松木です。
スペシャライズド自転車専用風洞実験「Win Tunnel」シリーズ。
今回の議題は「左右の足幅」
つまり、スタンスの広さが空力にどれぐらい影響するのかを調べます。
「スタンスの広さ」で思い出すのが、ランス・アームストロング。
風洞実験で、Qファクターを狭めると速く走れることが判明したものの、
「ペダリングに違和感を感じる」として、通常のスタンスのままにした
というエピソードが残っています。
現在の最高風洞実験設備が、この真相に迫ります。
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実験方法
まずは、いつも通りのスタンスで。
クランク~足に十分な隙間がありますし、ペダル軸も見えていますね。
続いて、スタンスを可能な限り狭めます。
まずはペダル軸を短く。
Speedplayのペダルは長さを調整できません。
どうやって短くしたのでしょう?
クロモリ・ステンレスシャフトが53mmなのに対し、
チタンシャフトが50mmと-3mm短いので、
おそらくシャフトの素材を変更してペダル軸を短くしたのかと。
そして、クリートもなるべく外側へと移動。
変更前と見比べると、
クランク~足の間は随分と詰まっていますし、
ペダル軸も見えなくなりました。
具体的にどれだけ近づけたかについては明言されていませんが、
写真を見る限りでは片側1cm近く狭まっているように思います。
実験結果
40km走行において8秒の短縮が可能。
これは、時速に換算すと+0.1km/hのスピードアップとなります。
以下、テスト後の
実験者ジェシー・フランク(左)とクリス・ユー(右)の会話。
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フランク「ペダリングがいつも違って感じ、脚に違和感もあったね。
足の内側が、クランクに擦ってしまっていたし、
膝もいつもと違う軌跡をたどっていると感じた。
だから、空力的に8秒のメリットがあるとは言え、
通常のスタンスの場合と同じパワーを維持できるか、
そして、脚や膝に痛みが出たりしないかの確信は持てない。
膝前十字靭帯を損傷したことがあるんだけど、再発させたくはないかな。」
ユー「そうなると、ナロースタンスに価値があるかどうかに疑問が残るね。」
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ハッキリと口には出していませんが、
8秒のメリットの代償として、
「ペダリングしにくさ」「膝への負担」は割に合わない
というようなニュアンスが伝わってきますね……
この感想は、最初に話させてもらった
ランス・アームストロングのケースの結論と奇しくも同じ。
ちなみに自身では、ペダルとクランクの嵌合部分に
『Qファクター調整リング』を挟んでQファクターを広げています。
これは、ペダルに効率良くパワーを加えられるであろう
脚が垂直となる状態(図の左側)に近づけるためです。
体格などによって個人差はあるでしょうけど、
スタンスは「標準~少し広め」が最適解に近いのではないかと思っていて、
本実験のように無理やりスタンスを狭めるのはいかがなものかと(^^;
大きなアドバンテージならまだしも、たった8秒ですし……
ただ、これだと風洞実験を紹介した意味が無くなるので、
今回の結果をどう”速さ”へと結び付けようかと考えた時、
ダウンヒルの際に膝を狭めて「空力」を高めるテクニックとしては有効でしょう。
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Qファクター狭くする為にはクリートは外側に移動ですね。
Takaokaさん、その通りですね(^^; ご指摘ありがとうございます!