松木です。
アワーレコードシリーズ最終回『本番編』です。
【これまでの記事】
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アワーレコード直前の10分間
4時30分に起床。
「食事」「諸々の準備」「ウォ―ミングアップ」を済ませた
Campenaertsが、スタート10分前の10時50分に会場入り。
ベロドローム内は30℃と気温は高め。
暑さはパフォーマンスに大きな影響を及ぼすため、
アイスジャケットとアイスアームカバーを装着して、
スタート前の体温を下げておきます。
そして、鼻に突っ込んでいるのは、
おそらくメンソールを染み込ませているもの。
もちろん鼻通りを良くするためです。
なるほどなぁ……
自分は(見た目がアレな)タービンを使っていますが、
「レース前のメンソール+レース中のブリーズライトorタービン」
という組み合わせが、鼻からの酸素吸入量を最大化できるのかなと。
扇風機の当たる特設のイスへと着席。
そして、付き人と阿吽の呼吸で準備を整えていきます。
二人は一切無駄な会話を交わしていません。
大きな挑戦を控え、神経はナーバスな状態のはず……
直前にドタバタして心を乱さないように
ここでの行動さえもシミュレート済みなのでしょうね(^^;
Red Bullをチビチビと口へと運びます。
ただ、毎回ボトルに吐き捨てています。
一体何故なのでしょう?
口に入れた一部は飲んでいるのでしょうか?
※追記
「スポーツ飲料で口をすすぐだけで、パフォーマンスアップにつながる」
という実験結果を読者の方に教えていただきました(^^)↓
そして、OTE1本を最終補給。
カフェイン、グルテン、乳製品、大豆などが含まれていない
かなり”クリーン”なエナジージェルです。
日本では一般的なジェルではありませんが、
Wiggleには売っていました↓
ちなみに、Campenaertsの前日の食事はと言うと、
「脂質」「タンパク質」をほとんど除き、
出来る限りたくさんの「炭水化物」を摂るカーボローディング飯。
Campenaerts曰く、
「60分間の努力でも、筋肉にフルチャージしておく必要があるんだよ」と。
具体的には、1kg体重当たり10~12gの炭水化物を摂取。
Campenaertsの体重は72kgだそうですから、
10~12g×72=720~864gの炭水化物量。
これをご飯で考えると1945~2335g。
(ご飯100g当たり炭水化物37g)
コンビニおにぎり17.6~21.2個(1個ご飯110gとして)、
カレーライス6.5~7.8杯(1杯300gとして)に Σ(゚Д゚)!?
…………多い。
本気で食べにいかないと届きませんねぇ~(^^;
言われてみると、ポッコリお腹が出ているように見えます(笑)
次に、何かを頭や首、身体に吹きかけるCampenaerts……
よ~~く見ると”Cool Spray”と書かれています。
アワーレコード中、効率的に放熱するための処置。
アイスジャケットしかり、扇風機しかり、
体温上昇によりオーバーヒートしないように
細心の注意を払っている様子が垣間見えます。
最後に”ある物”を手の平に塗っています。
これはバーテープを巻いていないグリップ部分で
”ズルッ”と行かないための「滑り止め」でした。
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アワーレコード本番の60分間
ここまで周到な準備を積み重ねてきたCampenaerts。
あとは「ペース配分」「フォーム」に集中して走るのみ。
コーチであるKevinが掲げる電子ボードには、
ラップタイムの「1桁目~小数点第二位」までが表示されています。
Wigginsの記録54,526mを抜くためのペース目標は、
250mをラップタイム16.4秒で218周。
これならば、
16.4秒×218周+10秒(最初3周の助走でロスする秒数)=59分45秒時点で
走行距離54,500mとなり、残り15秒で26mは確実です。
こちらはCampenaertsの実際のペースを表しているグラフ。
「開始後30分は楽観的に走ったね」と話す通り、
ラップタイム16.1~16.3秒とやや突っ込み気味。。。
それでも調子の良さを感じていたようで、
早くも10~15分時点で「記録更新できる!」と思ったのだそう。
ちなみにケイデンスは、
60×14Tのギアで102~103rpmの間をキープ。
元レコードホルダーWigginsの58×14T、104rpmよりも
重いギア、そして僅かにローケイデンスで走っていました。
半分となる30分時点で27,600m。
このペースで保てば60分で55,200m。
貯金があって多少ペースを落としてもOKな状況。
ここで「ハイペースのまま走り切ることは厳しい」と判断し、
35分過ぎから意図的に抑えて走ることに、気持ちをシフト。
ラップタイムは+0.2秒遅くなって16.3~16.5秒に。
この辺りはさすがに冷静ですね(^^)b
残り10分。
「身体中にアドレナリンが漲っていたよ」
アワーレコード達成に手の届く所まで来ていたCampenaertsは、
序盤に近い16.2~16.4秒まで再びペースを上げ始めます。
正念場に差しかかったラスト5分。
喘いでいるかのように口を大きく開き、
身体も車体もユラユラ揺れて安定感を失ってきました……
「狙ったラインを走る事すらままならなくなっていたけど、
強い意志で踏み抜くことで、ライン取りのロスをカバーした」
60分に近づくにつれて、
記録更新に期待が膨らんでいく会場。
Campenaertsへの歓声は大きくなっていき、
実況者のボルテージも最高潮に!!
そしてついに………
ファイナルラップ15秒台を叩き出してアワーレコード更新。
以上、Victor Campenaertsのアワーレコード挑戦を
「機材編」「ウェア・装備編」「準備編」「本番編」の4回に渡って紹介しました。
自分たちはアワーレコードに挑戦する訳ではありません。
「恵まれたプロだからこそ可能である事」もありました。
ですが、たとえそうであっても、
”見習うべき精神”
”吸収すべき知恵”
”真似すべき行動”
そういったものは十分に見つけられたように思います。
トレーニングに勝るものは無いと心得つつも、
Campenaertsのように賢く強くなりたいものですね(^^)
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