松木です。

 

 松木です。 https://youtu.be/ICk3aID5xLs「1時間でどれだけ前へと進めるか?」 そのシンプルな疑問に答えを見出すべく、146年前の1873年(ジェームズ・ムーアの23.331km)より挑み続けてきた人類は、(UCI公認は1893年アンリ・デグランジュの35.325km)Victor Campenaerts(ヴィクトール・カンペナールツ)によって、ついに55kmを突破! Wigginsの記録54.526kmを563m上回る55.089kmに到達しました。  「実施環境」「トレーニング」「機材」「ピーキング」「ペース配分」 そういった一つ一つの要...

 

前回に引き続きアワーレコードの話。

 

55km/h!Victor Campenaertsのウェア・装備【アワーレコード】 【ヘルメット】HCJ『Adwatt』

Victor Campenaerts(ビクター・カンペナールツ)は
いかなるウェア・装備を纏いながら55kmを駆け抜けたのか?

 

その理屈とともに掘り下げていきましょう。

 

【関連記事】

 松木です。 4月16日に55.089kmという驚異的なアワーレコードを成し遂げたVictor Campenaerts(ヴィクトール・カンペナールツ)   「機材編」「ウェア・装備編」と見てきましたが、今回はアワーレコード当日までの「準備編」です。 成功のために彼が積み重ねてきた「4ヶ月近い準備」「高地トレーニング」は、一体どんなものだったのでしょうか? 【参考にした記事】  アワーレコードの会場にメキシコを選んだ理由アワーレコードに挑戦するトラックは、ルールに適合しさえすれば何処でも...

 

 松木です。 https://youtu.be/ICk3aID5xLsアワーレコードシリーズ最終回『本番編』です。 【これまでの記事】   アワーレコード直前の10分間4時30分に起床。「食事」「諸々の準備」「ウォ―ミングアップ」を済ませたCampenaertsが、スタート10分前の10時50分に会場入り。 ベロドローム内は30℃と気温は高め。暑さはパフォーマンスに大きな影響を及ぼすため、アイスジャケットとアイスアームカバーを装着して、スタート前の体温を下げておきます。 そして、鼻に突っ込んでいるのは、おそらくメ...

 

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Victor Campenaertsが身に付けていた装備

アワーレコード本番中のCampenaertsの姿。

 

ルール上、ゴチャゴチャ身に付けることはできない代わりに、
そのルールの範囲内で出来る限りの策を講じています。

【ヘルメット】HJC『Adwatt』バイザー無し

55km/h!Victor Campenaertsのウェア・装備【アワーレコード】 【ヘルメット】HCJ『Adwatt』

エアロヘルメットはHJC『Adwatt』(Mサイズ/280g、バイザー有りだと+70g)

Campenaertsの頭を3Dスキャンし、
彼の頭型にフィットするように内部がカスタマイズされています。

 

 松木です。 HJC『FURION(フリオン)』ヘルメットを購入しました。 今年から「ロット・ソウダル」に供給開始し、”ゴリラスプリンター”であるアンドレ・グライペルも被っているエアロロードヘルメット。  商品概要は、上のシクロワイアードの記事に任せるとして、 長らく愛用している「ボントレガー『バリスタ』との比較」という切り口で話してみたいと思います。 エアロ効果 『フリオン』は、エアロダイナミクス、ベンチレーション、ノイズをテストできる独自の最先端の風洞施設にて実験されてい...

 

ロット・スーダルが使用するヘルメットブランド、HJCからタイムトライアルヘルメット「Adwatt」が登場。モーターサイクル向けヘルメットの開発で培ったエアロダイナミクステクノロジーを投入したリアルレーシングヘルメットだ。

 

HJCやヘルメットの特徴に関しては上の記事に任せるとして、
「バイザー無し」であるという点に注目。

 

55km/h!Victor Campenaertsのウェア・装備【アワーレコード】 【ヘルメット】HCJ『Adwatt』

こちらはWigginsのアワーレコード挑戦時の写真。

バイザーを装着しており、いかにも速そうな見た目ですが……

 

55km/h!Victor Campenaertsのウェア・装備【アワーレコード】 【ヘルメット】HCJ『Adwatt』
Photo:Yuzuru SUNADA

Campenaerts曰く、

「バイザー無しなのは、私に特別なこと。

バイザー有りの方が速い仲間Tiesj Benoot(上の写真)と違って、
私の場合はエアロダイナミクスは良くならないんだよ。

それに、バイザーが無ければ、
ヘルメット内に空気を取り込みやすくなる分だけ”冷却効果”は高く、
パフォーマンスアップにもつながる。」

 

無条件に「バイザー有り=速い」と思いがちですが、
実際のところは”人それぞれ”

Campenaertsの場合は、
風洞実験上「バイザー有りでも特に速くはならない」と判明したために、
頭部が蒸れるだけのバイザーはデメリットでしかない訳ですね(^^;

【グローブ】未着用

科学の結晶。アワーレコード成し遂げたマシンをチェック!RIDLEY DHバー

アワーレコードではグローブの着用は許されています。

しかしながら、Campenaertsは(Wigginsも)素手で挑みました。

 

グローブのエアロ効果は極めて小さいと分かっている。

それに、素手だと身体の熱を効果的に逃がせるしね!」

 

55km/h!Victor Campenaertsのウェア・装備【アワーレコード】 グローブ

最近では縦縞の溝(Bioracerでいう”Air Stripe”)を入れた
いわゆる「エアログローブ」と呼ばれるものが増えています。

上のaerocoach『Attack Speed』もその一つ。

 

ですが、aerocoachの風洞実験によれば……

 

ロードバイク グローブ エアロ効果

最も空気抵抗が少ないのは”毛を剃った素手”。

 

つまり、エアログローブというのは、
「エアロ効果を高めることができるグローブ」ではなく、
「グローブ装着による空力悪化を最小限に抑えるためのグローブ」

 

ですから、
Campenaertsを始めとするアワーレコード挑戦者の多くが
あえて”素手”を選択するのは、非常に合理的だと言えるのです。

 

RIDLEY Arena TT Victor Campenaerts アワーレコード成し遂げたマシンをチェック!RIDLEY エアロバー

素手で”グリップ力”が足らなくなる問題に関しては、
手のひらに「滑り止め」(写真の白いのがそれ)を塗って対処。

 

【シューズ&ソックス】GAERNE(ガエルネ)新型エアロモデル

 松木です。 フレーム、ホイール、ウェア、ヘルメット。そういった部分のエアロ効果も大きいですが、あまり気にされないのがシューズカバーだと思います。 シューズカバーのエアロ効果は意外と大事で、42km/hでの削減出力は9.5w、40キロのタイムトライアルなら35秒短縮できる計算になります。(距離に換算すると400m)  その効果を知ってからというもの今まで、多くのエアロシューズカバーを購入し、実際に装着して試してきました。 そうして分かったことなどを話しながら、「最速のエアロシューズカバ...

 

アワーレコードにおいて
足回り最強の装備である「シューズカバー」は禁止。
(愛用しているシューズカバー↓)

 

55km/h!Victor Campenaertsのウェア・装備【アワーレコード】 エアロソックス

そのため、シューズとソックスを最大限エアロに。

どちらもアワーレコードのために開発されたもので、
現時点では市販はされておりません。

 

 松木です。  TTなんかでは、シューズカバーを付けて「空力」を高めるのが当たり前。ロードレースでも、天候次第では付けた方が得策なのは間違いありません。 近年では、「空力」を高める溝(こちらの記事を参照)が設けられたソックスを着用するプロ選手も増えてきました。 う~ん、気になるな…… そんな訳で 溝ありカーフガード(Bioracer『TTエアロチューブ』) 溝ありソックス(Monton『エアロソックス』カラーバリエーション豊富) シューズカバー(Pearl Izumi『コーティングロングシューズカバ...

 

上の記事で話した通り
ソックスの縦縞の溝に空力学的なメリットは皆無なのですが……

 

55km/h!Victor Campenaertsのウェア・装備【アワーレコード】 エアロソックス

アワーレコード本番で使用されたものは、
溝が”斜め”に入った改良型タイプでした。

 

ふむ……これは興味深い……

 

55km/h!Victor Campenaertsのウェア・装備【アワーレコード】 エアロソックス

シューズのほうに見られる工夫としては、
ゴテゴテする「ベルクロ」「クロージャ―」ではなく「靴紐」

そして、その靴紐さえもゴムのカバーで覆ってしまえる構造。

 

更に、なるべくシームレスに、凹凸を少なくした結果、
なんとシューズカバーを装着するよりも速いのだそう∑(゚Д゚ )

【スキンスーツ】Vermarc(フェルマルク)

55km/h!Victor Campenaertsのウェア・装備【アワーレコード 【スキンスーツ】Vermarc(フェルマルク)

CampenaertsのTTポジションに合わせて
オーダーメイドされたスキンスーツ。

 

「半袖と長袖のエアロ効果差は、本当に微々たるものでしかない。

それならば予想気温30℃における”クーリング性能”を優先すべきだ。」

 

55km/h!Victor Campenaertsのウェア・装備【アワーレコード 【スキンスーツ】Vermarc(フェルマルク)

肩~肘の外側に”ディンプル”のような模様が見られるものの、
その他に目ぼしい特徴は見られない、至って普通のスキンスーツ。

 

ただ、
「このスーツに作り上げるためにVermarcと共に多大な努力を費やした」そうですから、
一見しただけでは分からない”考え抜かれたこだわり”が詰まっているのでしょうねぇ。

 

 

今回はここまで。

 

55km/h!Victor Campenaertsのウェア・装備【アワーレコード】

次回「準備編」へと続きます(^^)b

 

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