Lun『Hyper』実物インプレッション第二弾は「リム編」
業界最高レベルの高剛性・高強度・高耐熱性と謳う、その理由に迫りましょう!
前回⇩
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基本スペック(寸法、重さ)
とあるサイトの情報によりますと、
38㎜リムブレーキ仕様の実測値は430~435g前後。
そして50㎜の実測値が470g前後だそう。
ホイール重量が軽い(実測1259g)ですから
リム重量も相当軽いのかな?と想像しましたけど、
思いのほか標準的な数字に落ち着いてますね……
……まぁ確かにBONTRAGERのOCLVのように特殊カーボンでも使用しない限り
これ以上の軽さを得るには「剛性/強度」という犠牲を払わねばなりません。
(軽さ過ぎれば、たわんで推進力が吸収される(動きがもっさりな)リムの一丁上がり!)
それに、リムが軽くなるほど回転慣性(巡航性能)が失われていくデメリットも考えれば、
Lun『Hyper』のリム重量ぐらいが”スイートスポット”なのではないでしょうか?
ちなみに、名古屋のWinspaceブースでリムのカットサンプルを見させて頂いたんですけど、
大体この画像と似た「”ツルツル”とはいかないまでも、樹脂ムラは限りなく少ない」感じでした。
Winspaceのフレームでは、極力内面にシワが生まれないよう
画像のようなEPS(発泡スチロール)の型にカーボンを巻いて成型しています。
リムのカットサンプルの内面もキレイな仕上がりでしたし、
おそらくLun『Hyper』でも同様の手法が用いられているはずです(^^)
『バタフライエフェクト』カーボンパターンの謎
「カーボンの糸を巻くことでできる模様です。単なる化粧ではありませんよ」
そうおっしゃっていました。
ですが、間近で観察すると「カーボンの糸」とはちょっと違うように見えますね。。。
正確には「22㎜幅の薄いUD(単一方向)カーボンシート」だと思われます。
(UDカーボンシート自体は「カーボンの糸」を一列に並べて作られますが)
この『バタフライエフェクト』カーボンパターン、
ボーッと眺めているだけではランダムに配置されているように見えるのですけど、
その流れを順に追っていくと”規則性”があることに気づきます。
…………どうです?
どのように巻かれているか分かりますか?
そう、スポーク穴の箇所が4重になるように
左右交互に4回たすき掛けして巻かれているんです。
これは面白いですよねぇ~(^^)
スポークを通す用の穴を開ければ、当然そこの強度は落ちてしまいます。
しかも穴周辺の応力が集中しやすくなってしまった所を
さらにスポークで強く引っ張ることでホイールは成り立っています。
ですから、スポーク穴はホイールにおけるいわば”弱点”なんです。
ここの強度が不足していれば、”たわみ”が発生してしまうため
もろにホイールの「剛性」に影響しますし、
リムの軽さを売りにしている(薄すぎる)ホイールなんかでは、
スポークテンションに負けて穴周辺が盛り上がって壊れるケースもあったりしますね。
だから、スポーク穴周辺に4方向からUDカーボンシートを巻いて補強して
「剛性UP」「強度(耐久性)UP」を図る、という考えは理に適っています。
試しにリムの腹を親指で押してみました。
UDカーボンが巻かれていない場所を押すと若干凹む感覚があるのですが(左図)
UDカーボンが巻かれている場所を押してもビクともしません(右図)
「バタフライエフェクト」カーボンパターンがはっきり効いてますね~(^^)
すべてのスポーク穴(前輪16ヶ所、後輪21ヵ所)に同様のパターンが施工されているため、
スポーク穴周辺どころか、ホイール全体の剛性・強度UPにも貢献していることでしょう。
スポークがついているリムの部分の材料を増やし、ついてない部分の材料を減らす。
この精密なカーボンの増減によって重さ/強さの優秀なバランスを取っているんです。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・—Lun『Hyper』のカタログより抜粋—
バタフライエフェクトの有り無しで
剛性・強度を比較している実験データなどあれば更に説得力は増すのですが、
残念ながらそれらしいものは見当たらず……
Lun『Hyper』の重量制限が135kgなのに対し、
バタフライエフェクトが無いこと以外は同じUnaas『X』は130kg。
ひょっとするとこの5kgの差=リム強度の差なのかもしれません。
ブレーキ面(樹脂、精度、制動力)
見た目上は分かりませんが、ブレーキングによる熱変形を防ぐため
「リムの上に超高熱に耐える樹脂(=耐熱レジン)を付けている」とのこと。
リムに使われている樹脂全体が「耐熱性」が高いものなのか、
それともブレーキ面にのみ耐熱レジンを塗っているのか………一体どっちなんだろう?
横振れ、縦振れを確認してみる。
スポークの本数が少なかったり(Hyper前輪16本)
2:1組で組まれていたり(Hyper後輪)なんかすると振れ取りの難易度は上がるんですが、
このホイールは前後輪とも”振れ”が皆無でした。
なんでも製造時の目標値が±0.2㎜以内。
これを実現するため、腕の立つホイール職人を雇っていることに加え、
「ブレーキ面のフラット精度」にもこだわっているのだそう。
ブレーキ面のフラット精度は、
「ブレーキフィーリングの向上」と「ブレーキ熱の局所的な上昇の防止」
にも大きく関係する、非常~~~に大事なポイントですよ(^^)!
続いて、最も肝心なブレーキの「制動力」について。
これに関してはまだ走れていないので申し上げられませんが、
「付属のブレーキパッドがカンパ以上に効く」と伺いました。
以前おこなった峠下りテストにより「カンパ>ブラックプリンス>コルク」と判明してますんで、
”カンパ以上”が本当ならば『Hyper』の制動力は心配いらないんじゃないかと思われます。
付属するパットは”R 453”という文字の入った台湾製のもの。
商品説明によれば「しっかり効く、しかも熱が出にくい」とのこと。
別に『Hyper』の専用品ではありませんが、推奨パッドではあります。
【まとめ】業界最高レベルのリムの正体
見栄えのするバタフライエフェクトパターンも
つまるところ「強度」と「軽さ」を両立するべく
カーボン積層数をコントロールしているだけです。
「空力・剛性・軽さのバランス取れたリム形状」
「いずれの性能も犠牲にしない適度なリム重量」
「重量増、強度ムラにつながらない平滑な内面」
「耐熱、フラット精度にこだわったブレーキ面」
いずれも普通っちゃ普通。
………そうか。
なんてことはありませんでした。
「当たり前」を軽んじずにきちんとやる。
”基本にとことん忠実に”
この誰しもが出来そうで案外できない事をやっているが故に
「私たちのリムは業界最高レベルである」と自負できるのでしょうね(^^)
次回「スポーク&ハブ編」へと続きます。
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いつも参考にさせて頂いております。
HyperホイールにGP5000を履いておられると思いますが、タイヤの装着は容易でしょうか?私の所有しているカーボンホイールはGP4000を履いていますが、レバーを使って悪戦苦闘してようやく装着できる程きついので、買い換えを検討していたところ、こちらのホイールに関心を持ち、お伺いした次第です。
TNさん、はじめまして(^^)
GP5000 CLの装着はレバー使わずに「容易」でした。Corsa Speed G2.0 TLRの装着はレバーを使っても「困難」でした。つまり”タイヤ次第”ですね!
ホイール自体のもつ”タイヤの装着しやすさ”は至って標準的です。
情報ありがとうございました。
こんにちは
とても興味があったので詳しく書かれており助かります。
松木さんはなぜ今回は50mmではなく38mmを選択したのでしょうか?
ふじさん、初めまして(^^) 38㎜を選んだ理由を箇条書き(優先度の高い順)にしますと、
1.私の主戦場がヒルクライム、ツール・ド・おきなわ(登りが多い)だから
2.私が平地よりも登りが弱いから
3.Lun『Hyper』は横剛性がしっかりしているため、38㎜でも満足できる剛性を備えていると感じたから
4.「巡航性」をそこまで重視していないため(50㎜『Hyper』の空力データから判断するに、38㎜の空力も”なかなかなもの”だと思われますし)
現在『Aeolus 5』を使用している中で、「峠での弱さ」「リア剛性の物足りなさ」を感じています。
その両方を補うには、50㎜より38㎜の方が適当であると判断した次第です。以上ご参考までにm(__)m
ふじさん、誤ってご質問を消してしまいました。申し訳ありません。
「50㎜と38㎜の両方を試乗されたのですか?そうなら両者に感じた違いを教えて頂きたいです」といった旨だったと思います。
試乗した範囲では両者ほぼ同じ感覚でした。ただ、38㎜の方がやはり軽快に感じました。
もっと速度の出せる一般道であれば、50㎜の「巡航性」を顕著に感じられるでしょうね!
http://morimotty.com/nagoya-2021-3/
良ければ試乗インプレを書いている上の記事をご覧ください(^^)
いつも楽しく、拝読させて頂いております。
ありがとうございます。
私はレーゼロカーボンを使用しております。
ブレーキ面が心配ではありますが…軽量性、巡航性、振動吸収性の向上を期待し、Lun『Hyper』38mmに買い替えようかと迷っております。
もし松木さんなら、どうお考えになるかお聞かせ頂けませんでしょうか。よろしくお願いします。
おまささん、はじめまして(^^)
レーゼロカーボンからLun『Hyper』38mmに乗り換えた場合、
【軽量性=軽快感】ほぼ変わらない。Hyperの全体重量は軽いですが、リム重量は標準なので。
【巡航性】Hyperの空力は最高レベル。間違いなく上がる。
【振動吸収性】カーボンスポーク分だけ多少上がる(ただしタイヤ、チューブの方が寄与度は高い)
【剛性感】Hyperは丁度良い塩梅(パワーが逃げる感じが無く、逆に硬すぎない)
レーゼロカーボンも高性能でわざわざ買い換える価値があるかは難しい所ですが、正直HYPER38mmの方がよりオールマイティなホイールだと思いますね。
松木様
ご丁寧に詳細なお返事をありがとうございます。
実走後にお分かりになりました折で結構ですので、制動力の印象もお聞かせ頂けますと幸いです。制動力に問題がなければ、オールマイティさを期待し買い替えようと思います。