松木です。
何となく使っている「転がり抵抗」という言葉。
冷静に考えると、上図の①のように
地面とタイヤはこすれている訳ではありません。
(ホイールがロックしたような状態)
実際の所は、ホイールが回転しているため、
地面とタイヤは基本的に接地しているだけで、
そこに発生する”こすれによる摩擦”は限りなく0(図②)。
こちらの記事でも話しましたが、
『4000s Ⅱ』タイヤの場合、8000kmも走っての摩耗はたった0.8mmであり、
”こすれによる摩擦”は非常に微々たるものでしょう。
では、「転がり抵抗」とは一体……
【タイヤ熟考Ver2,3の記事】
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目次
「転がり抵抗」の正体
地面に接地したタイヤは、体重と車体の重みで変形します。
そして、タイヤを変形させるのには、
どこからか”エネルギー”を供給してやる必要があります。
このエネルギーは、どこから賄われるかと言うと、
前進するための運動エネルギーです。
次に、地面からタイヤが離れると、
「空気圧」それから「ゴムの弾性」によって、タイヤは元に戻ります。
すると、先ほどとは逆に
変形エネルギーは運動エネルギーに変換されます。
つまり、エネルギーが返される形になる訳です。
以上の「運動エネルギー⇔変形エネルギー」の変換効率が、
100%になることが理想ではありますが、
現実には、タイヤが地面から離れて元に戻る際に、
”熱”としてエネルギーの一部を失ってしまいます。
(自動車では、空気圧の極端に低いタイヤで高速走行すると、
異常発熱によってタイヤが発火してしまうケースもあるのだそう)
つまり、「転がり抵抗」の主な正体とは、
熱の発生によって失われた運動エネルギー。
このエネルギー損失のことを
「ヒステリシスロス」(または「内部損失」)と呼びます。
「転がり抵抗」を小さくする方法
「転がり抵抗」の正体が分かれば、
次は 「転がり抵抗」を小さくする方法を考えてみましょう。
理屈はそう難しくありません。
タイヤが地面から離れて元に戻る際の”熱”の発生を抑え、
「運動エネルギー⇔変形エネルギー」の変換効率を高めればいいのです。
これにはいくつか効果的な方法が考えられます。
Bicycle Rolling Resistance
まずは、お馴染み「Bicycle Rolling Resistance」。
「転がり抵抗」の要因こそ千差万別ではありますが、
上位のタイヤほど「運動エネルギー⇔変形エネルギー」
の変換効率が高いことは間違いありません。
”信憑性”という点において、実験データに勝るものはなく、
ここが公表しているタイヤの「転がり抵抗」のデータは、
具体的なワットで順位付けされていて、とても参考になります。
軽量タイヤ&チューブ
トレッド(接地面のゴム)の厚さは、転がり抵抗と大きな関係があり、
トレッドが薄いほど「転がり抵抗」は小さくなります。
これは何となしには想像できますね。
薄いタイヤほど変形させるのに必要なエネルギーが小さく、
ひいては、元に戻る際に発生する”熱”も小さくなるからです。
(”チューブ”に関しても当てはまる理屈で、その究極が「チューブレス」)
”軽さ”が売りである各メーカーの「超軽量タイヤ」ですが、
少しでも素材を減らそうとトレッドは薄くつくられているため、
必然的に「転がり抵抗」も小さくなって、一石二鳥。
(「Bicycle Rolling Resistance」のデータでも、上位に軽量タイヤが多い)
限定発売されているコンチネンタル『GP4000 RS』なんかは、
まさにこの「薄い=速い」という特性を活かした代表格ですね(^^)
ラテックスチューブ
ラテックスチューブは「乗り心地が良い」と同時に
「転がり抵抗が小さい」ことも広く知られています。
ラテックスチューブを触れば分かりますが、
ブチルチューブよりも”ボヨンボヨン”していて、
いかにも弾性が高そうな素材です。
「弾性が高い」という事は、
「運動エネルギー⇔変形エネルギー」の変換効率が高いという事。
言い換えれば「ヒステリシスロスが小さい」のです。
ラテックスチューブ比較記事↓
ただ単に”速さ”だけ求めるなら、
50gほどしかないSOYOもしくはVREDESTEIN(両者の製造元は同じ)なのですが、
「空気の抜けにくさ」「耐パンク性能」とのバランスが取れている
ミシュラン『Air Comp Latex』が現実的で、自分はこのチューブを使用中。
2本セット ミシュラン Michelin ラテックスチューブ 700C 仏式 AIRCOMP Latex A1 (700×22/23c(バルブ長60mm)) [並行輸入品]
25cタイヤ
23cよりも25cの「転がり抵抗」が小さいのも周知の事実でしょう。
こちらはGOKISOの資料。
これはGOKISOワイドリムとナローリムの比較ですが、
「GOKISOワイドリム⇒25c、ナローリム⇒23c」
と置き換えて考えても、何ら差し支えありません。
25cのほうが、接地面積が短い
⇒ホイールの沈み込みが少ない=タイヤの変形が少ない
⇒駆動ロス(熱の発生)が少ない=「運動エネルギー⇔変形エネルギー」の変換効率が高い
⇒「転がり抵抗」が小さい
面白いですよね(^^)
「Bicycle Rolling Resistance」でも、過去に
タイヤの太さによる「転がり抵抗」の比較実験が実施されています。
23cと25cの6.9barの箇所に着目すると、0.2wの差があります。
他の部分の数値データも参考に考察すれば、
23c/6.9barの「転がり抵抗」13.1w≒25c/6.6barの「転がり抵抗」
と分かり、25cの場合、23cよりも-0.3w下げても遅くはなりません。
空気圧を上げる
空気圧を上げるほど、タイヤは変形しにくくなりますから、
「ヒステリシスロス」、つまり「転がり抵抗」は小さくなります。
なので、グリップ力を必要としないヒルクライムレースにおいて、
通常よりも空気圧を0.5~1.5bar高めに入れておく人も多いです。
ですが、実際の路面では違います。
実験室の滑らかなドラムを使って「転がり抵抗」を測定した場合、
理論通りに、高い空気圧ほど「転がり抵抗」は小さくなりますが、
実走においては、ある空気圧を境に「転がり抵抗」は上昇してしまいます。
これは”インピーダンス”と名付けられた要因が関係しているのですが、
この「インピーダンス」については、また次回で……
「転がり抵抗」=「ヒステリシスロス」+「インピーダンス」
【タイヤ熟考Ver2の記事】
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転がり抵抗は摩擦抵抗にあらず…ですか。φ(..)メモメモ
「ヒステリシス」とか、「インピーダンス」とか、電気か電子の講義聞いてるみたいです…(^.^;
まんべさん、はじめまして(^^)
摩擦抵抗も無いことはないのですが、
「ヒステリシスロス」「インピーダンス」に比べれば小さく、
考えるに値しない程度のようです。
「ヒステリシスロス」は、日本語だと「内部損失」とも言いますね。
「インピーダンス」のほうは、正式用語というよりは、
おっしゃる通り電気関係の分野から引っ張ってきた”当て言葉”のようなものです。