松木です。
食べ物関連の本はあまり好きではないのですが、
こちらの本は良さそうです。
(現在、Amazonの「保健食・食事療法」のカテゴリーでベストセラー)
なぜなら、
「最新科学に基づいた、より正しく、かつ実用的な知識を伝える」
という公益目的の純度が高い本ではないかと推測できるからです。
そういう点では、以前に紹介した
『ピーキングのためのテーパリング』と同じ匂いがしますね(^^)
超良書『ピーキングのためのテーパリング』著:河森直紀を読んだ感想
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目次
ロードバイクと食事制限
スポーツをする人にとって
食事を気にしない人は少ないと思います。
ロードバイクにおいては、
特に登坂において”軽さが正義”とされますから、
「食事制限」という面で、食事に注意する人が多いです。
実際、体重が減れば、ヒルクライムのタイムは速くなりますしね。
減量・軽量化で、ヒルクライムのタイムがどれだけ短縮するか実験。
ヒルクライムにおける「軽量化のタイム短縮効果」と「減量」について
ただ、無理やり減量して峠のタイムが伸びたとしても、
それは、必ずリバウンドが起こる”一時的な強さ”でしかありません。
おまけに健康も害してしまいます。
ですので、
速さを求めるための「食事制限」というアプローチは、
個人的には”無し”だと考えています。
ちなみに、増田成幸選手が証明してくれているように
60kg前半であれば、ヒルクライマーになれないことはありません。
増田選手が、食事に気を遣っていないとは思いませんが、
少なくとも「無理な食事制限」はしていないはずです。
ロードレーサーが考えるべき食事とは
では、ロードバイクのパフォーマンスを上げる食事を考える際、
「食事制限」が”無し”なのであれば、何を追求するべきなのか……
それは”質”しかないと考えます。
「スポーツ栄養学」という分野があるように、
ロードバイクというスポーツに必要な栄養素を摂るという事です。
しかしながら、
その「スポーツ栄養学」も健康的な食事が摂れている上で
考えるべきことであるという点では、二の次でしかありません。
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』は、
まさにこの食事の根幹とも言える
「健康でいるための食事」という点にフォーカスしている本です。
決して斬新なトピックスでは無いものの、
ロードレーサーがまず考えるべきなのは、
「食事制限」でもなければ「スポーツ栄養学」でもなく、
「健康でいるための食事」ではないでしょうか?
体感しづらい部分ではありますが、
「健康的な食事」→「体調の良さ」「早い疲労回復」
→「質の高い練習」→「パフォーマンス(パワー/持久力)の向上」
というふうに繋がっていくはずで、
一時的ではない、持続性のある”本当の速さ”を手に入れるためには、
「健康的な食事」を決して疎かにはできないように思えます。
本著が良さそうな点
著者である津川 友介(つがわ ゆうすけ)さんは、
UCLA(カルフォルニア大学ロサンゼルス校)の助教授。
「医療政策学、医療経済学」という分野を研究されている方です。
元は内科の医者をされていましたが、
研究者へとシフトしていったそうです。
津川さんは、ブログも運営されています。
もし本を購入するのであれば、
「思っていた内容と違う……」という事態を避けるためにも
下で紹介している3つの記事だけでも読んでおいたほうが良いでしょう。
①「インパクト」ではなく「知的好奇心」で勝負しようとしている
上の記事では、本書を執筆するに当たっての「想い」「目的」が話されています。
正しい内容でも、知的好奇心を刺激することができれば
売れるようにすることができるのではないかと思っています。今回出版する本はある意味これを試す実験でもあります。
ここなんかは特に「良書ではないか」と期待させられる部分ですね。
少し余談になりますが、
元々は『エビデンスに基づく本当に健康になれる食事の本』という
素朴なタイトルにする予定だったそうです。
ですが、「それでは売れづらいだろう」という東洋経済社の意向によって
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』に変更されました。
「世界一」「シンプル」「究極」といった受け狙いの単語を使うことは
津川さんの本意ではないかもしれませんが、
まず本を手に取ってもらわないことには始まりません(^^;
②科学的に健康に良い食事に”置き換える”というアプローチ
がまんばかりさせてもストレスになって、
いずれは爆発して食べ過ぎてしまうことが多いことは
みなさんの経験からも明らかだと思います。このような理由から、現在ではがまんばかりさせる栄養指導よりも、
食べる内容を「置き換える」栄養指導の方がより効果的であると考えられます。
本書では、基本的に「食事制限」という方法は取らず、
「健康に悪い食べ物→健康に良い食べ物」
へとシフトしていくアプローチを考えています。
初めに話した通り「食事制限」には反対ですから、
この”置き換える”という方法には、すごく共感できます。
③内容が偏っておらず、中立な立場で書こうとしている
私は加工肉、赤肉、糖質(炭水化物を含む)等は
「体によくない」と説明しているのであって、
「食べない方が良い」と主張しているのではありません。全ての人はその食事によって得られる
メリットとデメリットを十分理解した上で、
何を食べるか選択するべきだと考えています。甘いものが好きな人にとっては
甘いものを食べることで生活の質(QOL)が上がるかもしれません。甘いものをゼロにすることで健康にはなるけれども
人生が楽しくなくなってしまうかもしれません。そのような場合には、QOLと健康を天秤にかけて、
毎日少量の甘いものを食べるという食事を選択するのも
合理的な判断であると思います。しかし、そのような食事を正当化するために、
「甘いものも少量であれば健康に悪影響は無い」
と解釈することはお勧めしていません。
津川さんの”中立的なスタンス”が垣間見える箇所ですね。
読者に「偏った考えを抱かせよう」「バイアスをかけよう」
といったような悪意ある意図は、一切感じられません。
本書の役立て方
この本には、健康に良いとされる食べ物と、
その科学的根拠が紹介されています。
こういった健康食に関する本を読むと、
「それしか食べないでおこう」と短絡的になってしまいがちですが、
目指すべきは、そこではないように思います。
「何を食べるべきかを正しく選択できる力を身に付けること」
現実的に考えて、健康に良い物だけ食べ続けるのは不可能です。
人によって、どうしても止められない食べ物はあるでしょうし、
飲み会において、ジャンキーな物を一切食べない訳にはいきません。
つまり、本書を読んで、正しい知識をインプットしたならば、
次は自らの「食べ物の好み」「ライフスタイル」等に合わせて試行錯誤し、
”実用性”を肉付けさせていかなければなりません。
そうして初めて、ただの知識でしかなかったものが、
一生涯を通じて役立つ力になりえるのだと考えます。
そのような心積もりで本書を手にするべきでしょう。
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