松木です。
「ご相談・お問い合わせページ」に寄せられたご相談の中から
皆さんの参考になりそうなものをピックアップしてお届けするQ&A第八弾。
(※読みやすいように加筆・省略・修正してます)
第一弾「Mt.富士ヒルで最速のホイール組み合わせは?」など
第二弾「回転部とそれ以外の軽量化の違い」「10万のカーボンクリンチャー」
第三弾「40mm VS 50mm」「ローラーでフロントを上げるべきか?」「Cervelo『S5』」
第四弾「ヒルクライムのドラフティング効果」「2:1組」「ポジションの出し方」
第五弾「軽量高剛性ホイール」「軽量化の質」「ビッグプーリー」「継続力」
第六弾「楕円ギア」「高剛性フレーム」「ホイールバランス」「パワメの必要性」
第七弾「ブレーキ音鳴り解消」「ディスクかリムか」「オススメのチューブ」
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【タイヤ】強豪ホビーレーサーがクリンチャーを選ぶ理由
Q1.「日本国内の強豪ホビーレーサーは、なぜクリンチャータイヤを使うのか?」
タイヤがパンクしたら、ほぼ使い捨てするようなプロのロードレースを除き、私が知った限りでは、日本国内の強豪ホビーレーサーは今だにクリンチャー使用率が高いのが現状かと思います。少しでも性能を高くするべきなら、チューブラータイヤを使用すべきかと思いますが、なぜここまでクリンチャーの使用率が高いのでしょうか?やはり使い勝手が良いからでしょうか?それとも、実はクリンチャーの性能はチューブラーと同等、もしくは既に超えたのでしょうか?
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A. おっしゃる通り、入賞クラスの強豪ホビーレーサーであってもクリンチャーホイールを使用されている方は多いですね!私の感覚では、ロードレースなら3~4割、ヒルクライムでも1~2割といった所でしょうか?
さて、クリンチャータイヤを選ばれる主な理由を端的に申しますと、「チューブラー、クリンチャーそれぞれのメリット・デメリットを天秤にかけた結果、クリンチャーの方が良いと考える方がいるから」でしょう。
【チューブラーのメリット】
・重量⇒踏み込んだ際の反応が軽い
・パンクした際に一気に空気が抜ける事がなくて比較的安全
【チューブラーのデメリット】
・タイヤ交換が少し手間
・練習で使うにはタイヤを携帯しなければならず、普段使いには向いていない
・タイヤ一本が高く、ランニングコストがかかる
【クリンチャーのメリット】
・パンクしても10分で修理できる
・携帯するのはチューブのみでOK
・ランニングコストが安い
【クリンチャーのデメリット】
・チューブラーよりもホイール+タイヤが200g前後重くなる
クリンチャータイヤが進歩している現在、「転がり抵抗」「乗り心地」に関して、チューブラーの方が優れている訳ではありません。むしろ「転がり抵抗」は、クリンチャーなんかの方が良い。それはBicycle Rolling Resistanaceの実験結果を見れば分かりますし、スペシャライズドがRapide CLX、Alpinist CLXのチューブラーモデルを作らなかった理由もコレです。
ですから、チューブラーを選択するならば、その理由は「軽さ」とそれに起因する「加速性の高さ」に尽きるでしょう。多くの強豪ホビーレーサーは、デメリットにはある程度目をつぶり、「-200g」というハッキリした数値、直感的快感を感じやすい”キビキビ”した運動性能、そういった所に魅力を感じてチューブラーを選択している訳です。
(ツール第2ステージで勝利したアラフィリップの足回りはAlpinist CLX+Turbo Cotton。クリンチャーでのツールステージ優勝は実に28年ぶりだったそう)
では、私はどうかと言えば、「35mmハイトDura-Aceチューブラーホイール 3年⇒50mmハイトAeolus TLR 6年」というのが主なホイール遍歴で(途中ちょこちょこ寄り道してましたがw)、現在クリンチャー(orチューブレス)に落ち着いています。それは、普段使いに扱いやすく、また、登り坂においてもそれ程負担に感じることも無い、つまり普段もレースも両対応できるクリンチャーに大きなメリットを感じ、大層気に入っているため。そして同じ様な思いを抱く強豪ホビーレーサーが一定数いるのが実情でしょうね。特にチューブレスは乗り心地とグリップ力が圧倒的ですし。
【機材】プロはホイールバランスを取らないのか?
Q2. 先日Roval CLX50 DISCのレンタルをしましたが、ホイールバランスが全く取れてなく、シミー現象が起きるほどでした。Roval CLXと言えばプロ御用達のホイールですが、そんなホイールでもバランスが全く取れていないことに驚きました(自分はディープリムホイールを使用するのは今回が初めてです)。
そこで質問なんですが、プロ選手が使うディープリムのホイールバランスはどうやって取っているのでしょうか? やはり釣り用の鉛シート等をホイールのリム外周にペタペタ貼り付けてバランスを取るのでしょうか?
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A. 自分の知る限りにおいて、プロ選手でホイールバランスを取っているバイクを目にした事がありません。これは十中八九「ホイールバランスを取っても速くなるアドバンテージは皆無」だと考えているからでしょう。
以前のQ&Aでも話しましたが、私自身ホイールバランスは取ってはいるものの、「必須だとは思わないが、出来るなら施工した方が良い」というスタンスを取っています。使用中のディープリムには片輪15gと多めのウエイトを貼り付けていますが、もし貼らなかったとしても体感レベルでの違いを感じることはありません(完全に平滑な路面を走れば、多少なりとの違うのかもしれませんが、アスファルトは凸凹です)
(30秒~シミー現象が起きる動画、風の音がうるさいのでミュート推奨)
それから、悩まされているシミー現象について。
この現象の原因は「Roval CLX50 DISCのホイールバランスのズレ」にある可能性も否めませんが、個人的には「フレーム、ホイール、ホイールバランスのズレ等、車体全体のトータルでシミー現象が起こりやすい状態」になってしまったからだと考えます。
下のブログ記事はホイールバランス、シミー現象について考察されているのですが、そこに記載されている「バランスの取れていないホイールの回転ブレとたまたまライダー&フレームの振動数がぴったり合ってしまって、増幅されてしまったのでしょう。」という箇所が、自分と考え方と一致しておりました。
質問者さんの場合、Roval CLX50 DISCを取り付けた事が引き金となって「シミー現象が起こりうる車体」になってしまったようですが、おそらく別の車体に同じRoval CLX50 DISCを履かせたとしても、シミー現象が起こる可能性は低いと予想されます。仮に多くの車体でもシミー現象を感じるホイールなのであれば、クレームが集まってリコールがかかっているはずです。
バルブエクステンダーが極端に長かったり、重かったりでホイールバランスの崩れが大きいほどシミー現象が起こる恐れは高くなりますが、お客様と接した5年間の内で「シミー現象に困っている」というご相談はわずか1件でしたから、かなり珍しいケースだと思います。ちなみに、その方はホイールバランスを取っても残念ながら「幾分かマシになった」程度でしたので、やはり「ホイールバランスの悪さだけがシミー現象の原因」とは言い切れません。
以上まとめますと「ホイールバランスの速度的アドバンテージは少なく、施工しているプロ選手はほとんどいない。運悪くシミー現象が起きてしまっている場合、ホイールバランスを取れば収まるケースもある」
【機材】エンドワッシャーの効果
Q3. エンドワッシャーを取り付けたら剛性は上がるでしょうか?
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A. 私もエンドワッシャーの効果は気になっていました。しかしながら、メーカーがいくら”効果あり”と主張していたところで、一目で分かるデータが用意されていない以上は、いくら好意的なインプレッションを読んでも「それって本当なの?」という疑問はどこまでいっても晴れず……
「ならば自分で試してみるしかない!!」
そう思いまして、一日の間にエンドワッシャーの付け外しながら、勝尾寺の峠を納得できるまで往復しました。前輪に付けた場合、後輪に付けた場合、上りの場合、下りの場合………それぞれどういった効果・違いを感じるのかを自らテストしたかったのです。
その結果、「前輪&下り」という条件下では、コーナーで車体を傾けた際、フォークのたわみに起因しているであろう”フワッ”とした不安定さ、そこから生まれる恐怖感が少なくなり、その分ロードバイクを多く傾けられます。結果、外側に膨らみづらく、狙ったラインを走りやすい。
対して「後輪」や「上り」においては、付けようが付けまいがその差を感じられず。。。(後輪側はリアホイールやフレームのタワみに比べて、エンドワッシャーによる剛性UPの寄与が小さいため?)
この経験から装着しているのは前輪のみ。直接的に速く走れるようなパーツではありませんが、コーナーの怖さが和らぎ、間接的には”速さ”という面でもメリットがあると感じていますから、十分オススメですね(^^) 効果を感じなかった後輪は未装着です(高いですし)
【トレーニング】効果的なZWIFT活用法
Q4. ZWIFTを始めようと思っています。今のところは様々なレースに対応できる力を身につけたいと思っています。まずはFTP強化重視のトレーニングから始めるのがよいのでしょうか?
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A. ご存知かもしれませんが、ZWIFTは大きく分けて3つの走り方があります。
- 単にコース上を走るだけのフリーライド
- 決められたメニューをこなすワークアウトライド
- 毎日200前後行われているイベントライド(or 仲間内イベント「MeetUp」)
ZWIFTを始めた当初は、知らないコース上を走る①のフリーライドでも楽しめますが、それもしばらくすると飽きて②や③に取り組み始めます。仕事や勉強が忙しく、朝や夜の短い時間しか確保できない場合は、②のワークアウトで効率良くトレーニングを積まれる方が多い印象です。ワークアウトの種類は何百種類とあり、どれに取り組めばいいのか迷いがちですから、良かったら「目的別おすすめワークアウト25選」を参考にしてみて下さい。「FTP強化重視のトレーニング」も紹介しています(^^)
そして、血気盛んなプレイヤーは、③のイベントライドに参加して実践的な力を鍛えています。リアルレースさながらの駆け引き、アタック合戦が繰り返されるレースはZWIFTの醍醐味!とても楽しい上に、質問者さんが求めている「様々なレースに対応できる力」がダイレクトに磨かれる手段でもあります。
強くなる王道は「レース参加をメインにしつつ、足りないと感じた能力をワークアウトなどでピンポイントで補強する」。また、これを両方同時に行うイメージで「レース中に自らの弱点を強化する走り方をする」のもオススメです。例えば、強強度が苦手なら積極的に”アタック”を繰り返す、持久力が乏しいなら”逃げ”を試みるなど。これは自分もよく行ってまして、ビ~ックリするぐらい即効性がありますよ!
とは言えレースにも問題はあります。つい熱くなって肉体的・精神的ダメージを負いすぎてしまいやすいのです(ある意味”劇薬”です)。この点は十分注意して「頻度」や「追い込み具合」を自重する必要はありますかね。。。
以上を踏まえてご質問にお答えすると、「まずはFTP強化重視のトレーニングから始める」とはよく言われる事ですが、別にそこにだけこだわる必要もありません。継続しやすさ、心肺機能の土台固め、体型づくりetc………といったバランスの取れた、ベースに据えるべき練習であると認識しつつも、質問者さんが求められている「様々なレースに対応できる力」を身に付けるためにも、心身が燃え尽きてしまわない範囲でレースを走ってみるのが宜しいのではないでしょうか。
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カーボンホイールはタイヤ装着後のホイールバランス取れてないっていう人いますけど、アルミと違って一周が均一なリムを製造できるようになった結果ですよね。
アルミリムは製造時にどこかでリムを繋ぎ合わせる必要があり、繋ぎ合わせた部分が重くなってしまうという制約があるので、それならバルブの反対側を重くして少しでもデメリットを抑えようとした結果、タイヤ装着時のバランスは比較的取れています。(その分無駄に重くなっているということですが)
ちなみに私もホイールバランスはとっていますが、ウェイトを見えるところに貼りたくなかったので、リムテープの下に仕込んでます。
うっしーさん、こんにちは(^^)アルミリムのバランスが比較的取れているのはそのような理由なのですね!深く考えた事が無かったのでとても参考になりました。
それとホイールバランスをリムテープ下に貼り付ける発想は良いですね!二重にしたり、角を丸く切ったりと、私なりに目立たない工夫をしていますが、やはりウエイトは不格好ですからね(笑)
プロがホイールバランスを取らないことは「アドバンテージが無い」という考えの証左にはならないと思います。
メーカーからのスポンサードで機材提供を受けるプロ選手は商品の不完全さを示すことはやりたくてもできないですから。(そもそも傍からみて完全にやってないとはいいきれませんが…)
ただ、バランスの悪いホイールを交換できる権利はあるでしょうし、それ以前にメーカー側も個体チェックして選手に程度の悪いものを渡さないのでは?
なるほど………おっしゃる通りかもしれません。「やりたくてもできない」という発想は無かったです!