松木です。
スペシャライズドの風洞実験を紹介。
第二弾は『パーツ&装備』です。
~関連記事~
【速く走るための風洞実験・エアロ効果①】身体各部の毛を無くすと?
【速く走るための風洞実験・エアロ効果③】ドラフティングの秘密
【速く走るための風洞実験・エアロ効果④】エアロフォームを極める
【速く走るための風洞実験・エアロ効果⑤】頭の位置に留意せよ!
【速く走るための風洞実験・エアロ効果⑥】ケーブル内蔵って意味あるの?
【速く走るための風洞実験・エアロ効果⑦】Qファクター/スタンスは狭める?
目次
エアロフレーム(動画リンク)
2014年モデル「TARMAC」と、
エアロロード「VENGE」の比較。
フレーム以外の装備は同じにしています。
40㎞走って59秒の短縮効果。
「TARMAC」で42km/hで走れるならば、
「VENGE」に乗り換えるだけで16.3w削減でき、
42.75km/hの速度を出せるようになる計算です。
以上は、エアロロードが成熟し切っていない
2014年モデル「旧VENGE」の話。
2017年11月現在、
世界トップクラスの空力を持つ「VENGE Vias」ならば、
(肩を並べられるのは「MADONE 9」「PROPEL Diac」ぐらい)
エアロ効果は更に上がって120秒近くも速く走れます。
ディープリムホイール(動画リンク)
続いて、ROVALの30mm程度のアルミリムホイールと
カーボンディープリムクリンチャー
「Rapide 60CL」(60mmハイト、24.4mm幅)との比較。
結果は34秒の短縮。
速度で考えるならば、42km/hから0.43km/hアップ。
これは「剛性」「リム重量」などは省いた
「空力」にだけに着目した結果ではありますが、
+0.43km/hという効果は、
一般的にディープリムに抱かれている期待値(2~3km/h?)よりも
ずっと小さいんではないでしょうか?
脚の毛を剃るほうが、2倍近い効果があるわけですからね(^^;
エアロヘルメット(動画リンク)
Specializedのヘルメット、
左から「PREVAIL」「EVADE」「S-WORKS TT」の3種類を比較。
「PREVAIL」比で「S-WORKS TT」なら60秒短縮、
「EVADE」でも40秒短縮できます。
まともに風を受ける頭の装備だけあって、効果は”大”。
ここで一つ浮かんでくるのが、
「どのエアロロードヘルメットが良いのか?」という疑問。
エアロロードヘルメットの空力データは
それなりに出回っているものの、
各メーカーは自社に有利な結果を出す傾向にありますし、
第三者機関が行ったものでも、結果はバラバラ。
なので、「空力」だけで「〇〇が一番」とは言い難いですね。
そこで「空力」以外の性能面、
「軽さ」「涼しさ」「価格」「被り心地」「デザイン」を考慮すると、
- OGK「AERO-R1」
- スペシャライズド「S-Works EVADE Ⅱ」
- ボントレガー「BALLISTA」
- メット「MANTA HES」
- カスク「PROTONE」
といった、無難な所に落ち着いてくるかと思います。
シューズカバー(動画リンク)
BOAダイアル2つ、ベルクロ1つが備わった一般的なシューズから
靴ヒモにカバーを被せた「S-WORKS SUB6」に履き替えた場合。
35秒速くなります。
つまり「Rapide 60CL」以上のエアロ効果があるということ。
「S-WORKS SUB6」は少し変わった構造ですが、
この結果を、もっと一般的に
「エアロシューズカバーを装着する効果」
と考えてもらって差し支えありません。
以前、エアロシューズカバーのオススメについて話しましたので、
よかったら参考にしてください↓
エアロヘルメットと同等の効果がある最高のエアロシューズカバーとは?5種類の使用歴を元に考えてみる。
ゼッケンの取り付け方(動画リンク)
今では比較的知られている「ゼッケンの取り付け方」による差。
左のように角4箇所だけを止めると、
サイドの隙間から空気が入り、
船の”マスト”のごとく抵抗となってしまいます。
そこで、右側のように
安全ピンを2倍の8つに増やし
隙間を埋める工夫を施します。
実験は、両脇に1枚ずつ、計2枚取り付けて行いました。
8つの安全ピンを付けるだけで9秒も短縮。
ディープリムやら、エアロヘルメットやらは
皆していることなので、導入してようやく横並び。
むしろ、ゼッケンの隙間のような
「知っている人だけが行っている」工夫でこそ差が生まれますから、
わずか9秒だったとしても、その価値は大きいです。
マトリックスの吉田隼人選手は、
「両面テープ+安全ピン」にしているそうです。
実業団レースの場合、両面テープだけは
「剥がれる恐れがある」として禁止されていますから要注意。
リムブレーキ VS ディスクブレーキ(動画リンク)
最後は、キャリパーとディスク、
ブレーキ仕様の違いでの比較です。
「制動力」に目が向けられがちですが、
果たして「空力」面での違いはあるのでしょうか?
GIANT新型「PROPEL」のトップモデルは、
ディスクブレーキ仕様しかありません。
その理由の一つとして、
「空力が良いから」とはっきり言っているのですが‥‥
正面からの風に対しては両者の間に差は無く、
10度斜めからの風に対してはディスクブレーキが8秒遅い
という結果に。
GIANTの言っていることと矛盾していますね(^^;
これは、ディスクブレーキにすれば
無条件に空気抵抗が小さくなるわけではなく、
- ディスクブレーキ周辺のデザインをエアロにする
- 正面からの風に対して
といった”条件付き”なんだと考えられます。
※追記:3年7か月後に行われた再実験
正面からの風に対してはディスクブレーキのほうが8秒早く、
10度斜めからの風に対してもディスクブレーキが4秒早い
という異なった結果が出ています。
次回から本題の「ドラフティング」「乗車姿勢」「ウェア」に移っていきます。