松木です。
前回に引き続きアワーレコードの話。
Victor Campenaerts(ビクター・カンペナールツ)は
いかなるウェア・装備を纏いながら55kmを駆け抜けたのか?
その理屈とともに掘り下げていきましょう。
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目次
Victor Campenaertsが身に付けていた装備
アワーレコード本番中のCampenaertsの姿。
ルール上、ゴチャゴチャ身に付けることはできない代わりに、
そのルールの範囲内で出来る限りの策を講じています。
【ヘルメット】HJC『Adwatt』バイザー無し
エアロヘルメットはHJC『Adwatt』(Mサイズ/280g、バイザー有りだと+70g)
Campenaertsの頭を3Dスキャンし、
彼の頭型にフィットするように内部がカスタマイズされています。
HJCやヘルメットの特徴に関しては上の記事に任せるとして、
「バイザー無し」であるという点に注目。
こちらはWigginsのアワーレコード挑戦時の写真。
バイザーを装着しており、いかにも速そうな見た目ですが……
Campenaerts曰く、
「バイザー無しなのは、私に特別なこと。
バイザー有りの方が速い仲間Tiesj Benoot(上の写真)と違って、
私の場合はエアロダイナミクスは良くならないんだよ。
それに、バイザーが無ければ、
ヘルメット内に空気を取り込みやすくなる分だけ”冷却効果”は高く、
パフォーマンスアップにもつながる。」
無条件に「バイザー有り=速い」と思いがちですが、
実際のところは”人それぞれ”。
Campenaertsの場合は、
風洞実験上「バイザー有りでも特に速くはならない」と判明したために、
頭部が蒸れるだけのバイザーはデメリットでしかない訳ですね(^^;
【グローブ】未着用
アワーレコードではグローブの着用は許されています。
しかしながら、Campenaertsは(Wigginsも)素手で挑みました。
「グローブのエアロ効果は極めて小さいと分かっている。
それに、素手だと身体の熱を効果的に逃がせるしね!」
最近では縦縞の溝(Bioracerでいう”Air Stripe”)を入れた
いわゆる「エアログローブ」と呼ばれるものが増えています。
上のaerocoach『Attack Speed』もその一つ。
ですが、aerocoachの風洞実験によれば……
最も空気抵抗が少ないのは”毛を剃った素手”。
つまり、エアログローブというのは、
「エアロ効果を高めることができるグローブ」ではなく、
「グローブ装着による空力悪化を最小限に抑えるためのグローブ」
ですから、
Campenaertsを始めとするアワーレコード挑戦者の多くが
あえて”素手”を選択するのは、非常に合理的だと言えるのです。
素手で”グリップ力”が足らなくなる問題に関しては、
手のひらに「滑り止め」(写真の白いのがそれ)を塗って対処。
【シューズ&ソックス】GAERNE(ガエルネ)新型エアロモデル
アワーレコードにおいて
足回り最強の装備である「シューズカバー」は禁止。
(愛用しているシューズカバー↓)
そのため、シューズとソックスを最大限エアロに。
どちらもアワーレコードのために開発されたもので、
現時点では市販はされておりません。
上の記事で話した通り
ソックスの縦縞の溝に空力学的なメリットは皆無なのですが……
アワーレコード本番で使用されたものは、
溝が”斜め”に入った改良型タイプでした。
ふむ……これは興味深い……
シューズのほうに見られる工夫としては、
ゴテゴテする「ベルクロ」「クロージャ―」ではなく「靴紐」
そして、その靴紐さえもゴムのカバーで覆ってしまえる構造。
更に、なるべくシームレスに、凹凸を少なくした結果、
なんとシューズカバーを装着するよりも速いのだそう∑(゚Д゚ )
【スキンスーツ】Vermarc(フェルマルク)
CampenaertsのTTポジションに合わせて
オーダーメイドされたスキンスーツ。
「半袖と長袖のエアロ効果差は、本当に微々たるものでしかない。
それならば予想気温30℃における”クーリング性能”を優先すべきだ。」
肩~肘の外側に”ディンプル”のような模様が見られるものの、
その他に目ぼしい特徴は見られない、至って普通のスキンスーツ。
ただ、
「このスーツに作り上げるためにVermarcと共に多大な努力を費やした」そうですから、
一見しただけでは分からない”考え抜かれたこだわり”が詰まっているのでしょうねぇ。
今回はここまで。
次回「準備編」へと続きます(^^)b
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