mavicが公表しているタイヤに関するデータの一部)

 

Mavicは、ホイールを主力とするメーカーだけあって
タイヤに関しても、様々なテストを実施しています。
(もちろん「インピーダンス」という概念も把握済み)

 

Mavicが蓄積している、その膨大なデータを
一般向けに落とし込んだアプリが存在します。

 

タイヤ熟考Ver3「タイヤは何気圧が9割」 mymavic アプリ

それが「My Mavic」

誰でも無料で利用可能です。

 

では、実際に使ってみましょうか。

 

my mavic アプリ 使い方 タイヤ熟考Ver3「タイヤは空気圧が9割」手っ取り早いBEST圧発見法 my mavic アプリ 使い方 タイヤ熟考Ver3「タイヤは空気圧が9割」手っ取り早いBEST圧発見法

アプリを開いた1ページ目の「タイヤ空気圧を計算」をタップすると、
”8つの条件”を選択する画面「MYタイヤ空気圧」へと移ります。

 

my mavic アプリ 使い方 タイヤ熟考Ver3「タイヤは空気圧が9割」手っ取り早いBEST圧発見法 my mavic アプリ 使い方 タイヤ熟考Ver3「タイヤは空気圧が9割」手っ取り早いBEST圧発見法

【目標】
「パフォーマンス(=速さ重視)」
「バーサタイル(=万能、つまりパフォーマンスとコンフォートの中間)」
「コンフォート(=乗り心地重視)」

【チューブタイプ】
「チューブタイプ」
「チューブラー」
「チューブレス」

【ウェザー】
「ドライ」
「ウェット」
「ミックス」

【リム幅】
700×13c、15c、17c、19c、21c、22c以上
(〇〇cの数字は「リム内幅」)

【タイヤ幅】
23mm、25mm、28mm、30mm、32mm、35mm、40mm
(ただし、リム幅が17c以下だと、23mmは選べない)

【ブレーキタイプ】(「チューブレス」を選択した場合のみ表示)
リム、ディスク

 

「ワイドリム(19c)のクリンチャーホイールに
25mmタイヤを装着した」と想定し、上の赤文字を選択。

 

そして、【体重】65kg、【自転車重量】7.5kg
と仮定して、一番下「計算」をタップすれば、

 

my mavic アプリ 使い方 タイヤ熟考Ver3「タイヤは空気圧が9割」手っ取り早いBEST圧発見法

「推奨されるタイヤ空気圧」が算出されます。

 

ほとんどの人にとって予想より低い空気圧のはずで、
普段いかに空気を入れ過ぎているかが分かる結果ですね……
(Ver2の「高すぎよりも低すぎの方がマシ」という見解とも合致)

 

これを「チューブラー」に変更するだけで、
フロント7.6bar、リア7.8barまで跳ね上がったりして、
条件を変えて試してみると、興味深い発見がありますね(^^)

 

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【第二段階】タイヤに求める性能を列挙して点数を付ける

タイヤ熟考Ver3「タイヤは空気圧が9割」手っ取り早いBEST圧発見法

「My Mavic」のおかげで理想の空気圧に近づいたものの、

 

「タイヤ/チューブの種類」
「フレーム/ホイールとの相性」
「(走りの自信につながる)乗り手の好み」

 

これらの要素が考慮されていない以上、
もう少し詰めていく必要があるでしょう。

 

そこで、サイスポ9月号に掲載されていた手法が使えます。

 

タイヤ熟考Ver3「タイヤは空気圧が9割」手っ取り早いBEST圧発見法

およそタイヤに求められる5つの性能

「加速性」「巡航性」「快適性」「登坂性」「グリップ力」

各パラメーターごとに点数を付けていくという方法。

 

この例だと「5~8barの0.5bar刻み」の広範囲に調べていますが、
「My Mavic」で当たりの目星が付いているため、範囲を狭めてもOK。

「-0.4、-0.2、±0bar(My Mavicの結果)、+0.2、+0.4、+0.6」

この6パターンでテストすれば十分でしょう。

 

更に、前後タイヤ別に評価すれば尚良しですね。

 

ちなみに、空気圧測定にはデジタルゲージが便利です↓

 

多少手間は掛かりますが、この過程を経ずして
”Myベスト空気圧”に辿り着くことは極めて困難です。

【第三段階】レースコースを試走して最終調整

タイヤ熟考Ver3「タイヤは空気圧が9割」手っ取り早いBEST圧発見法 レース会場の試走で最終微調整

空気圧設定の最終段階は「試走による微調整」

 

「路面が荒れていてバイクが暴れるから、空気圧を下げよう」
「スリップしそうなコーナーが多いから、空気圧を下げよう」
「急勾配が続くヒルクライムだから、リアの空気圧を上げよう」

 

試走してみないと得られない情報はたくさんあるため、
レースコースを実際に走りながら最適な空気圧を考えていきます。

 

【第二段階】を踏み、空気圧ごとのタイヤ性能の変化を把握していれば、
「空気圧をどれだけ上げ下げすればいいか」も、おおよそ見当が付くはず。

 

 

タイヤ熟考Ver3「タイヤは空気圧が9割」手っ取り早いBEST圧発見法 レース会場の試走で最終微調整

以上、「Myベスト空気圧」を探る手順を
第一~三段階に分けて紹介してきましたが、

空気圧設定にここまで力を入れている人は、
おそらく全体の1%程度ではないでしょうか?

 

「転がり抵抗」を最小限に抑え込み、
自信を持ってコーナーを素早く、安全にクリアして、
脚力が拮抗するライバル達に差を付ける。

 

「たかがタイヤのエアに大袈裟な…」

そう思われるかもしれませんが、路面と唯一接しているのが”タイヤ”。

その「空気圧」に真摯に取り組んでいけば、
上記の内容もあながち不可能ではありません。

 

少なくとも強い選手ほど、その事を十分理解しているでしょう。

 

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